やっぱり『Kindle Paperwhite』を買った
勢いで電子書籍を何冊か作ってみたぜ

先月、発売されたばかりの『Kindle Paperwhite』を手に入れたので、この2週間『Kindle Paperwhite』用の電子書籍の研究をしていた。電子書籍の作成フォーマットはEPUB形式がスタンダードになりつつあるが、キンドルはEPUBには対応していないので、MOBIで作成することにしたのだが、何度かテストを繰り返すと、『Kindle Paperwhite』は文字のみに特化した電子書籍リーダーで、モノクロとはいえ画像の再現性が極端に悪い。

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「何だ、文庫や新書の文字本を読む専用だ!」というのが今のところの結論で、Kindleストアに読みたい本もなく、特に目新しいこともないので、自分に合わせたPDF形式の書籍を作って入れておくことで電子書籍に慣れることにした(これはこれでかなりの技が必要なんだよ)。
今回、思った以上の活躍をしてくれたのが、ジャズ友のじゃこのめさんに貸してもらったCanonのプリンターPIXUSにバンドルされているMac用のOCRソフト「読取革命Lite for Mac」だった。
基本的に「自炊」でやるような裁断機で背の部分を断裁してスキャンするのは忍びない。てか、生理的に出来ないので、フラットヘッド・スキャナーで地味にスキャンすることにしている。


$Tommy's Jazz Caf'e ジャズブログ ←お気に入りのOCRソフト「読取革命Lite for Mac」

以下の本の全ページをスキャンして、文書画像をOCR(光学文字認識/Optical Character Recognition)「読取革命Lite for Mac」にかけて文字データを抽出したテキストを整理して、再度『Kindle Paperwhite』用にリサイズしたDTPソフトに流し込んで、EPUBやMOBI、PDF形式に変換した。これに何の意味があるのかは、まだ自分でもスッキリしないのだが(笑)。まあ、物事を把握する苦行のようなものだと理解して頂ければいいのかも?こういうことは身を持って体験しないと、ほんとのことは見えてこないと考えるので、「分かるまでやってみる」なのだ。

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GROOVE presents クラブ・ジャズ入門/著:沖野修也(256ページ・リットーミュージック)
LPレコードに潜む謎 円盤最深部の秘密を探る/著:山口克巳(326ページ・誠文堂新光社)
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ジミ・ヘンドリックスの伝説/著:クリス・ウェルチ 訳:菅野 彰子(174ページ・晶文社 )
一生モノのジャズ名盤500/著:後藤雅洋(318ページ・小学館101新書)

これはあくまでも『Kindle Paperwhite』で本を読む時の自分専用フォーマットのテストなので、誰でもOK!という分けではないが、以下のデーターでページメイキングすると美しい組版の『Kindle Paperwhite』用のPDF書籍ができるので参考にして頂けるとうれしい。
300ページくらいの本で2MBくらいなので、画像のPDF書籍よりかなり減量に成功している。

1ページタテ組の画面サイズ:タテ90mm×ヨコ122mm
*判ズラは天地左右7ミリ取って、タテ76mm×ヨコ108mm
1ページタテ組の本文:1ライン32ワード×14ライン
書体:秀英明朝Pro M/本文級数13.5級/行送り22.3歯


本体のメモリ(使用可能領域約1.25 GB)に何パターンかコピーして、他の書体も試してみたが、文庫や新書の電算写植に慣れた目には秀英明朝Mが美しい。本文が"Pro M"だと太いように思うかも知れないが、『Kindle Paperwhite』の高解像度E InkディスプレイではPDFにした時には文字が細ってしまうので、Pro Mが丁度いいようだ。EPUBやMOBI形式にする場合は、Pro Mだと太いので要注意だ。モノクロ画像が奇麗に見えないのも、白と黒との高コントラストが原因だと思う。


