ブラジルW杯アジア3次予選。

 すでにアウェーの北朝鮮戦に敗れていた日本は、結局2連敗でこの予選を終えることとなった。

相手ゴール前でのバイタルエリアでのあまりにも消極的なプレー。
今日の敗因はまさにここに尽きるように思える。

 今日の試合では相手ゴール真正面のエリアで何度か前を向いてプレーをする機会があった。
 しかしボールを持った選手はことごとくドリブルで相手を抜き去ろうとし、結局は相手DFの密集地帯を抜けることができず、あるいは味方と接触することでボールを失ってしまう。
 シュートを打たないという、ここ十数年来、日本代表が持つあまりにも悪い癖がこの試合でも出てしまった。
 
 無論他にもどうすることもできなかった敗因はある。交代枠のうち二つを負傷者のケアのために使わなければならなかったことは、あまりにも不運だった。ザッケローニ監督にはもっと試してみたい選手がいたであろうし、今日の試合展開を考えれば有効な交代が頭に浮かんでいたはずであった。

 大きく見れば今日の試合は負けてもかまわない消化試合。結果に一喜一憂することはあっても、大勢に影響はない。
 FIFAランキングによる最終予選のシード権争いは確かにあるが、
サウジアラビアが敗退し、韓国も最終戦まで勝ち抜きを決められないという他のグループを見れば、最終予選というのはどういう組み合わせであってもそれなりに厳しくはなる。

 より大きな問題は今日のこのフラストレーションを抱えたまま、三ヵ月後の最終予選に望まなければならないことだ。
 個人個人では所属チームでは好調を維持し続けている選手も多い。しかし日本代表というチームで見れば、ホームで若手主体の相手に敗北するという、非常に悪い流れのまま最終予選へと臨まなければならない。
 
 今日の試合は勝敗ではなく、内容こそが重要だった。同じ負けるにしても
代表チームでのプレーに良いイメージを持ったまま、次の段階を迎えることが理想であったのだが、選手たちが今日の試合で積極的なプレーをできなかったことが残念でならない。

W杯3次予選の合間を縫って行われたキリンチャレンジカップ2011ベトナム戦。

聞けばベトナムはW杯2次予選で、日本代表がアジアカップで苦しめられたカタールから勝利を収めている。(予選自体には敗退)
侮ってはいけない相手ではあったが、今回の試合内容を見れば、それほど警戒すべき相手でもなかった。

それにザッケローニ監督としては、今まで先発で起用してこなかった選手を多数送り込んだことからも明らかなように、本田圭祐が離脱している現状の解決策も含めて、今後の予選で新戦力あるいはオプションとして使える選手のテストと位置付けていたのだろう。

加えて一か月前に行われた予選の2試合がかなり厳しい試合内容だったため、日本代表にはこの試合での大勝を期待していた
しかし残念ながらフラストレーションの解消とはならなかった。


まず守備においては大きな問題点はなかった。何度か危険なシーンはあったものの、ほぼ一貫してベトナム攻撃陣を抑え込みんでいた。それどころかベトナムボールでハーフウェイラインを越えることすら稀であり、ボールの支配率を上げていた。

つまりこの試合が単調になってしまった原因は攻撃にある。

もちろんこの試合が「テスト」と位置づけられている以上ある程度不本意な試合運びになるのも当然ではあるのだが。

上述の通り怪我で離脱中の本田のいない攻撃陣から、さらに中盤の要である遠藤を外し、前半を3―4―3で、大幅に選手を入れ替えた後半は従来の4-2-3-1で試合に臨んだ。

しかしもともと代表での試合経験が少ない選手が多いうえ、あまり試したことの無いフォーメーションでの試合である。
攻めのアイディアは確かにあった。しかしそれを共有できず肝心なところでパス・トラップ・ドリブルのミスが頻発し、そこに消極的なパス回しも加わり、ボールを保持しながらも攻撃が機能しないというストレスのたまる試合展開になってしまった。

逆に言えばそれらがすべて上手くいったのが得点シーンといえるだろう。

日本の決めた得点は中央の長谷部からパスを受けた藤本がマークを一人かわして流し込んだセンタリングを、李が決めたもの。

李にとってはアジアカップ決勝以来となる得点であり、同じ決勝戦で監督から及第点を受けられなかった藤本にとっても大きな収穫となったのではないか。

また藤本はこのほかにも浮き球のボールから香川のチャンスを演出している。

しかしこのシーンは藤本の好調よりも香川の不調を見せ付けるものにもなってしまった。 彼の持つ攻撃力は、三次予選はともかく、最終予選を戦う日本にとって不可欠なものである。

ぜひとも復調を期待したい。

また槙野の負傷でハーフナー・マイクを投入できなかったことも誤算だっただろう。

前線にターゲットマンがいれば、もう少しシンプルな攻撃パターンを選択することもでき、後半少しは見所のある試合になったのではないだろうか。


結局のところこの試合の成果は、問題の解決ではなく課題画より鮮明になったことであった。

本田不在時の攻撃の陣容。
中盤で攻撃を組み立てる遠藤のバックアッパーをどうするのか。
そして忘れられがちだがCBの人材不足も解決してはいない。

(今野と吉田に不満があるわけではなく、もう一人が見つかれば今野をボランチで使うという 選択肢ができると個人的には考えている。もっともそれで即問題可決、とも思えないが)

これらすべての解決をザッケローニ一人に頼るわけにはいかない。
 特に人材の育成・発掘は日本代表にかかわるあらゆる人間の手によってなされるものだし、一朝一夕で解決するようなことでもない。

監督が早急にに解決しなければならない最も大きな問題は、スタメンの選手が使えない場合、チーム力が一気に落ちることだ。

まずはけが人や調子を落とした選手が多い中で、三次予選突破に向けてのチーム作りに集中して欲しい。

明けて2011年9月2日、いよいよ日本代表の次なるワールドカップへの長い道のりが始まる。





「過ぎたワールドカップを懐かしんでいるうちに、次のワールドカップがやってくる」

イタリア人の格言だそうだが、言い得て妙である。

昨年8月にザッケローニという新たな指揮官を招聘し、新チームのスタートを切った日本代表は、その後いくつかの親善試合とアジアカップを経たが、その間南アフリカ大会のベスト16という望外の結果の余韻が残っていたことは否めなかった。

しかしもはや1年前の栄光に思いを馳せていられる時間は終わってしまった。いよいよもって、次なる戦いに頭を切り替えなければならない。


日本代表は約1年に渡る「無敗」という結果と、それによって継続することができた大いなる自信、そしてアジアチャンピオンの肩書きを持ってワールドカップ三次予選を迎えることとなる。





本大会出場が当たり前となった今の日本代表。しかしいくつもの強豪が足元をすくわれ、絶望へと叩き込まれてきたのがワールドカップ予選だ。これから始まる長い戦いの末に待つのは歓喜の瞬間なのか、それともあまりにも無慈悲なの結末か。





まずは6年半ぶりとなる北朝鮮との戦いを見守ることにしよう。