あれは足繁く香港へ出張を繰り返していた1980年代の頃のお話しです。

    英国人ゼネラルマネージャ付秘書とランチやディナーをご一緒する機会が
    格段に増えて行った時期でもあったのですが。
    その秘書は香港人でしたが、英国への留学経験がありましたので
    クイーンズイングリッシュには、勿論、堪能な方でした。
    米語慣れした私には、「彼女から英語を教わる絶好のチャンス」とばかりに
    スケジュールの都合さえ付けば喜んで食事をご一緒しました。

    初めてのディナーで、私がほんの少し遅れて中華レストランへ到着すると
    5~6人は座れそうな大きな円卓に何と彼女一人がぽつねんと
    座っているではありませんか。
    思わず私が
      「何方かご一緒されるのですか」と問うと
    「2名で予約すると隅っこの小さなテーブル席になるので
     初めから多人数で予約を入れたのです」
    と澄まし顔で返答されたのでまずびっくり。

    やがてウエートレスが傍らに来るや間髪を入れずに
      「○名がキャンセルした」
    と平気な顔で告げたのには2度びっくり。
    なるほど「これが香港スタイルなのだ」と私は得心することに。


イメージ 1
円卓のイメージです。


    また、別の機会でしたが、アポ当日に彼女から電話があり
      「トミー 別のレストランを予約しました」
    と新しい待ち合わせ場所を告げられたのです。
    私は、お節介にも
      「先のレストランはキャンセルされましたか」
    と愚問を発すると
      「いいや、行かなければ良いだけのことです
    とこれまた突飛な返事が。
    人口密度が高い香港では、少しでも予約時間に遅れると、
    恐らく直ちに別のお客さんへ予約席を回すのでしょうか。


    それで我が身に起こったある出来事が鮮明に蘇ったのです。
    1971年初夏、ハネムーンで香港・マカオ一週間の旅へ。
    搭乗したパンナム機が2時間ほどディレイしたのですが
    何と飛行場から予約済みのホテルへ電話すると
      「満室で予約済みのお部屋は別人に回した」
    とのつれない返事。
    当然、パンナムの「confirmation slip」を持参したのでしたが
    それは単なる紙切れと化したのです。嗚呼。
    それから泣く泣く数時間も掛けて別のホテルを予約する羽目に。
    嗚呼、何たる悲劇。 でも、香港では日常茶飯事のようでした。


    後日談
    最近の中国人爆買いの影響をもろに受けた銀座の老舗レストランが
    泣いているそうです。
    ドタキャンで事前連絡があればまだ良いほうで、何の連絡も無く
    平気で店に来ない予約客が数知れずの状態。
    律儀な日本人経営者は、他人へ予約席を回す訳にも行かず
    結局は、空席のまま店仕舞いを余儀なくされる羽目に。
    ふざけるな、中国人。