「質問要旨」

不適切な飲酒により、肝障害やがんなどの健康障害やDV・自殺・飲酒運転などの社会に
対する悪影響は非常に大きい。
適切な飲酒量の啓発や5%にとどまるアルコール依存症治療率などまだまだ求められる対策は多い。
兵庫県はアルコール被害防止対策の計画策定と部局横断した取り組みが必要だ。


「答弁要旨」
・不適切な飲酒は、肝障害、自殺、交通事故、暴力など、さまざまな問題を引き起こし、本人や家族、社会に損失を与える重大なリスクであると、このように認識。
総合的な推進体制や推進計画の策定を検討
本部設置の必要性を十分検討



「ようやく始まったアルコール被害の対策」
死者3.5万人、社会的損失4.1兆円。
この数値は大規模自然災害によるものではなく、一年間のアルコール被害によるものです。
 2013年に成立したアルコール健康障害対策基本法です。
国や自治体、医療関係者に初めてその責務が明記され、都道府県にも地域の実情に応じた推進計画の策定が努力義務とされています。このほか、具体的な取り組みとして、本年度から特定保健指導では、断酒ではなく飲酒量の減少を目指す、ブリーフ・インターベンションも採用されました。
 これまで、断片的に議論されてきたアルコールに起因した問題。
がん、飲酒運転による事故や依存症、DVに自殺。それぞれが非常に大きな問題ですが、
大きな要因がアルコールにあり、総合的な対策を真剣に考えなければなりません。


「不適切な飲酒とは」
アルコール被害の未然防止にまず必要なことは不適切な飲酒の防止で、
3つの類型からなります。

1:1日平均で日本酒2合以上の飲酒により、生活習慣病やがんなど健康障害が引き起こされる過剰な飲酒習慣。
2:おおむね日本酒3合強で酩酊に至る深酒・暴飲により、急性アルコール中毒やDV、性被害などを引き起こす、ビンジ・ドリンキング。
3:未成年や妊婦、自動車運転など、飲んではいけない条件下での飲酒。


「アルコールの社会損失」
厚生労働省は、アルコール依存症を約80万人と予想、治療は4万人に過ぎません。
60以上の病気の要因となり、健康寿命を短縮する要因の9.2%を占め、アルコールに起因した死亡は毎年約3.5万人と驚く被害が推計されています。
飲酒運転違反者の約32%にアルコール依存症の疑い
刑事処分に至るDV事件では犯行時の飲酒は約67%
過去5年間以上のアルコール乱用または大量飲酒の経験のある高齢男性では、認知症リスク4.6倍、うつ病3.7倍
自殺した人の3割は直前に飲酒
など、これら課題の未然防止・抜本対策には不適切な飲酒対策が必要です。



「世界の動向」
2010年のWHO総会では、アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略が決議。
決議内容は10分野に分かれるが、日本の整備が必要とされそうなのは
分野5 アルコールの入手性
小売販売免許/店舗数や場所の制限/営業日と営業時間の制限/公共の活動や行事での飲酒ルール
分野6  アルコール飲料のマーケティング(広告などの販売促進活動)
内容・量・媒体の規制/スポンサーシップ活動の規制//監視システム


「質問」
国内外で深刻な被害をもたらすアルコール被害の防止に向けた機運が醸成される中、県は、不適切な飲酒の現状と引き起こされる社会問題や損失をどう認識し、アルコール健康障害防止の推進計画を策定されるのか、また、飲酒運転やDV防止は県警本部、アルコール依存症や健康被害対策は健康福祉部、未成年飲酒防止では企画県民部など、部局を横断した全庁的な取り組み体制が重要と考えますが、併せて当局の所見を伺います。



「井戸知事の答弁」
昨年12月に成立した「アルコール健康障害対策基本法」は、不適切な飲酒による健康障害の防止とアルコール依存症の本人・家族への支援の充実、この二つを基本理念としています。地方公共団体には、正しい知識の普及、相談支援、医療の充実など、事業の総合的、計画的な推進が求められています。
 本県では、不適切な飲酒は、肝障害、自殺、交通事故、暴力など、さまざまな問題を引き起こし、本人や家族、社会に損失を与える重大なリスクであると、このように認識しております。このため、アルコール健康障害を健康づくりや障害者支援の課題として、各種事業を展開してきました。
 具体的には、まず医師会等の健康づくり県民運動参画団体による適正飲酒の広範な啓発です。2番目には、特定保健指導における減酒支援のための保健師等への指導強化、あるいは研修会の実施です。3番目には、健康福祉事務所や精神保健福祉センターによる依存症患者やその家族への相談支援を強化してきました。4番目には、断酒会ですけれども、当事者としての経験に基づく支援をお願いしています。5番目は、飲酒運転により運転免許の取り消し処分を受けた者などに対しまして、講習の実施など、健康障害の発生・再発防止を図ってきました。
 医療体制としては、光風病院を初め5医療機関――垂水病院、東加古川病院、明石病院、仁恵病院ですが――この5医療機関により、アルコール依存症、リハビリテーションプログラムなど、専門的な治療を提供しています。
 今後は、法律の趣旨を踏まえて、これらの事業の体系的な充実を図り、アルコール健康障害防止対策を強化していく所存です。また、国の基本計画の作業状況を注視しつつ、本県の総合的な推進体制や県の推進計画の策定を検討してまいります。
 統合的な指導が必要だというご指摘もございました。このように各部課にまたがるような課題につきましては、県として本部を設けまして対応することとしておりますので、本部設置の必要性についても十分検討していきたい、このように考えております。