
徒競争なんかは全員が走るんじゃなく、最初と2番目の組くらいだけ走って進行確認するんだとさ。
こぐの時もそうだったのかなぁ。
げんちゃんは一番小さいので、最初の組で走るんだけど、
「なんか、練習とかで全力で走るのっていやじゃん?だから適当に走ってたよ~」
って同居人と話しているのを聞いてて、
そうそう、中学生くらいになると女の子はそんな感じなんだよな、って思いつつ、
ふと、昔のことを思い出したよ。
こぐが中学生の時、同じクラスにA子って女の子がいた。
彼女は、特殊学級に入るほどじゃないんだけど、ちょっと変わったところがあって、
また、そういう子特有の顔つきをしていたので、クラスメートには疎まれてたんだな。
小学校の分数計算のドリルなんかをやっては、担任の先生に見てもらったりしてたから、
努力はしていたんだと思う。
でも、中学生くらいの、特に女の子は残酷なので、
あからさまに彼女を嫌い、そういう事を口に出していたよ。
男子も色気がついてくるころだから、女子に陰口叩かれたくないこともあって、
その子と一緒にいるのは避けていたな。
なぜか、こぐは一緒の係になることが多かったけど、
率直に白状すれば、ほかの男子と同じ態度を取っていたんだな。
その子は、こぐが係の仕事をしないから、いつも困ったように一人で仕事をしていたよ。
体育祭の練習のときに、運動の得意なクラスでも人気者の女の子が、
面倒くさいから1500メートル走の練習は適当に走ろう、って提案したんだ。
みんな、すぐ賛成してた。
練習が始まって、みんなプラプラ走り始めた。
体育の教師が、ちゃんと走れ!って怒ったけど、全員だから無視してたよ。
でもそのとき、A子だけは、いつもと同じように走りだしたんだよ。
頭があまり良くない彼女だけど運動も苦手で、それこそのんびりした走りなんだけど、
彼女は一生懸命走ってたな。
1000mを過ぎたころ、なぜか言い出した女の子を含めて数人が本気を出し始めた。
それは、決してA子に触発されたのではなく、自分達がほかの人より遅いのは嫌だというのが、
見え透いた行動だったから、普段彼女のことを、いいな、って思ってる男子も含めて、
男子陣は、いや~な気分になった。もちろんこぐも。
練習が終わって、A子はやっぱりビリだった。
クラスの男子は、やっぱりA子には何も声をかけなかったけど、
途中から本気で走った女子とも、その日は話さなかったような気がする。
本当は、あのときに、いうべきだった言葉を、
もし、げんちゃんのクラスにそういう子がいたら、今、声を大にして言ってやりたい。
よくがんばったじゃん!って。