*ここに見本写真入れる

組版で読む気分も変わるのが本
タテ組で読みにくい本というのもある

世の中には、組版という意味では書籍の体を成していない本がある。『一生モノのジャズ名盤500』はそれが一目で分かる本だ。出版社の新書判フォーマットに押し込んでしまうと、タテ組かヨコ組かが分からないような本になってしまったんだろう。これは本の美意識として反省すべきことだと思う(タテ組、右開きにする必要が全然ない)。新書判で救われたことと、新書ルールで失った美意識とどちらが優先するのだろうか? まぁ、ジャズ本にはこういうのが多いが、本の美しさとして寺島さんはかなり気をつけているようだ。こんなに英文やアルバム紹介が多い本は基本ヨコ組だと思うのだが、困った本文タテヨコ混在慣習がジャズ本にはあるみたいだ。
この本は文字データ量が多いので、OCRにかけても校正にかなりの時間がかかる。今回、自作電子書籍にするのは途中で断念した。まぁ、組版ルールを作り直さないと電子書籍では読みにくい本であることは確かだ。テキストはあるので、後日マジメに挑戦しよう。
因に、この書籍組版の評価は本の内容の書評ではないので著者は気にすることはないが、まぁ本来は、そういうことも含めて評価するのが正解だと思う。

もう一冊、これはヨコ組の本だろう!と思うのが『クラブ・ジャズ入門』。読んで貰いたい年齢から考えても、組版が重すぎる。後半のアルバム紹介のヨコ組くらいのカジュアルさがあれば、もっと読みやすい本になったと思う。で、電子書籍版ではヨコ組にしてみたら、肩の力が抜けて読みやすかった。本来、それ程書き手に力はないのでタテ組で誤摩化した感はあったが、実際にヨコ組にしたら底の浅さがバレバレになって、クラブ・ジャズっぽくってすごく良かった。(ジャズ評論家見習いの柳樂光隆くんが、かなり影響を受けたネタ本でもあることもチェック。沖野先生に学んだ「踊れるジャズ」ってそういうことなのね?ナットク(笑)・・・後日、感想は詳しく書くことにしよう)。


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『LPレコードに潜む謎』は、興味のないクラシックのページはごっそり削除。ジャズのLP話だけにした。おかげで、ずいぶんスッキリしたエッセイになった気がする。また、自分ウケだけでページを稼いでいる「敵性語追放」の項目は、完全に削除した。旧字ってOCRにかけるのタイヘンなんだよね。手打ちで全てを修正したのだが、こんなくだらない内容で丸背ハードカバーの10ページも使っている物書きとしてのセンスが許せなかった。旧字手打ち入力ストレスの腹いせか?(笑)。

紙の本として一番美しかったのが『ジミ・ヘンドリックスの伝説』。原書の初版が1972年、邦訳の初版が1975年とかなり古い本。んで、手元にあるのは2003年版なのだが、本文が再校正されていないので、表記が古くさいままに手抜き出版されている本。こんなの多いんだろうなぁ~。
ブックデザインが平野甲賀つーだけでも嬉しい本だが、活字っぽい書体を使って本文を組んでいるので、細すぎてOCRでのエラーが多い書籍になった。モノクロ写真がカッコイイ本だが、『Kindle Paperwhite』なので、全て却下しておいた。後日、よく考えて写真を入れ込んでいこう。


不思議で困った体験だが、「すでにある紙の本」「OCRテキストチェック」「本文再組版」の3回も同じ本を読んでしまった(笑)。まぁ、仕事で書籍を作って入る時は、もっと細かく読んでいるのだが、DTP以前の既存の本を電子書籍化するのも、かなりのエネルギーが必要なことを実感した。
ほんとテキストだけにしてしまうと、書き手の器量が丸裸にされてしまうものだ。本の装丁、質感、タテ組、ヨコ組の組版、オビの宣伝文句に救われている本がどれだけあるのだろうか?情緒的なことが排除されるので、電子書籍化で怖いのは著者の実力がバレてしまうことじゃないだろうか。