【映画評】「博士と彼女のセオリー」 ありがちに陥らせない芝居の上手さ
ホーキング博士ことスティーヴン・ホーキングと言えば、ALS患者として車椅子にありながら、理論物理学の天才であり、一般相対性理論やらブラックホールやらで多大なる業績を残した方であります。
表立った業績の裏で、実は人間臭いドラマもあって(大抵は男女のもつれだったりする)、そこを赤裸々に描くのは、偉人系のドラマの定番のパターンだったりするわけですが、この映画もそんなありがちなパターンと言われかねない中で、佳作に成り得ているのは、ただただ主人公お二人の演技の素晴らしさによるものでしょう。
ホーキング博士を演じるエディ・レッドメンの、刻々と進行する病状に沿って演じ、なおかつ表情や体の動きに制限がある中で感情を表現していく様は実に見事(なんたって後半はセリフすら無い。喋れないんだから!)。奥さん役のフェリシティ・ジョーンズがこれまた、徐々に看病に疲れ倦んで行く、一方で旦那を完全に見限ることも出来ない芝居が上手い。他の男によろめくあたりの芝居がまた真に迫ってる。テントに夜這いに行くシーンの表情の生々しさが…(二人ともオスカーに主演男優、主演女優でノミネートされ、レッドメンは受賞)。
ただこの映画、ホーキングを知らない人が観たら、どんだけ偉くて、どんな業績上げた人かまるで分らんですね。これだと『ホーキング宇宙を語る』が売れた人って感じで、カールセーガンみたいに思われる…