
一人の乗組員が、おかしくなっちゃってさ。
最初はリビングルーム(とは船ではいわないんだけど)で、
終日宗教音楽を聴いてたり、聖書を抱えてうろついている程度だったんだけどさ。
(国民のほとんどがカトリックだからね)
次第に当直中に仕事をしなくなったり、泣き喚いたり、
夜になると悪魔が見えるとか言い出してさ、
ついには、飛び回ったり、暴れたり、噛み付いたりするようになったので、
ベッドに縛り付けて、他の乗組員に厳重に監視させてさ、
次の港で下船させるために、全速力で走らせているんだわ。
時たま、こういうこと起こるのね。
家庭内に問題があったりすると、特になりやすいんだわ。
連絡取るのも不自由なところを、毎日海しか見えない環境で、24時間いるわけだからさ、
精神的負担が重くなりすぎると、鬱病のようになるんだよね。
または、酒びたりになったりとかさ。
(こぐのことは、ほっといて!)
こういう人は、信じられないくらい馬鹿力出したり、
いきなり海へ飛び込んだり、わけわからない行動とることあるから、
危険なんだよね。
人に危害を与える恐れがあるだけじゃなくて、重要な機械を壊したりさ。
こぐが現役だったときも、あったわ。
監視している人間も嫌なもんだよ。何するかわからないんだもの。
目つきはおかしくなってるしさ。
日本人だと、神掛とか、狐憑きって言葉があっても、そう思う人は少ないけどさ、
キリスト教の国の人は、悪霊が憑いたって思う人が多いみたいね。
実際、そういうこともあるってのも、聞いたことがあるけど、
本当のところは、こぐにはわからないや。
あとは、早く入港して、病院に収容されるのを待つばかりだわ。
教訓:夫婦仲が悪いと、仕事への影響は大きいよ!ってことかな