【映画評】エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス ハチャメチャSFだが中身は王道 | 模型づくりとか趣味の日々リターンズ

【映画評】エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス ハチャメチャSFだが中身は王道

エブリシングエブリ…(長いな)エブエブでございます。

わーい♪ ミシェル姐さんだ。
「グリーン・ディスティニー」ではチャン・ツィィーと見事な立ち回りを演じ、「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」では掟破りの「007より強いボンド・ガール」を演じてしまった、我らがミシェル・ヨー様です。
 
さてミシェル様が演じるは、コインランドリー経営の、生活に疲れた冴えないおばさんです。
善人だが気弱な旦那、ボケ気味の父親、すっかり生意気になった娘に囲まれヘトヘト。山のような領収書の処理に四苦八苦、税務署では杓子定規な役人にいじられ…
 
ところが突然旦那から(別人のようにシャキッとしている)、宇宙を滅ぼそうとしている悪いやつと戦えと言われるわけです。そのためにマルチバースに存在する、他の自分自身と接触し、その力を一時的に手に入れる方法を教えると…
 
マルチバース、最近SFで流行りのネタで(アベンジャーズにも出てくる)、多元宇宙論てぇやつと同じと考えていいんだと思いますが。
たとえばコンビニで、今日は焼き鳥を買おうか、からあげクンにしようか迷って、からあげクンにしよう!と思った瞬間に、焼き鳥を選んだ方の別の宇宙が出来上がる、ということらしいです。
何かを選択する度に、そっちじゃない方を選択した宇宙が出来上がるんですって、奥さん!
 
地球だけでン十億の人がいて、各々が常に様々な選択をして、その度に宇宙が出来てたら、とっくに宇宙は満杯になってそうなもんですが、無限に広がる大宇宙なので大丈夫なのかもしれません。
 
そんな別の自分、マルチバースにいる無数の自分と接触しつづける様が、もうなんかすごい勢いで映像化されてます。目まぐるしい!酔う!力を得たミシェルがカンフーを魅せる!歌う!料理する!旦那もがんばる!マトリックスの船の中っぽいの出てくる!某超有名SFのパロディあるwww
 
で、ミシェル姐さんは「なってたかもしれない自分」に接触し続けるわけです。旦那のプロポーズを受けなかった自分なんてのも出てきて、そっちの自分は何やら素晴らしい人生をしているようである。これは切ないですね。
 
破綻寸前のようなストーリーですが、最後にちゃんとまとまるのは、最終的に家族の物語に収斂するから。ことの顛末は映画で確認していただきたいですが、宇宙を滅ぼそうとしているのが、マルチバースにいる自分の娘であり、娘と和解することで物語は決着します。
 
いい年になって倦怠期とかにもなってくると、「昔はよかった…」「あの時ああしてれば違った人生もあったかも…」と考えがちですが、その都度最良の選択をしたはずの結果が今であり、そう思ってみると今もそう悪くない…
 
ハチャメチャSFの体裁を取っていながら、実はそんな古典的かつ普遍的、なんなら王道と言っていいテーマを扱っているのがこの映画と言えるかもしれません(なるほどアカデミー賞も納得であります)。
 
でもねー。ところどころ出てくるお下劣なネタは不要!子供に見せらんない!