【映画評】スターリングラード ハリウッド製とは趣が異なる、もうグッチャグチャの戦場のリアル
スターリングラードでございます。
ジュード・ロウ主演の方ではないです。
1993年のドイツ映画だそうで、これはノーチェックでした。アマプラのお勧めで出て来て、評価が高かったので視聴。
タイトルこそ「スターリングラード」ですが、舞台がスターリングラードであることを示すものって、どっかに出てきたっけ?いやもう、そんな細かいことはどうでもいい。
キャメラワークは平板というか、引きの画が多い。音楽も前半はほとんど無く、やたらと人が出てくる。戦闘シーンも、ワサワサと人がいて、ヘルメットかぶって機関銃構えてはいるけど、中世の戦争のごとく、グチャグチャになってどつき合う。
ビルの一室に立てこもる。これも部屋中に兵隊がギッシリといる。
野戦病院はやたらと広く、床にけが人が隙間無く寝ていて、あっちこっちで叫ぶ声が上がる。兵隊は自分の同僚を先に治療しろと医者をどつく。
ともかく画にスマートさや整理されたところが無い。脚本も整理されてるとは言い難い。
でもそのスッキリしなさ加減が、戦争そのものである、という作り手のメッセージでしょう、これは!
戦争映画というジャンルの中でも、末端の兵士から見た戦争、戦争の大義もクソも無く、ただただ嫌な、やりたくない、逃げたい戦争を描いてる、なかなか腹の座った反戦映画です。
敵を描くよりも、上官の理不尽さや戦略の適当さ、前線の状況を無視した指示など、軍隊の不条理を中心に描いてるのも特徴。逃げる自国の兵を撃ち殺すソ連軍。適当な兵站計画でジャングルに兵を追いやり餓死させた日本軍。どこの国もやってることは一緒だねえ。「戦争は敵に対してではなく、自国民に対して行われる」ってなことが書いてあったのは『1984年』だったっけ?意味するところは違いますがなんとなく、そんなことを思い出させられました。
戦争でひどい目に合うのは、間違いなくワタシら平民です。このごろ日本もきな臭くなってるし、オリンピックやら万博やら原発の再稼働やらで、国民の支持があろうがなかろうが、お上がやると決めたことは強行されるんだということが、ここ数年の我が国を見てると良く分かる。毛ほどの効果も無いかもしれんが小なりと言えども我々は戦争反対の声を上げ続けないとならない…と改めて思った次第です。ハイ。