御成座訪問記① | 富三 55

富三 55

55歳になった富三の俳優業と酒場、健康と日常。


7月8日、9日と秋田県の大館の御成座で映画を見てきたので報告します。

7月8日「アネット」を見た

前作「ホーリーモーターズ」には痺れて酔い痴れたわけですが、そのレオスカラックス監督のひさしぶりの新作「アネット」。一言で言えば変な映画だった。いや変だから面白く、やはり痺れたのだった。まるで羽衣という劇団の「妙ージカル」を映画化したんじゃないかってくらい妙なミュージカルで面白かった。アダムドライヴァー演じるスタンダップコメディアンのジョークは一つも面白くないのに画面の中の観客には大ウケと言うシュールな状況、これはカラックス監督もフランス人だからアメリカンジョークの何が面白いのか全然理解できないという事を描写しているんじゃないかと思った。我々日本人も中々難しいでしょう?アメリカンジョーク。で、タイトルロールのアネットが誕生するとなにやら「不気味の谷」的なお人形。ここで「あー、これは映画のリアリズムではなくて舞台のオペラとかミュージカルなんだな」と気づいた。舞台だから本物の赤ん坊を出演させる事はできないので小道具としてお人形を使っているのだ、と。そこに気づいてこの映画はさらに楽しくなった。どんなに胸糞の悪い殺人が起こっても「これはオペラだよ」って思えば面白く楽しめる、ただただ美しい光景を楽しめば良いのである、オペラってリアリズムの演劇とは違って物語的に少々無理があっても音楽とか美術の美しさを楽しむモノでしょう。これはオペラなんだから最後殺された役を演じた役者もみんなニッコリ出てきて「これはお芝居ですよ」ってカーテンコールがあるはずだと思ってたら最後にホントにカーテンコールみたいに全出演者が出てきて「皆さまごきげんよう」みたいな事を言いながら提灯行列をやってたからもうそれだけでも楽しくなっちゃって「ブラボー」って拍手したくなっちゃいました。
楽しみに待ってたのに何故か東京では見逃していて、こうして大館の御成座で見ることができたのも何か奇跡のような出来事でした。