私が涙を流していると後ろから担当の看護師さんが声をかけて来ました。
「お父さん、大丈夫ですか?」
私は涙をすぐに拭き「大丈夫ですよ‼」と少し笑いながら答えました。
すると看護師さんが
「お父さん、ここには色んな症状の赤ちゃん達が沢山います。普通の状態で産まれてこれなかった子供達がほとんどです。だからね・・・お父さんやお母さんはびっくりしますよね。戸惑いますよね。色々不安になって当然なんですよ‼だから、私達スタッフがお父さん達の悩みでもなんでも聞きますから、なんでも話して下さい。
私達はお父さん達と一緒に赤ちゃんを大きくして早く退院させてあげたいんです‼だからなんでもお話して下さいね‼」
看護師さんの言葉はとても優しくとても嬉しかったのですが、私の心はこの時あまり人を信じる事が出来ませんでした。
何で会って間もない看護師さんに心の内を話さなければいけないんだろ?どうせ他人事だからそんな事が言えるんだ‼自分がこんな目にあったら看護師さんは平気なのか?人事だから平気でそんな事が言えるんだ‼・・・と思っていました。
私は看護師さんに「大丈夫です。特に今は話す事はありません。」と平静を装い言いました。
すると看護師さんは
「では、お父さんのご希望とかありませんか?」
と尋ねて来ました。
私はこの子を兄弟に早く合わせてあげたかった。
昨日、実家で子供たちから言われた「いつ赤ちゃんに会えるの?」
その言葉の答えが欲しかったんです。
「もし、出来る事なら兄弟に合わせてあげたい。上の二人は産まれて直ぐに家族と面会出来て、普通にみんなから祝福されてきました。でも、この子はまだ私達夫婦意外誰ともちゃんと会うことが出来ません。だから、この子も上の子達の様にせめて兄弟にだけでも合わせてあげたいんです。」
看護師さんは少し困った顔をしました。
当然です。
このNICUには身体機能が未成熟な赤ちゃんばかりで、入室するのには細心の注意を払わなくては行けません。
この病室には家族であっても親以外の入室は許可されてなく、学校や幼稚園で色々な菌に接触する可能性が高い子供の入室なんかとてもじゃなく無理な状態でした。
それでも私は兄弟達にこの子を一日でも早く合わせたかった。
看護師は少し困った顔のまま
「兄弟面会は今の当院では実施していません。やはり子供の入室となれば病原菌の侵入するリスクが高いのと、その兄弟のショックが大きいのを考慮して行ってはいないのですが・・・分かりました。一度、先生達に相談してみます‼どうなるかは分かりませんがお父さん達の希望として伝えてみます‼」
私は自分の希望を話せた事で少し気持ちが緩んだのか、急に涙が溢れて看護師さんに
「私は早くこの子を家に連れて帰りたい‼家族五人であのオンボロアパートに帰りたい・・・帰りたいんです・・・」
そう多分それが私の一番の望みでした。
私は泣きました。
看護師さんの前で、情けないように泣きました。
看護師さんはただ「うん、うん。」と私の話を嫌な顔もせずに、優しく聞いてくれました。