『真湖のワイン』続編計画〜作戦その1。 | ともえるの彷徨える☆漫画制作日記

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漫画家 佐藤智美のブログ

 
お久しぶりです!!
3月になり、冬の気候に逆戻ったかと思えば暖かくなり…
そんな不安定な日々が続いておりますね。

先週のブログ では『真湖のワイン』の雑誌連載が終了したことをご報告、
そして今後『真湖のワイン』の『続編制作』を考えており、
またどうして続編を描こうと思ったかについて
次回詳しく書かせていただこうと締めくくらせていただきました。


…というわけで、本日は『続編』制作へと思い至った経緯といいますか…
『「真湖のワイン」続編☆制作計画』の概要に迫りたいと思います!!!





はい!!!…ということでですね。

まず『真湖のワイン』についてですが、
先週のブログでも書きましたように連載当初より、
出版社サンからの「次回作は単行本2巻分でお願いしたい」
という要望を受けて執筆させていただきました。
実は「もし単行本の売り上げが良ければ、その後も…」というお話でしたが、
残念ながら単行本の売り上げの方が振るわず、そのまま終了という流れになりました。

もともと「単行本2巻分で」というお話でしたし、大変厳しい作業ではありました。
もちろん「2巻分」に収まるように話を組み立てて…しっかりやることはやったという
自負はありますが、それでもお話を考えていく上で

「取材で聞いたこのエピソード…本当に興味深かった。
こんな話にしてみたらどうだろう??」

とか
「コレって誰もまだやったことが無いんじゃなかろうか?
描いたら絶対面白いって思ってもらえそう。」

などフツフツとアイディアが浮かんでくるワケなんですよね。

「人気が出たら続きが描けるかもしれない!!」「もっと描いてみたい!!」
という想いに
立ち塞がるのが「単行本の売り上げ」という現実(リアル)です。

この「単行本の売り上げ」については
最近SNSを利用されている漫画家さん達からも
次のような発言がされる機会が増えているようです。

ベレー帽「◯月◯日に新刊が発売されます!!
今後も連載を続けたいので、ぜひご購入ください。」

ベレー帽「新刊買ってください!!初速が大事なんです」

ベレー帽「電子書籍やレンタルコミックなどで読んでもいいけど、
できるだけ紙の単行本を買って欲しい!!」



このようなコメントはもはや新人漫画家に限らず、
大御所漫画家さん達からも頻繁に発信されています。



出版業界の不況が深刻化するなか
販売部数を減らし続ける「雑誌」の赤字をカバーしてきた「単行本」。

この「単行本」については、出版社と書店の間をつなぐ流通業者である
「取次」がコンピューターで管理。

「取次」が管理する書籍の売上データは出版社も確認することができ、
単行本発売から約1週間くらい販売売上を見るだけで
「この単行本が今後どのくらい売れるのか」の予測ができてしまうのだそう。
そしてその予測が外れることはまずないのだそうです。

この予測を元に作品連載の「続行」「打ち切り」かが決定されるのです。

さらに言うとこの書籍の売上データは…
「作品」の運命が決められるだけではなく「漫画家」の未来をも決定付けます。

単行本の売り上げの良い漫画家については次回も連載のチャンスが与えられますが、
逆に単行本の売り上げが悪い漫画家は「単行本の売れない漫画家」認定され、
たとえ面白い作品を描こうとも連載のチャンスが与えられ難くなるそうです。

ある編集者サンによると、一旦「単行本の売れない漫画家」認定されてしまった場合…
「ペンネームを変えて」全くの新人として編集部に持ち込んだ方が、
まだ連載のチャンスがあるという人もいます。

上記のような非常に合理的「デジタルな判断」
出版業界では日々行われており、先ほどの漫画家さん達のSNSでの
初速が大事!!」発言の根拠はここにあるワケです。

ただこの「デジタルな判断」については「ある疑問」も生じます。

自分自身も含め漫画作品を読んでいる人なら経験があることとは思いますが、
漫画によって「第1巻」から面白いものもあれば、
「第5巻」といった「途中の巻」から盛り上がってくる作品もありますよね。

上記の「デジタルな判断」で行くと…
「第1巻」がドカーーーーーーンッッとド派手な漫画が望ましく、
地味で積み重ねるような…何度も読み返してみたくなるような作品は
「商業的に」望ましくない漫画作品ということになります。

