2020年の8月、静岡の父が老人ホームへ入るのを期にてっちゃんはやってきました。
てっちゃんとお父さんは、いつも散歩をしていたので町内でけっこう有名でした。
引っ越しの手伝いをした時も、同じアパートの住人の方に、「どちらへ行ってしまうの?お父さんとあの子は一緒じゃなきゃダメよ!絶対、離ればなれはダメ」と念を押されるくらいでした。
てっちゃんは、ドライブも好きなので、なんの疑いもなく高速道路の景色を楽しみながら横浜までついてきました。
到着してから、まんまと連れてこられたことに気づいて、夫に対してしばらく心を閉ざしていましたが、次第に生涯出会った中で一番優しい大好きな人になりました。
残念なことに小さい頃のトラウマか、てっちゃんは猫が大嫌い。他の猫が住んでいる3階、4階の住居に住むことを拒み、2階の踊り場で一人暮らすことを希望しました。
夫は一人暮らしのてっちゃんが、なるべく寂しくないよう、夜中にお腹が空いてしまわないよう、なるべく遅い時間まで店で一緒に過ごし、その後、4階のミミちゃんと遊んでから就寝という生活。
本当に大変なルーティンですが、喜んでお世話をしていました。
2階の踊り場の住人になったてっちゃんは、お客様にも大人気で多くの人たちに抱っこをしてもらいました。てっちゃんもそれが自分の宿命であるかのように抱っこさせてくれました。
いつもキジトラ系の女子しか飼ったことのない私達にとって、茶トラの男子は初めての経験。甘えん坊でライトブラウンの毛並みに癒やされました。
ゴロゴロの喉の鳴らし方が独特で、人間が温泉に浸かった時に出すような、本当に気持ちよさそうな「ぷは〜っ」という感じで、抱っこしているとこちらまで温泉に浸かったような気分になりました。
痩せの大食い。すぐに食べ飽きるので、獣医さんには、「こういう好き嫌いの多い食べ飽きる子は、とにかく食べたいものを食べさせてあげてください」もう、17歳だし、敬老の意を込めて食べたいものを食べさせてあげました。
ちょっと成人病が心配でしたが、血液検査の数値も不思議なくらい良好でした。
最近では、この辺を散歩するようになって、近所の方にもカリカリをプレゼントしていただいたりしていました。
6月末、梅雨のジメジメした頃から、あれを食べてもこれを食べても、美味しいものになかなか行き当たらなくなってしまい痩せてしまったので病院へ行きました。血液検査は問題なし。きっと夏バテだろうと楽観していたのですが、一向に食欲が戻って来ず痩せる一方。
せめて栄養剤を打っていただこうと再度、病院へ。すると腸の辺に影があるとのことで組織を取って調べていただくと悪性リンパ腫の疑い。治療方針を迫られましたが、当のてっちゃんはすっかり痩せてしまい枯れ始めていました。
病院へ行った日の夜中から、昏睡状態になり翌朝7月20日午前11時30分永眠しました。今年は昨年亡くなった父の初盆。てっちゃんはすっかり横浜でブーシェルの看板猫になっていましたが、こうなってみるとお父さんから預かっていただけだったのかな。あんなに元気だったのに、たったの1ヶ月で急激に枯れてしまいました。お盆に合わせるかのように。
「世話になったね。飼い主に似てわがままで大変だっただろ。テツ、じいじと行くよ」笑いながらお父さんが連れていきました。悲しい話ですが、本来あるべき名コンビの復活です。あちらに行って、またおじいさんとお散歩猫で人気者になってね。

この2年間、てっちゃんと仲良くしてくださり本当にありがとうございました!