政治家から派生する音楽と聞いて、あなたはどんな印象を受けるだろうか。

反ブッシュ派のアーティストが集結したコンピ「Rock Against Bush」(2004年4月にリリース。4ヶ月後に早くも第2弾がリリース。)や、イギリス前首相トニー・ブレアが学生時代に組んでいたバンドを模倣(?)し、エドウィン・スターのヒット曲をカバーしたUgly Ruomorsの「War」(2007年リリースされUKチャート6位まで上り詰めた)、ドイツ前首相ゲルハルト・シュレーダーのゆったりとした政治スタイルを皮肉って作られたシュレーダーそっくりさんによるアルバム「Die Gerd Show~Der Kanzler Singt」・・・
上に挙げたのはどれもその政治家のやり方に対する不満や諦め(?)から制作されたもの。

2008年11月—
いまここに、かつてない程のパワフルな期待感によって生まれた名盤が誕生した。

「YES WE CAN:
    VOICES of a GRASSROOTS MOVEMENT」


第44代アメリカ大統領の座を見事勝ち取ったバラク・オバマ氏。彼が民主党上院議員としてアメリカ初の黒人大統領を目指していた時に作られた、名だたるアーティスト達による応援コンピレーション。そのビッグ・ネームたるや、凄まじい:Lionel Richie, Stevie Wonder, John Mayer, Dave Stewart, John Legend, Jill Scott, Jackson Browne, Sheryl Crow, Kanye West, Adam Levine(from Maroon5), Buddy Miller etc...
イラク戦争問題を含む戦争兵器や核の廃止/禁止を声高にうたうオバマ氏の思想に賛同したこれらのアーティスト達が集まって制作されたアルバム。心の込もった全18曲の応援歌のうち10曲は<Exclusive Obama Version>というクレジットがついている。これは彼が選挙期間中に行ったスピーチが曲のイントロやアウトロ、間奏の部分などで効果的に使われているバージョンということなのだが・・・
これが、やばい。
なぜだか胸がいっぱいになる。
「なんでだろう?アメリカ国民でもなければ、アメリカ好きでもなければ、アメリカに住んでいたわけでもないのに、この高揚感はいったいどこから来るのだろう・・・?」

一瞬頭をよぎった疑問は、すぐに解決した。

深刻な不況、物価高騰、環境汚染、紛争、貧困、人種差別など世界規模の社会問題が渦巻く中で現れたバラク・オバマ氏は、もはやアメリカだけでなくグレーに染まりきってしまった世界全体をきっと良い方向へ<CHANGE>してくれるんじゃないか—。そんな少しの希望と期待が入り交じり、さきほどの高揚感へ結びついたのかもしれない、そう思った。国籍や肌の色など関係なく、国境という線を越え、海を越え、人々の心に染み渡る。これぞ音楽の持つ力。

このコンピレーションの内2曲には、黒人人種差別撤廃の夢を語ったキング牧師のスピーチが使用されている。

アメリカ初の黒人大統領、バラク・オバマ氏。
歴史が今、変わった。
Yes, We Can.
単なる流行語で終わって欲しくない、全世界の願いがこもった言葉。
その言葉がタイトルになったコンピレーション「YES WE CAN: VOICES of a GRASSROOTS MOVEMENT」は12月17日リリース。
ぜひ聴いてみてください。

obama