これは漫画家である前に「ひとりの漫画好き」としての意見でありますが、
「第1巻」が超ド派手な漫画も勿論大好きですが、
地味で積み重ねるような「長編大作」も大好きなんですよね。

うーむ……これはなかなかに悩ましい問題ではないでしょうか。

即物的で超ド派手な似たような作品ばかりが増えていくのは良いことなのか…
いろいろな作品が生まれ多様化していくことも漫画の「未来」にとって
大切なことなのではないかと複雑な気持ちになります。

まぁ、漫画界は「弱肉強食」だから仕方がない、
所詮は「負け犬の遠吠え」
「オマエが売れてから物申せ」と言われれば
その通りだったりするんですけどね… 涙

しかしながら文章の冒頭で触れたような、
漫画家本人が読者の皆さんに
「作品」を読む「時期」や「媒体」をSNSなどを使って指定しなければならない…

このような状況に自分自身は正直に言って大変心苦しさを覚えます。

自分自身も「紙の単行本」の発売日前後にはSNSなどで
「買ってね」とコメントしていた一人として、
読者の皆さん側から見たらこの状況はどのように映っているのかなぁ…
ということが大変気がかりです。

本来なら読者の皆さんは好きな作品を、好きな時に…使い勝手の良い媒体で
買って読んでいただければいいのですから。




先の取次の「デジタルな判断」でいえば
ワタクシも残念ながら
「単行本の売れない認定」を受けた漫画家の一人だと思います。
このような漫画家は今後どのようにしていけばいいのか…



まさに岐路に立たされていると言っていいでしょう。



ワタクシの場合についてはですね、実は大変ラッキーなことに前作『ムショ医』終了時に
行ったクラウドファンディングによる『続編』制作の経験から
少数の人数でも漫画の「作品制作を行える」ということがわかっています。

クラウドファンディングによる『続編』制作についてはこちら。


また先月、楽天ブックスやAmazonなどを中心に行われた
電子書籍版『ムショ医』の「11円セール」では、お陰様で『ムショ医』全5巻+続編…
すべての巻が電子書籍ランキングの王冠トップ10入りを果たし

セール終了後の今現在になっても
『ムショ医』の各巻がAmazonのKindleストアランキングの500位以内
読み続けていただけている状況にあります。



ムショ医1/佐藤漫画製作所/漫画onweb
¥価格不明
Amazon.co.jp


実はこの「電子書籍」には本っっ…当に助けられておりましてですね、
電子書籍版『ムショ医」の売り上げに関してはもう随分前に
雑誌掲載料&紙の単行本の印税分にまで達して
しまっています。

つまりは「紙の単行本」を取り巻く「風景」とは違う…
別の「風景」を垣間見ている
ということです。


漫画業界の「風景」についてはもはや「電子書籍」云々だけではなく、
漫画作品の「発信」までも劇的に変化しています。



いままで漫画でヒット作品といえば
出版社の紙媒体の商業雑誌に掲載されたモノが大多数でしたが、
ここ数年はSNSやWebコミック配信サイトで発表された漫画
「ネット」由来の「ヒット作品」が続々と生まれています。


漫画を「読む」なら「紙か電子か」といった問題は、
漫画を「発信」する側にも及んでいるのです。


多様な漫画作品があることが、漫画文化を深くしていくというのなら
漫画の「発信」についてもまた多様であった方がいいのではないでしょうか?


『真湖のワイン』続編も今後は「ネット」へ…
その活動の場を移してみようと考えています。


本編の続きを…ただひたすら作者本人が「ネット」上で「発信」するという
この活動が自分自身にとってどのような影響を与えていくのか…
「得をする」のか「損をする」のかさえ全く分からない「実験的な活動」であること…
そこから何が起こるのか(または起きないのか)は全く予想がつきません。




ただ上記の活動が漫画家にとって、
また読者の皆さんにとっても一つの可能性を提示していけたらいいなぁと考えております。




…と、気が付いたら随分長文になってしまいましたよ・ω・sweat*




今回のブログは結構内容も濃ゆいので、
具体的な「発信」の流れについては次回のブログで書こうかなぁ~~
と思っております。





ではまた ……おそ松おそ松おそ松おそ松おそ松おそ松