Stereophonicsの新作が出た。

「Keep Calm And Carry On」
$Tommy Music★Treasure Box                 ~トミーとロックと、ときどきハーレー-keep

本国イギリスでは去年の11月にリリースされ、日本では今年に入って1月にお目見え。前作の「Pull The Pin」から2年の歳月を経て作られた意欲作だ。
言葉では簡単に「2年」と言うが、この間にバンドは様々な局面を迎えている。まずはデビュー当時からずっとお世話になってきたレーベル「V2レコード」がユニバーサル・ミュージック内に統合。慣れ親しんできたスタッフとの別れを余儀なくされた。そんなV2時代の集大成とも言うべきベストアルバムが2008年にリリース、全英2位まで上り詰める大ヒットとなる。同じ年、今まで3人編成を貫いてきたフォニックスだったが、ツアー・サポートをしていたギタリスト、アダム・ジンダーニを正式に加入させる。4人編成の新生フォニックスの誕生だ。ベストアルバムの大ヒットによる次回作へのプレッシャーや、「メンバーが1人増えたことにより一体どんなケミストリーが生まれるのか」という周りの期待感などを引っさげ、さらにレベルをギュギュッと引き上げて挑んだのがこちら、通算7枚目の今作「Keep Calm And Carry On」というわけである。

99年にアルバム「Performance and Cocktails」をジャケ買いして以来、私はフォニックスの音世界にフォーリンラブしてしまった大ファンのひとりである。今でもたまに「一番好きなバンドは?」と聞かれると、頭で考える前に口をついて出てくるのはこのバンドの名。そう、自称ロックラヴァーの私がなんだかんだ最も好きでい続けているバンド、それがステレオフォニックスなのだ。07年の「Pull The Pin」の時は幸運にもインタビューさせていただき、本当に口から心臓が飛び出るかと思ったくらい緊張&興奮した。

どのバンドよりも人一倍想いを寄せているということもあって、今回の新作をドキドキしながら聴いてみた。
「ドキドキ」
ここで言うこの表現には2つの意味が含まれている。
ひとつは、どんなフォニックス節が待ち受けているのかという期待で胸躍らせている「ドキドキ」。もうひとつは、常に進化を遂げているバンドだけに、新たなことにチャレンジしすぎて「らしさ」がなくなってしまってやいないだろうか・・という若干の不安感からくる「ドキドキ」。

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1曲目のイントロがテンポよく流れる。「She's Alright」

ケリーのちょっぴり気怠いハスキーボイスの歌いだしが聴こえてきた瞬間、後者の「ドキドキ」は一気にビュビューンっと吹っ飛んだ。

「これがデビューアルバムのつもりで作りたかったんだ」と話すケリー。
「とるにたらないバンドがそこいらのバーで演奏したとしても、観客が思わずビールから目を離してこちらに顔を向けてくれるような力がある曲を揃えること。それだけだった」

そんなケリーの言葉通り、「She's Alright」「Trouble」をはじめ、バンドの初期を彷彿とさせるような力強いビートを刻む前傾姿勢のナンバーが際立つ。その他にも、どこまでもピュアで優しい「Innocent」、Museのような骨太重低音を轟かす「I Got Your Number」、イントロを聴いただけで「あ、フォニックス!」と言い当ててしまえるような爽やかポップ「Uppercut」、ピアノを前面に押し出す壮大なロックアンセムバラード「Show Me How」などなど、とにかくいつも以上にバラエティに富んだ内容となっている。

「原点回帰」。これは今回のアルバムのテーマのひとつと言えるかもしれない。でも、この言葉だけではあまりにも物足りない気がする。フォニックス節はそのままに、自らのハードルを少しずつ上げ、勢いとチャレンジの炎を絶やさず突き進む。まさに今作のタイトルが示すように、常に冷静さを失わず、ファンの期待に答えながら着実に一歩ずつ前進し続けている。

これから先「好きなバンドは?」とまた質問されることがあれば、一点の曇りなくもっともっと心を込めてこう答えよう。

STEREOPHONICS is my most favorite rock band
         in the world!! That's for SURE!!!!!


$Tommy Music★Treasure Box                 ~トミーとロックと、ときどきハーレー-phonics