気付けば12月に入りましたね・・・年の瀬になると、なぜだか寂しく切ない気分になってしまうのは私だけでしょうか?

そんなセンチメンタルな季節に見事にハマった作品が先月ドロップ。

The Fireman "Electric Arguments"

The Firemanとはポールマッカートニーと音楽プロデューサーのYouthによる実験的なプロジェクト。1993年と1998年にそれぞれアルバムがリリースされたが、以降とくに目立った活動もなく現在に至っていた。Sir ポールとタッグを組んでいるMartin“Youth”Gloverという人物について「誰?」という方も多いかもしれないが、実はかなりの敏腕プロデューサー。Killing Jokeの元ベーシストであり、オーブのオリジナル・メンバー。近年はプロデューサーとして大活躍。主なプロデュース作品はThe Verve『Urban Hymns』(あの名曲「Bitter Sweet~」も彼のプロデュース!!), Primal Scream『Beautiful Future』(←今年の最新作)他にもU2, The Music, Marilyn Manson, Crowded House etc...ね、スゴいでしょ。
この超・超・強力タッグThe Firemanの3作目が今回10年ぶりに世の中にお目見えしたのである。制作期間はたったの13日間。全部で13曲だから1日1曲のペース。潔いね。ただセッションには約1年近くもの歳月を費やしたという。前2作までは『実験的にエレクトリックなサウンドを紡ぎだしていく』という名目通り、完全なる電気ダンスミュージックがメインだったが、今回は初めてボーカルをフィーチャー。クラシック・ロックやアコースティックなナンバーなど、よりトラディショナルなサウンドに仕上がっている。平たく言うならば、とっても聴きやすく(=ポップに)なったわけだ。

私に限ってかもしれないが、彼の曲(The Beatles以外)を聴く時、いつも必ず彼の周りの女性が脳裏をかすめる。98年に愛妻のリンダを乳がんで亡くし、4年後に元モデルのヘザーミルズと再婚を果たすも、結果は皆さんもご存知の通り:2006年から離婚調停に入り、今年の3月に約48億円もの慰謝料の支払いを命じられる始末。この心的疲労は計り知れないものだと思う。そんな渦中においても、彼は音楽を作り続けている。長年契約していたEMIを離れ、新興レーベル「Hear Music」に移籍。2007年には移籍第一弾アルバム「Memory Almost Full」をリリース。そして今回、The Firemanとしていつにも増して切ないポールサウンドを残してくれた。とにかくリードトラック「Sing The Changes」を聴いてみて欲しい。狂おしい程やさしく、胸の奥に潜むありとあらゆる琴線に触れまくる。紆余曲折、海千山千、波瀾万丈・・・・そんな彼の人生の一部である作品にリアルタイムで触れる事が出来て、今、心から幸せに思う。

先日行われたブリットアワードで、ポールは特別功労賞を受賞した。受賞後のインタビューで、彼は取材陣にジョーク交じりにこう言った。

「オバマ氏のための歌をもう書いてあるよ!」

memory "Completly" fullになるまで、ぜひとも音楽を作り続けて欲しい。
新作を聴き、あらためてそう強く願った。

Tommy Music★Treasure Box~トミーとロックと、ときどきハーレー-paul