グランド・ミュージカル
『蒼穹の昴』
~浅田次郎作「蒼穹の昴」(講談社文庫)より~
脚本・演出/原田 諒
19世紀末、清朝末期の中国・紫禁城を舞台に繰り広げられる浅田次郎の大ベストセラー小説「蒼穹の昴」の初の舞台化に、宝塚歌劇が壮大なスケールで挑みます。
「汝は学問を磨き知を広め、帝を扶翼し奉る重き宿命を負うておる」──。梁家屯の地主の次男・梁文秀(リァン・ウェンシウ)は、韃靼の老占い師から受けた予言をふと頭に浮かべていた。果たして自分にそのような才覚があるものなのか……。程なくして熾烈な科挙の試験に首席で合格した文秀は、清国の政治の中枢へと否が応でもその身を置くこととなる。光緒帝に仕え、改革派の俊英として名を馳せる文秀と、かつて義兄弟の契りを交わした極貧の少年がいた。その名は李春児(リィ・チュンル)。彼もまた、老占い師から告げられた「その手にあまねく財宝を手にするだろう」という言葉に夢を託し、妹・玲玲(リンリン)を故郷に残し都へ上る。やがて宦官となった春児は、紫禁城に君臨する西太后の側近へと昇りつめてゆく。落日の清国。その分割を狙い、列強の西洋諸国が虎視眈々と迫る中、文秀たちは紫禁城に渦巻く権力への野望と憂国の熱き思いに翻弄されることになる。
人間の力をもってしても変えられぬ宿命などあってたまるものか──激動する時代の流れの中で懸命に、運命に抗い力強く生きる人間たちの勇気、そして希望。文秀の鮮烈なまでの生きざまを主軸にし、宝塚歌劇版としてドラマティックに、華やかに描き出す超大作歴史ミュージカルにどうぞご期待ください。
(公式HPより)
観劇日:2022年10月13日マチネ
中国史はあまり好きではないのと、ちょうど始皇帝の時代のお話である【キングダム】を予習中なので、混乱しないようにと【蒼穹の昴】は予習をせずに観劇に臨みました。
まずは名前の読み方に馴染めないので、文字や台詞ではなく、人物で識別できる点において、ミュージカルや映像は助かります。
ただ、その場にいない人の名前が出てくると、『誰のことだっけ?』となることはありますが・・・
なので、この公演は1回限りの観劇だったこともあり、お話の内容はほとんど記憶に無いのが残念
その中でも印象に残ったのは。
とにかく紫禁城の舞台セットとお衣装が煌びやかだったこと
お衣装は、梁文秀たちが官僚になりたての頃から地位が上がっていくにつれてお衣装の刺繍や裾のデザインが少しずつ豪華になっていくのが分かりました。いったい何着あったのでしょう。
そして、専科の皆さまの存在感
歴史上の実在した政の重鎮たちを演ずるには、やはり専科の方々のお力が必要だったのだなぁと思いました。
とくに、光緒帝(縣千)と西太后(一樹千尋)との年齢差は40歳。
さすがに横に並んだ時の風格の違いを表すのに、組子どうしだと難しいでしょうね。
その光緒帝の縣千くん。
西太后さまの横で《借りてきた猫》のように、少し頼りなげな表情だったり、『しっかりせねば』という気負いだったり。玉座に座ったまま、それらを表現するのは難しかっただろうなと思います。
梁文秀と一緒に官僚となったのは、順桂(和希そら)と王逸(一禾あお。順桂が妻帯者だとわかる台詞では、心がざわつきました
最期の場面はあっけなかったですね。
王逸は早々に軍に入るきっかけとなった李鴻章(凪七瑠海)の「軍服が似合う」という台詞の通り、とてもお似合いでした。
最期というと、田舎言葉が抜けず頼りなげな譚嗣同(諏訪さき)が最期に見せる男らしさはカッコイイ役どころでしたね。玲玲(朝月希和)に恋している様子はなんとも微笑ましくて可愛らしい人でした
玲玲の朝月希和さんは、幼い頃の様子や声色がとっても可愛く幼く見えて、一途に梁文秀を想っているのがいじらしい女の子。
大人になっても、そのいじらしさは変わらず、素直で素敵な女性に。
それは朝月さんが持つイメージのままだなぁと感じました(私が勝手に思っているイメージですが)
梁文秀の彩風咲奈さんは三白眼なので、強い意志を持った時の目がより強く感じます。玲玲や春児に対してはとことん優しいお兄さんなので、そのギャップも意志の強さに感じられました。
さらに、原作を書かれた浅田次郎さんのご希望だという京劇。
お衣装に装飾がたくさん付いていて、重くて動きづらそうですね。
振り付けも難しく、なかなか苦戦されたと春児の朝美絢さんが話されていましたが、中国らしさが出ていてよかったと思います。
【昴】というのは、おうし座の中にあるプレアデス星団のこと。
肉眼では6つの星に見えます。
6つの星が集まって見えるので、夜空の中では見付けやすいのかもしれません。
その昴を見ながら、自分たちの将来を夢見て生き抜く若者たち。
初めは占い師のおばあさんから言われた言葉を信じて、星に導かれる人生を思い描いている。でも、年月が経ち、自分たちそれぞれの道を切り拓いていく。
その力強さは感じることができました。
歴史の波が大きくうねる時、そこに生きる人々がそれぞれ良かれと思って行なうことが、その国が歩んでいく道を創っていく。
それはどの国も、いつの時代も同じ。
そんなことを考えていたら、お芝居が終わってました
誰かに共感したり、誰かの心情に寄り添ったり・・・ということが無いまま、あっという間にフィナーレに突入し、あっという間に終演を迎えてしまいました
やはり原作がある公演は、予習をしておくと分かりやすいという結論となりました