【映画評】「JOKER」 華麗なる人生大逆転劇(怖)
じつは映画って、5分か10分も観れば良し悪しが大体分かってくるもので。音楽とか絵作り、役者さんの演技、演出のテンポとか。
そこ行くとこの映画は冒頭から、陰鬱な画面に重厚な音楽、凝った書体のオープニングで作品世界に引き込み、ホアキン・フェニックスの芝居で一気に掴んじゃうという…傑作感ありありで、そのテンションで最後まで引っ張ってくれます。
生まれてこの方人生ずっと踏んだり蹴ったりで、いいことなんか一つもなかった主人公が、人を殺めて罪悪感を感じるどころか逆に快感を得てしまう…人生で初めて他人を、世界をコントロールしたのだという実感に捉えられてしまう、この恐ろしさ。この怖さ。まさにDC最悪のヴィラン、ジョーカーの誕生。
欠点が無いわけではないですが…たとえば母親の手紙を盗み見て、自分がウェインの私生児であることが分かり激怒、その後程なくそれが母親の妄想であることがわかりまた激怒、という流れ。主人公の心情に大きく影響を与えるシーンだけに、ちょっと観ていて混乱してしまう。あとウェインの息子に簡単に近寄れてしまうところとか…まあそんな些末を吹っ飛ばしてくれるような傑作です。
善悪だの倫理観だのは三度のゴハンが食べられているから語れるのであって、そういう平和で安穏とした世界の外側で生まれるこの脅威に、対抗する術など果たしてあるのか…と考えさせられる作品でありました。
評価…☆☆☆☆