12月に入った頃から主人の生活サイクルが変わった。
日中の散歩に加え、夜に何度も散歩に出るようになったのだ。
20時過ぎに行くことが増え、0時前後にも出かける。
行先は歩いていける公園ばかりだが、さすがに冬の夜中、
しかも入浴後に行くのはよろしくない。
何度も「寒いし風邪ひくから出ない方がいいよ」と止めても、
「うるさい、行く!」と言ってきかない。
時には私の手を振り払ってでも出ていく。
寝るのはいつも朝の5時や6時。
酷いときには私が起きる7時過ぎまで起きていることもあった。
睡眠は全く起こしても14時くらいまで起きない日と、
早朝から起きてしまう、つまり2~3時間しか寝ない日を不定期に繰り返すようになった。
一日に何度も同じことを言う、聞くのも回数が増え、
言ったことができない、やらないことも多い。
いよいよおかしいと思い、調べていた認知症や物忘れ専門の病院に問い合わせフォームから連絡を入れてみた。
簡単ではあるが主人の現状を記載して、相談を入れてみたのである。
ただ、このときの私は、調べたとはいえ認知症の理解が甘く、「もしかして加齢による物忘れか老人性鬱、もしくは男性更年期かもしれない」という気持ちもあった。
まだ「認知症=アルツハイマー=食事を忘れる+徘徊(迷子)」くらいの認識だったのだ。
主人は食事をしたことは覚えている。
何を食べたかは忘れているが、それは歳を取ってくれば当たり前のことだと。
やたら散歩には行くがちゃんと戻ってくるので徘徊ではない、と。
問い合わせを入れたものの、「認知症ではないと思われますが物忘れかもしれないので、もしご心配なら受診してみてはいかがでしょうか」くらいの返信が来ると思っていた。
しかし病院の臨床心理士から来た返信には「認知症のサインが出ているので受診してください。ご相談に乗りますので一度お電話ください。」とはっきりと書かれていた。
「病院もビジネスだからすぐこういうことを言うんだよな」と一瞬思ったが、とても丁寧に認知症のサインについて書かれていたので、とりあえず返信をくれた臨床心理士に電話を入れてみた。
臨床心理士のSさんはとても親切で、主人の状況を話すと「それは奥様も大変ですね」と労いの言葉をかけてくれた。
その当時の私は主人の身勝手な行動、不可解な言動に悩まされ、危ないことをやめてもらうことややるべきことをやってもらうために、毎日毎日同じ注意を繰り返し言うのに疲れ果てていたのだ。
「なんで何度言っても分からないのだろう」という思いで頭がいっぱい、「目が離せない」という思いが芽生えてきており、趣味で15年以上続けているバレーボールの練習も休む日が増え、とうとう試合も欠場した。
生活サイクルが狂っている主人のせいで夜も眠れなくなり、日中の仕事中の時間も奪われることへの怒りがかなり強くなってきていた。
「その状態ではご主人より奥様の方がまいってしまいます。受診して病名が分かれば対策も立てられますので」というSさんの言葉で受診を決意した。