今更ながら1年前の記憶を記録です。

2018年最大の思い出となっているサンクトペテルブルクへの旅。ちょうど1年前です。

 

 

時々日が差す明るい曇り空でした。予想より寒く無く、東京の中秋から晩秋ぐらいの印象。

因みに、コンサート前日までずっと雨だった、この時期に晴れたのは珍しいと現地の日本人関係者の方の談。

 

2018年10/1 サンクトペテルブルクの歴史あるオペラとバレエの殿堂・マリインスキー劇場・新館にてMayJさんのフルオーケストラコンサート。

新垣先生はピアノ演奏で共演及び演奏曲全てのオーケストレーション(編曲)という大仕事。全20曲の曲目は次の通りです。(記事より)

 

1 Sparkle ー輝きを信じてー

2 ふたりのまほう
3 I Will Always Love You
4 Time To Say Goodbye
5 母と娘の10,000日 ~未来の扉~
6 本当の恋
7 Have Dreams!
8 愛燦燦
9 ふるさと
10 AVE MARIA
11 異邦人
12 Faith
13 I Dreamed A Dream
14 So Beautiful
15 Garden
16 RAINBOW
17 SIDE BY SIDE
18 My Star~メッセージ~
19 My Heart Will Go On
20 Let It Go

 

演奏は地元サンクトペテルブルクの交響楽団ネフスキー・オーケストラ

指揮はセルゲイ・ポリャニチコ

ピアノ:新垣隆

 

曲のアレンジをするにあたり、(全20曲ですから、ご多忙の中多くの時間を費やされたようです)後日のインタビュー記事で新垣先生曰く

余り色々な事をやってはいけない。その中でアレンジャーとしての想いを乗せる醍醐味

 

原曲の流れを損なわずに、しかも巧妙に意味ある細工が施された結果、非常に感動的で素晴らしい楽曲の数々となりました。

MayJさんも「素敵な旋律がとても新鮮で歌いながら感動しました」と仰ってましたが、例えば、本来日本的な郷愁誘う「ふるさと」にはストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」が最後に余韻のように見事に組み入れてあったりして、言うなればロシアで聴くどこかロシア的郷愁漂う日本のポピュラーソング。

MayJさんの美貌と完ぺきな歌声とともに、彩り豊かな楽曲の数々に、ほぼ満員の聴衆は魅了されておりました。

 

尚、それだけではなかったのです。

前半の終わり、May Jさんが舞台袖に去り、休憩なのかなと思った瞬間です。

自分にとって忘れられない1音が、妖しく鳴り響きました。予期しなかったことが。

なんと2015年作・新垣隆ピアノ協奏曲「新生」が、このネフスキー交響楽団との演奏で突然始まったのです。これには驚き、感動で自分は固まってしまいました。

その時のツイートにその興奮が表れております。

 

サンクトペテルブルクに響き渡る新垣隆「新生」May J.さんの歌の合間のオーケストラタイム。 いきなりあの挑戦的な1音が鳴ったときはぞくっとし、ロシアのオーケストラ奏者が従い奏でる様にはグッとくるものが。 短縮版ですが1楽章から最後3楽章終結にて披露、ブラボーの喝采。感動的でした。

 

新垣先生の自伝(にある)、少年期に憧れたというストラヴィンスキーや、作曲の姿勢もある種自身と重ねてリスペクトされているショスタコーヴィチ等の、当に基のこの地で、彼らの後継者たる若き奏者たちを従えて、自らの曲を演奏された。記念すべき日。

 

またそのネフスキーオーケストラの皆様の雰囲気がとても良く、この自分の感動を助長するに余りある魅力があったのです。

若く姿勢正しき品格ある第1ヴァイオリン男性奏者。

新垣先生の迫力あるピアノ演奏を心から楽しんで笑顔を見せて演奏している第2ヴァイオリン男性・女性奏者等々。

息をふうっと吸ってしなやかにたわむように空気に入り込むように演奏する西洋の美技を持つ奏者達。

 

協奏曲ですから、ピアノがリードして管弦楽が追随していくような形態。しかもピアノ演奏者は作曲者。

新垣先生が、この歴史と伝統ある、かのサンクトペテルブルク音楽院(ストラヴィンスキーの先生のリムスキ―・コルサコフもショスタコーヴィチも学び教鞭をとった)の目の前で、上記ツイートのように彼らの後継者のようなロシアの奏者を従えて、「新生」を演奏している。それだけでも感動です。

極めてロシア的に響く「新生」。

ロシアの観衆の大喝采をもって終了しました。

第1楽章と第3楽章の終わりを繋げた短縮版(今回の披露題名は「ともだち」)でしたが、本当に迫力と気品のある演奏でした。

 

コンサート会場はマリインスキー劇場の新館で2013年に完成した近代的な建物。

緑の本館の裏手のガラス張りの建物。内部もゴールド色の壁とガラスの装飾が美しかったです。

 

 

 

(リムスキ―コルサコフ像。マリインスキー劇場の目の前。サンクトペテルブルク音楽院は改修中でした。)

 

 

後日、雑誌にシュールなエッセイを投稿された新垣先生。その中にコンサート翌日の想いがありました。抜粋です。

「……コンサートの余韻が未だ醒めやまない。協演したロシアのオーケストラのメンバーたちの事も頭から離れない。……

これからマリインスキー劇場でオペラ公演がある。………演目はグノーの『ファウスト』。三時間くらいの上演の間、自分は舞台は殆ど見ずに、目をつむって聴いた。

バス歌手だったストラヴィンスキーのお父さんは、かつてメフィストフェレスを演じていた。

 

この舞台で。」

 

※100年後に、誰かのエッセイで同様に語られるでしょうか。(妄想)

日本の新垣隆氏はかつてここで演奏した。ピアノコンチェルトを。この舞台で。 

 

 

http://www.wws-channel.com/music2/105245.html/attachment/mayj-2?pg=105245&mv=0