3か月前にマニラ湾で起きた建築物接触事故の調査をアテンドしました。
なんとも不可思議な事故なんですが、うちの船長たちもミスを犯してるので、
そこは率直に認めたうえで協力します。
深夜マニラに入港した船が、港内の建築中構造物に接触したんですが、
本来事前に示されるべき、その区域が電子海図上に表示されず、
(直近にアップデートしてたにも関わらず)、また各々の建造物に法で規定されている灯火を付けておらず、
一方で、当時船橋に4人の乗組員がいたのに、適切にレーダーを監視することをせず、
(飛行機でいうブラックボックスのようなレコーダーの記録を見たら、はっきり映ってました)
接触した後に、直ちに港湾当局に報告したのに、港湾当局は対応せず、
工事していたタグボートの一隻が、俺がアテンドするからエンジン使うなと牽引してくれたのですが、
(容易に自力で離脱できるので、その必要ないのに)
誤って、他の錨泊船の方に引っ張ってしまい、本船がタグボートの指示を無視して全速後進かけたのですが、
間に合わず、軽く当たってしまい、当該タグボートは逃げてしまった(逃げてもすぐわかるんですが)、
という、なんともよくわからない事故でした。
錨泊していた船が一番の被害者です。もっとも、凹みもなかったので、まあいいよっていってくれたんですが。
本船も忙しかったから(大概いつも、忙しかった、というのが理由なんですが)、
すぐ会社に報告しなかったので、我々が状況を知ったのは2時間後だったというオチ。
これ、安全管理の中で一番問題視されることなんです。
もちろん、環境を破壊せぬよう油の流出を防ぐなどの措置も優先されるんですが、
会社の安全規定で、真っ先に最速の手段(電話)で一報入れることになってるんです。
というのを、こぐが作った現場のポンチ絵や、船橋、船首の配備図を基に、
保険会社の調査員と、一つ一つ検証しました。
朝からやって夕方まで、7時間ほどですね。
結論などは、その場では出ません。海難審判になることもない事故ですが、
大体は、こういうことでしたね、っていう問題点の指摘で終わります。
というのは、その事故自体を究明することよりも、解析して次の事故を防ぐことが目的のことが多いからですね。
さて今日は、配乗会社のオフィスで、この1週間の総括です。
夕方には空港に移って(何しろ街中の道路混雑がひどい処なので)、
深夜の便で帰国します。事前PCRの結果もらうの、ちょっとドキドキするなぁ、これは何度やっても慣れない。(笑)

