最近は、折に触れ現役時代を回顧する事があります。
全て米国企業での勤務という稀有な体験ではありましたが。
戦後の混乱期に育ち、近隣に米軍基地が幾つもあった
住環境の為か、英語に興味を持ったのがそもそも発端で。
最初は、学生時代にCBSでのアルバイトから始まり
初めての正社員が、パンナムで、2社目がF.T.
そして、最後がF.E.だったのですから。
この長い米国企業での勤務中、特に日本企業とは違う特色を
一つ挙げるとすれば、やはり実力主義に尽きるでしょうか。
国籍や学歴にとらわれない傾向が多くみられるようですが
当時の米国企業では、それが当然な経営体制だった訳です。
いわゆる人種、国籍、性別、宗教、学歴などに何等関係無く
本人の実力一本やりだったような気がします。
それと個人間での信頼関係が、意外と重要視されていたのも
想定外の事でした。
米国では、ご存じのように転職が日常茶飯事なのですが、
上司が数人の部下を引き連れて自由に転職するのも
本当に珍しい事では有りませんでした。
F.T.本社のロスでは、VPクラスの転職が結構ありましたが
ディレクタークラスの優秀な部下を数人引き連れて同業他社へと
堂々と転職する様を何度も耳にする機会がありました。
手前味噌で恐縮ですが、私は上司運に恵まれ、その恩恵に預かった
一人でしたが、それなりのプロモーションを受けて来たのです。
あれは、20年余に亘るF.T.時代の晩年での出来事でしたが
当時の私の直属上司は、太平洋・オセアニア地区担当副社長でした。
このV.P.(15年ほど以前に私をマネージャへ登用された方)から
ある日突然の呼び出しを受けたのです。
V.P.で超多忙な方からの呼び出しに多少は訝りながらも
喜び勇んで事務所を訪ねたのは言うまでも有りません。
Horse Drill のイメージ・ネットより
時は、午後2時。初秋の陽が優しく差し込む陽だまりの中
V.P.と向い会ってソファに座った私は、一瞬身構えたのですが。
何とV.P.からは、仕事とは全く無関係の四方山話だったのです。嗚呼。
とりわけ印象深いのは、趣味のホースドリルに関するお話でした。
サンフラン近郊に広大な牧場を有し、数多のドリル用ホースを飼育中で
実は優勝体験も何度かお有りだと言うのです。
動物好きのお嬢様が、獣医となった程の動物好き一家のお話に
終始したのですが、それは本当に楽しいひと時でした。
通常のV.P.アポは10分間単位で、それも門前市をなすような超多忙な
V.P.が、何と私と一時間半もの間、秘書には出入り禁止を命じて
仕事以外での個人的な話題で持ち切りにされるとは。
私は、今でもあの時のV.P.の真意を測りかねております。
ヒョットして、問題山積の中、気心の知れた私との束の間の談笑で
鋭気を養いたかったのかも知れませんが。
まぁ、そんな事はあり得ないですね、きっと。