今の時代に必要なスキル 地頭って?
これまでの時代において「学歴」は、人の能力を保証する資格として機能するものでした。しかし変化の時代に突入した今、アメリカではすでに10代の若者が、大学に入ることなくグーグルにスカウトされるようなことが起きています。もはや学歴ではなく、本人の能力そのものが評価される時代がきたということです。そこで最近は、「これからは学歴格差ではなく、地頭格差だ」というようなことが謳われ始めました。つまり、地頭は先天的な才能だから鍛えようがないため、学歴社会だった頃よりもさらに残酷な格差が生まれるのでは、という問題定義です。地頭とはでは、そもそも地頭の良さとはなんなのでしょうか。確かに、「地頭の良さ=生まれつきの能力」というイメージは、もともとの定義として正しいのかもしれません。しかし、地頭は後天的に伸ばすことができる能力なのです。日本はこれまで、「メイドインジャパン」の高品質かつリーズナブルな魅力で世界経済に貢献してきました。その分、社会に求められてきたのは、トップダウンの管理下で力を発揮でき、かつ学歴による能力の保証がある人材でした。よって教育も、テストの問題を素早く正確に解く力、つまり「課題解決の力」が重要視されてきました。ところが変化の時代では、自分で社会のニーズを見つける「課題発見の力」が求められるようになりました。自ら問題を定義していく時代で発揮されるのは、テストの問題を解く能力ではなく、地頭の良さです。つまり先述した通り、常にあらゆる角度から、物事を考え続ける力です。それは、教育の力で育てることができる能力であり、大人になってからも鍛えられます。ならば、テスト教育を受けてきた我々も、一旦ズバッとリセットして、能力を鍛え直せばいいのではないでしょうか。それに、何も真新しい能力を求められているわけではありません。少なくとも松下幸之助をはじめとする昭和初期の起業家にはいずれも、今の時代に求められているような地頭の良さがあったのです。よってそれは地頭格差ではなく、「常に物事を新鮮な目で捉え、考え続ける能力」にで格差ができるでしょう。地頭力とは「知識や情報を加工する能力」を意味し、問題解決のためになくてはならないもの』だそうです。例えば「今月の営業ノルマを達成する」という課題に対し、収集した情報をうまく分析・活用し、いち早く達成方法にたどり着けるような人こそが「地頭がいい人」ということになります。問題解決というのは大きく3つのステップから成り立ちます。1.関連の情報を収集する、2.集めた情報に付加価値をつける(分析・分類する)、3.結果を人に伝える、という3ステップです。第1ステップに主に必要なのが「知識・情報量」、第2ステップに必要なのが本稿のテーマである「地頭力」、そして第3ステップに主に必要なのが「対人感性力」(人に対して機転が利くとか、空気が読めるとか、理屈ではない頭の良さのこと)です。問題解決とは情報を「集める」「加工する」「伝える」の3ステップからなり、このうち「加工する」能力こそが、地頭力と呼ばれるものなのです。現代ではインターネットが普及したことにより「情報を集める」力の差はつきづらいそう。したがって今後は、どんな情報を持っているかより、情報をどう活かすかという地頭の良さこそがよりいっそう重要な時代になってくるのです。次に地頭が良い人とはどんな人のことを言うのでしょうか?地頭が悪い人の特徴についてもまとめました。地頭が悪い人の特徴・情報を鵜呑みにする地頭とは「情報を加工する能力」のこと。したがって、せっかく得た情報を活用せず、うのみにしていては、地頭がいい人とは言えません。情報をうのみにしていると、詐欺に引っ掛かる、間違った情報を真実だと思い込んでしまうなどのデメリットが生じてしまいます。入手した情報が間違っていることに気づかないままでは、情報をもとに正しい判断をすることはできませんね。・自我を押し通す自我を押し通すのも、地頭のいい人の行動とは言えません。なお、ここでいう「自我を押し通す」とは、誰に何を言われても決して意見を変えず、同じ主張を繰り返すことです。自我を押し通すということは「新しい情報を受け入れようとしない(自分が持っている限られた情報に執着する)」ことにほかならないのです。意見を変えないという態度は「意志の強さ」の現れかもしれません。たしかに、自分の人生に関することなど本当に大事なことについては、他人の意見に左右される必要はないでしょう。