【読書記】ゴリラ裁判の日 猿の惑星がくるぞー | 模型づくりとか趣味の日々リターンズ

【読書記】ゴリラ裁判の日 猿の惑星がくるぞー

ゴリラ裁判の日 書店で文庫でたまたま見つけて、帯で宮部みゆき氏が褒めてて、元々自分が法廷モノが好きだったので買ってみたんですが、これは大当たりでした。

 

ついにゴリラと言語でコミュニケーションが取れる日がやって来た!チェルシーとサム、二人のゴリラ研究者はジャングルに研究室を設け、母娘のゴリラに手話を教える実験を行っていた。特に娘のローズの成長は著しく、手話を読み取り言語化してくれる手袋も与えられた彼女はアメリカに行く夢を持つ一方で、ゴリラでありながら人間と同様のコミュニケーション能力と知性を持つ自身のアイデンティティーに悩んでもいた。上院議員のロイドの尽力もあり、彼女は米国クリフトン動物園に移り住む。理解あるホプキンス園長の庇護を受け、多くの著名人の訪問を受けつつ、動物園内のゴリラの群れとも馴染み、新しい伴侶も得た彼女を悲劇が襲う。観客の子供がゴリラのエリアに転落する事故が起き、危険を回避するため彼女の夫が射殺されてしまう。なんとローズは損害賠償を求め動物園を提訴する。射殺はやむを得なかったのか?ゴリラで無く人間だったら?ゴリラと人間をどこで隔てるのか?人間と同様の知性とコミュニケーション能力を持つローズには人間並みの権利は与えられないのか?

 

いやこれ面白い。ジャンルとしてはSFでもあるし法廷モノでもある。法廷モノは最後に一発大逆転を期待したいところだが、そこは読んで下さい。全編が翻訳物のような文体になってるところがまた粋で、米国が舞台の作品というのを違和感なく読ませる。

すごいテーマだわ。驚いた。そもそもチェルシーとサムの二人は、コミュニケーションが取れ高度な知性を持つゴリラを生み出すことが、社会にどんな影響を及ぼすか想像出来ていたのか、その影響をどう受け止めるつもりだったのか。動物が一斉に権利の主張をし始めたら社会は確実に大変革を起こすだろうし、タカ派の人間が鉄腕アトムの「ロボット差別」みたいなことを始め、動物を武力で弾圧するかもしれない。ロボットは電源切ればいいけど動物は本気を出せば人間を滅ぼすぞ…と、いうような壮大な内容ではないんだけど、この本は。でもそんなことをも想起させるような内容で、語られている以上の重さと世界観の奥深さを感じるような内容でした。そうはならないように無難なオチはついてるんだけど。中だるみも無くテンポ良く読ませる文章の力もあり、今後注目の作家さんです。オススメ!