満腹感に浸りながらゆっくりとホテルの自室へ戻ると、
  直ぐに出張報告書の原稿書きに取り掛かりました。

  すると間もない午後9時過ぎに、突然激しい腹痛と下痢の
  症状に見舞われました。
  その腹痛たるや今までの人生で一度も体験した事が無いほどの
  激痛で、ベッドの上を七転八倒しながら転げ回るほどの痛みが
  突然私を襲いました。

  一瞬、痛みが引いた頃合を見計らって、常に携行している
  常備薬入りの袋を手に取り、急いで中を探したところ、
  あるべきはずの正露丸が見つかりません。

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  又、次の痛みとの間隙をぬって、トランクのポケットという
  ポケットの全てを、そしてアタッシュケースの中までも
  念入りに探して見ましたが、全く見つかりませんでした。

  痛みは和らぐどころか、むしろドンドンと酷くなるばかりで、
  一向に治まりません。
  しかしこの苦境の中で突然ひらめきました。

    『そうだ、彼に相談しよう』

  と当時のシンガポール支社のセールスマネージャーの顔が
  浮かびました。
  職務上シンガポール人の彼には

    「日本人の知人や顧客がいるに違いない」

  と踏んだからでした。

  夜分にも拘わらず、それこそ藁にもすがる思いで彼の自宅へ
  電話を入れました。
  するといつもは顧客の接待で午前様が多いという彼が
  運良く在宅しておりました。

  事の顛末をかいつまんで説明してから

    『何とか正露丸を所持している日本人を

     大至急探して欲しい』

  と懇願すると、彼は快諾しました。

  そう、どれ位経ってからでしょうか。下痢と腹痛で何度も
  トイレとベッド間を往復していた私に、待望の電話が鳴りました。
  そうです、セールスマネージャーからでした。

    「日通の00氏と連絡が付きました。

     彼が正露丸を持参してホテルへ向いましたので、

     間もなく到着すると思います」

  という願っても無い、吉報でした。

  日通の00氏とはホテルのロビーで落ち合い、
  挨拶もそこそこに、正露丸を受け取ると一目散に
  自室へと戻り、急いで正露丸を服用すると
  直ぐベッドに横になりました。

  暫くすると アーラ 不思議。 あれほど酷かった下痢と腹痛が
  まるで嘘のように ピタット 治まりました。

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                 腹痛・下痢が完治した翌日、タイガーバームガーデンで

  正露丸の威力に脱帽するとともに、以後出張前日の必須携行品の
  確認リストにこの正露丸が入ったのは言うまでも有りません。 

  それにしてもあの激しい腹痛の原因は、中華料理店で食べた
  野菜と牛肉(?)の炒め物にあると今でも疑っております。

  あの事故以来、如何なる場合でも現地職員と一緒に会食する以外は
  必ずホテルで食事をするという習慣は厳守しました。
  その結果、退職するまでに2度と食中毒に掛かることは有りませんでした。