早いもので2017年最初の1ヵ月が終わろうとしています。
 
1月最後のエントリは、2016年の積み残し、1年で読んだ本の振り返りです。
 
一昨年(2015年版)はこちら↓

MIBは『しんがり 山一證券最後の12人』――読書を通じて「日本」について俯瞰した2015年
http://ameblo.jp/tomihisa18/entry-12122456546.html

■全部で24冊の本を読みました
まずは初見の本一覧(上から直近)。

外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』K
蒲田の逆襲』紙
殲滅地帯 新・傭兵代理店』紙
スリーパー』K
<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則』紙
欺瞞のテロル 新・傭兵代理店』K
下り坂をそろそろと下る』K
里山産業論 「食の戦略」が六次産業を超える』K
只見線 敷設の歴史』紙
進・電気じかけの予言者たち<電気じかけの予言者たち>』K
人口減が日本を強くする』K
江戸の食卓 美味しすぎる雑学知識』K
冷たい狂犬』K
世界が感謝!「日本のもの」』K
増補・改訂版 青森の逆襲』紙
人工知能は私たちを滅ぼすのか』K
日本は外国人にどう見られていたか』K
都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画』紙
山をたのしむ』K
1989年のテレビっ子』紙
変わる盛り場』紙
非言語コミュニケーション』紙
日本の歴史をよみなおす(全)』h
イングレス ザ・ナイアンティック・プロジェクト』h

紙…紙の書籍
K …Kindle(電子)
h …honto (電子)

全部で24冊。2014年25冊、2015年33冊とペースが上がってきたところで、また下がってしまいました。それはもうポケモンGOのせいですw

■MIB&マイベストはケヴィン・ケリー著『<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則』
2016年、MIB(Most Impressive Book)&マイベストブックとなったのはケヴィン・ケリー著、『<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則』です。
 
 
この本の出会いは本当に偶然でした。たまたま嫁が見かけたイベントを、一緒に参加することになり(イベント自体は自分のアンテナには当初引っかかってませんでした)。
 
ケヴィン・ケリーが教えてくれる「本質的に”不可避”な未来」(2016年7月23日開催)
 
最初はあまり聞き入っていなかったのですが(苦笑)、すぐに引き込まれていろいろとメモを取りました。それらをさらにまとめたのがこれ。

- 経験のインターネット
- 経験が通貨になる
- 経験をダウンロードできる
- VRはソーシャルネットの中において最も社会的になる
- 経験は視覚だけではなく、触覚、知覚もある
- 透明性に関する選択肢
- AIは解答することに秀でている。つまり人間に求められるのは質問力
- テクノロジーを旅する
- 未来を信じる

かなりざっくりしていますが、そのとき自分が響いたものを自分なりにまとめたものです。でもって、それをFacebookに投稿したところ、WebSigモデレーター陣が勢い良くw興味を持ってくれて。
 
そのまま流れで耳折会(書籍の気になるページを耳折れ(上端を折る)して,みんなで共有・議論する会)の開催となりました。
(全部で2回、さらに今年に入って元AWSの小島さんをゲストにお迎えしてのエクストラ編も)
 


さらにさらに、WebSig24/7ではこの本を題材にして、2年9ヵ月ぶりとなるWebSig会議 Vol.35「インターネットの次に来る「不可避」な12のキーワードを読み解く」を開催し、さらに、もう1つ自分が関わっているコミュニティTechLIONでも、本からインスパイアしたTechLION Vol.28「IT/ネットの次に来るもの ~テクノロジー・コミュニティ・ビジネスの視点から」を開催しました。
 
ちなみにWebSig会議では、日本版書籍の翻訳者でもある服部桂さんをメインゲストにお迎えしての開催となる、豪華版のイベントでもありました。

過去を知り、未来を展望する~WebSig会議 Vol.35「インターネットの次に来る「不可避」な12のキーワードを読み解く」終了報告(2016年12月3日開催)
http://websig247.jp/meeting/35/000928.html

もっと浮かれてみよう!IT/ネットの未来をすばらしいものにするために~TechLION vol.28報告(2016年12月7日開催)
http://techlion.jp/archives/10918

1つの本がきっかけで、こんなにリアルイベントの開催に至ったのは自分の人生史上初めて(そもそもこの本を読むきっかけとなったのもリアルイベントでしたし)。さらにふだんから仲の良い友人たちと同じ本をテーマに話し合える、共有できるというのは貴重かつありがたい体験でした。
 
