1980年夏、シンガポールへ出張した折、
   突然激しい腹痛に襲われると言うハプニングが起きました。
    この時点で既に7回目となるシンガポール訪問でしたが、
     それは筆舌に尽し難い、過去に全く経験した事が無いほどの
      激痛でした。


  仕事柄、頻繁に東南アジア諸国を歴訪する私は、飲食、特に
  生水には十二分な注意を払っておりましたが、この時の原因は
  食事にありました。

  この日は朝から仕事に没頭した結果、思いの他仕事が順調に捗り、
  予定よりも少し早い午後4時過ぎにはホテルへ引き上げました。

  南国での食中毒を極度に恐れる私は、ホテルで食事をするのが
  慣わしとなっておりました。
  しかし、この日は早めにシャワーを浴び、軽くビールを飲んでから
  少しまどろむと、無性に散歩がしたくなりました。

  夕食を取らず、スコールが通り過ぎて既に日も落ちた街中へと
  勇躍出かけて行きました。

  南国の特長として、一旦日が落ちると昼間の暑さが嘘のように涼しくなり、
  気温も徐々に下がって、時折吹く海からの潮風が肌に触れると、
  それは心地良く、時を忘れて小一時間ほどもホテル周辺の
  散策に興じました。

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  そろそろホテル戻って夕食でもと思いながら街中を歩いていると、
  古びた中華料理店が目に入りました。
  既にお腹が空いてきておりましたので、迷わずにその店の中へ
  吸い込まれるようにして入って行きました。

  テーブルで私がジッとメニューに見入っていると、

    『セットメニューがあります。外国人にも好評です』

  との店員の呼びかけに

  思わずセットメニューの中から選んで注文しました。

  程なく出されたセットメニューは、日本で言うところの定食風で、
  キュウリとキャベツの酢漬け、温スープ、ご飯、野菜と肉炒めの
  メインに杏仁豆腐のスイーツも付いた、結構ボリュームのある
  ものでした。

  味も大変良く、私は大いに満足しました。
  ただ一つ残念だった事は、メインデッシュの肉が何だったのか
  判然としなかった事でした。

  私は牛肉を注文した積もりでしたが、出てきたのは、鳥でもなく、
  豚でもなく、牛でもなく、ましてや魚でもなく、強いて言うなら
  やはり牛かなという程度の食感はありましたが。

  しかし、これが後でトンデモナイ結果になるとは、
  夢にも思いませんでした。