【映画評】PERFECT DAYS トイレ清掃の映画なのにウンコ出てこないよー これでいいのか? | 模型づくりとか趣味の日々リターンズ

【映画評】PERFECT DAYS トイレ清掃の映画なのにウンコ出てこないよー これでいいのか?

今年もマイペースでやってまいります。

 

PERFECT DAYS でございます。カンヌで役所広司が主演男優賞取りました。

 

浅草あたりのぼろアパートに住んでいる初老の男性平山。なぜか妙にシャレオツな公衆トイレを日々清掃するのがが仕事。同僚の若者に呆れられるほど、トイレをピカピカに磨いている。

その几帳面さは生活にも表れ、毎日のルーティンを崩さない。近所の寺の境内を掃き清める音で目覚め、布団をたたみ、植物に水をやり、歯を磨き、ひげをハサミで丁寧に整え、玄関わきの棚に揃えた腕時計、鍵、小銭、古いフィルムカメラ、小銭をポケットに入れ、軽バンで出かける。仕事の後は開店直後の銭湯で湯を浴び、駅地下の古びた飲み屋で焼酎の水割りを一杯とおかずを2~3皿。布団に入って文庫本を読み、眠くなったら寝る。

そんなルーチンを崩すような出来事がたまに起きても、最後には元の生活に戻る。今日も仕事に向かう平山の表情は満たされているようでもあり、涙ぐんでいるようでもある。

 

渋谷にシャレオツな公衆トイレを作ろうというプロジェクトがあり(例の、人が入ると透明なガラスが曇って中が見えなくなるというアレも、このプロジェクトの一つ)、この映画も元々はそのプロジェクトのプロモーションビデオを作ろうと、ヴィム・ヴェンダース監督に発注されたものだとか。

不勉強で申し訳ございませんが、この監督の映画を観たことがありません。シャレオツなプロジェクトのプロモーションに相応しい、ハイセンスな映像を撮る方なのでしょう。

 

なので、トイレ清掃という素材を取り上げながら、トイレはすべからくオシャレだし、ボロアパートに住んでいても貧相ではなく、当節流行りのミニマリストのような風情であります。

そして決定的なのは、平山がじつはかなり裕福な家庭の出身であり、自らこの生活を選んだということがはっきりと語らているということ。

 

選べる側の人なんです。低賃金で3Kの仕事を選ばざるを得ない人ではないんです。

 

役所広司は、そういう人物を実に、存在感たっぷりに演じます。小奇麗なんですよ。そこは認めます。

この映画もそういう、なんというか映像センスの良さを楽しむ映画として観れば楽しめます。

 

だけどねー。なんかズルいと思ってしまうのよね。

3Kの仕事を選ばざるを得ない人の存在を「無かったことに」出来るほど、私ら市井の人間は安閑として暮らしてはいないんです。

コロナ禍の閉塞感から解放されたと思ったら円安、ウクライナ戦争やらパレスチナ問題やらで物価は値上げ値上げで、ポテチの袋も軽くなったことwww 今の社会のトレンドはむしろ閉塞感とか、日々の生活への絶えざる不安じゃない?

 

そんな日々でこの映画を観ると、「ちょっと高いところから見下ろしてないか?」と感じてしまう。少々イジケた気分になってしまうの正直なところなんです。

 

そしてトイレ清掃の映画なのに、ウンコも小便も、便器にあふれる便所紙と黄ばんだ水も、なーんにも出てこない。

見るべきものを見ようとしてない。作り手のそんな意識を感じました。