しかし、ビジネスや日常のあらゆる面で「絶対にこうだ」「そんなわけがない」と自我を押し通してばかりいると、知識や視野がいつまでも広がりません。それに、会話をしていても楽しくないので、周りの人が離れていく恐れがあります。・全てを説明されないと理解できない地頭が悪い人は、情報を処理する能力が低いため、説明を1から10まで聞かなければ理解できない人が多いようです。例えば、説明ゼリフの少ない映画の筋が追えない、ジョークの笑いどころがわからないなどがあてはまります。つまり、説明されていないことを想像や予測で補うことができないのです。仕事では、やり方を1から10まで教えなければ何もできない「マニュアル人間」になってしまいます。・想定外の事態に対処できない想定外のことに対応できないのも、地頭が悪い人の特徴です。地頭が悪い人は新しい情報を処理することが苦手なため、初めての出来事が起こると身動きがとれなくなってしまうのです。例としては、試験の応用問題に対応できない、仕事の進め方を自分で決められない、などが挙げられます。想定外のことは日常生活につきもののため、地頭力がないと多くの場面でトラブルが生じる恐れがあります。地頭が良い人の特徴・情報を吟味している地頭がいい人は、情報をうのみにせず必ず吟味します。情報をただ受け取るだけでなく、その情報が持つ意味や活用方法を考えるので、地頭が良い人は情報リテラシーも高い傾向にあると言えるでしょう。たとえば、「モーツァルト効果」というものを聞いたことはありますか? 「モーツァルトの音楽を聞くと頭がよくなる」という言説がかつて一世を風靡(ふうび)し、今でも一部で信じられています。しかし、脳科学者の中野信子氏は、StudyHackerのインタビューにおいて、「モーツァルト効果」をうのみにすることについて「かなり問題がある行動」だと述べました。そして実際、「モーツァルト効果」は近年の研究で否定されているそう。研究者という職業柄、当然ともいえますが、やはり頭のよい人は都合のよい情報をうのみにしないのですね。情報を吟味することで、フェイクニュースやメディアによって誇張された情報に踊らされにくく、人の本質や物事の真理を見抜くことができます。もちろん、情報の真贋(しんがん)を見抜ける人は、その能力をビジネスで大いに発揮できるでしょう。・相手の立場になって考えられる地頭の良い人は幅広い情報を組み合わせて多角的に物事を考えることを知っているため、むやみに自我を押し通さず、相手の立場に立って考えることができます。想像力が豊かなので、「私の言動はこの人の目にどう映っているだろう?」「ここで自分の意見を押し通したら/妥協したらどんな結果になるかな?」とシミュレーションすることができるのです。ニューヨーク州弁護士資格を持つ山口真由氏がStudyHackerのインタビューで語ったところによると、山口氏も「他者の立場からどう見えているかを想像する」ことを心がけているのだそう。「相手にはこの状況がどう見えているのだろうか?」「相手の意見には、どのような背景や立場があるのだろうか?」などと考えることにより、「俯瞰(ふかん)力」――すなわち「まわりを把握し先を見る力」を鍛えているとのことです。相手の立場で考えられると、コミュニケーションが円滑に進み、会議や取引で活躍しやすくなります。また、リーダーの立場になったとき、上司や後輩などさまざまな人の意見を聞き入れ、まとめることができます。・少ない情報で物事を理解できる地頭がいい人は、情報を分析したり組み合わせたりして推論することが得意なため、少しの説明だけで物事の本質や全体を把握できます。たとえば、1から4を聞けば残りの5~10を推測できるし、1・4・7・10を聞けば、スキマの2~3、5~6、8~9を自分で埋められるのです。そのため、地頭がいい人は、誰かから全部説明されなくても状況を理解し、率先して行動することができます。新しいプロジェクトを始めるときなど、情報がないなかで計画を立てなければならない場合や、白紙の状態から新しいものをつくる場合に力を発揮できます。・想定外の事態にも対処できる地頭がいい人は、想定外の出来事が起きても状況を冷静に分析し、情報を統合することで、対応策を導き出すことができます。誰かから状況を説明されたり指示を受けたりする必要がなく、「今、何をすべきか」を自分で判断できるのです。想定外の事態に強いということは、現場を指揮するリーダーとして適任だということ。判断の早さを見込まれ、仕事での成果を勝ち取りやすいと言えるでしょう。次回は地頭を鍛える方法について書いていきたいと思います!