この流れで行くとリアルと書籍みたいなテーマになりそうなので、それはまた別のエントリで書こうと思っていますが、いずれにしても自分の生活に影響を与える本と出会えたのが、昨年の貴重な体験の1つでもあり、ダントツでこの本をMIB&マイベスト2016に選びました。
 
せっかくなので、耳折会で自分が気になった部分についても公開しておきます。
■7:FILTERING
p.251~
際限ないモノの低廉化
本当に価値があるのは何か?
唯一コストが増加しているのは人間の経験だ
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※コストが増加しているのは人間の経験に対する他の方の意見を聞きたいです
いわゆるコモディティ化ということかと思うのですが、今、まさにこれを体現するのがIT系ビジネスであり、電子出版ビジネスもその1つ。モノの低廉化が進むことは、消費を促進する一方で、経済の概念を破壊するとも取れます。
本当に価値があるのは何か?という文面には、そもそも価値という概念が持っている人の疑問であって、仮にモノがすべてただになったとき、価値はなくなるのかどうか。
あと、人間の経験コストが高まることと経験に対する価値のバランスについても気になるところ。よく音楽に関しては、楽曲よりライブに価値があると言われているが、経験をコストと考えたとき、その価値がなくなる危険性もあるのでは?

■8:REMIXING
p.262
マッシュアップの手法な実際のところ、文章のリテラシーから来ている。

文章のリテラシーとはつまり文章を構文解析して操作するものだとすると、新しいメディアのリテラシーとは、動画を同じようにかんたんに構文解析して操作できることを意味する。
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このあたりはまさにAIの世界でどう変わっていくか。順調に進化しているように見えて、それを扱う・それに触れる人間が変わらないような気もしていてもやもやするところも若干あります。

■10:TRACKING
p.321
N=1実験の問題点(と、その後のライフログの対比)
(あとはそれがあたりまえになったときの世界がどうなるかの想像も)
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科学以前ではあたりまえだったこの考え方が、科学後(テクノロジー進化後?)では通用しないという前提だとは思うのですが、とはいえ人間の考え方がそうそう変わらない、また、変わるときはN=1という概念自体がなくなるような気がしていて、そうなったときの人と人、人と情報の対峙についてどのようになっていくのか。トラッキングはそれを実現するための必要条件ではあるが、十分条件ではない気がします。

■全体を通して
「不可避」という考え方
 
この本については、今自分が関わっている業務にもいろいろと影響があると感じているので、また定期的に読みたいと思います。
 
■これからの日本に関する本も……
1冊の本についてかなり長々と書いてしまいましたが、他には「これからの日本」という自分の中にある大きな興味にまつわる本、『都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画』『下り坂をそろそろと下る』『日本は外国人にどう見られていたか』などもかなり印象に残りました。
 
とくにこれからますます人が減っていく日本において、人口減少を過剰に取り上げず、ポジティブに受け入れるという観点で取り上げられている前者2冊は非常に参考になりました。この本でも耳折会を開催したいぐらい。
 
それともう1冊。『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』は、生物に興味がある自分として、単に外来種という存在ではなく、社会における外来種という観点で深掘りしてみて、いろいろなるほどなーと思うことが多かったです。
 
新しいもの、外部の力、それに対する経験や歴史との対比などなど。これって、まさに技術と社会にも言えることだと思っています。
 
ということで2016年は読んだ本は少なかったですが、その分、自分にとって印象に残る本、影響を与えてくれた本が多かったです。
 
とは言え、今年はもっと読むぞー!!!
 
(参考)
最後に参考値を。2016年は思ったほど紙の本が減らなかったですが、1つの要因は紙の本が先に出ていたから。今は電子化されているものもあるから、ぜひとも出版社の皆さんにはサイマルで出してほしいです。
 
ただ、2016年のマイベストに選んだ『<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則』のように、紙/電子の選択肢があるにも関わらず、紙を選んだ自分がいるので、これは読者目線ではなく、出版社側の目線でも考えてみたいところ。
 
2013年以降の、紙・電子書籍の割合。

2016年
9:紙
13:電子(Kindle)
2:電子(honto)

2015年
8:紙
23:電子(Kindle)
2:電子(honto)

2014年:
6:紙(分冊を入れると7)
18:電子(Kindleのみ)

2013年:
15:紙
12:電子(BookLive!)
1:電子(Kindle)