1月28日に、約2年半ぶりに観てきました。
Blue Man Group、東京公演。

馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-ブルーマンシアター
Blue Man Group
http://www.blueman.com/


■Blue Man Groupとオフ・ブロードウェイ
Blue Man Groupとは、もともとNYの路上パフォーマンスとして始まったもので、1991年、オフ・ブロードウェイにあるAstor Place Theaterで初公演が行われています。
オフ・ブロードウェイとは「マンハッタンにある比較的小さい劇場で上演される演劇」の総称(Wikipediaより)で、ブロードウェイに比べてミュージカル以外のパフォーマンスなどが多く、今回紹介するブルーマン以外にもSTOMPなど、日本で有名なパフォーマンスが多々あります。

で、Blue Man Groupを観るのは今回で5回目(NYC×2回、東京×3回)なんですが、毎度毎度面白く、今回も思いっきり楽しめました。この面白い感覚、これまでにも体感できていたんですが、観終わった後に、最近このブログでも取り上げている「ノンバーバル」的な要素が関係しているのかな、と思い、今回のエントリを書くことにしました。

ちなみにこの写真は2001年1月に初めてBlue Man Groupを観たときのもの。まだフィルムカメラの時代で紙焼きの写真しか残っていないので,写真の写真を掲載(笑)
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-2001年1月のBlue Man Group

こちらは2006年9月に撮ったもの。こっちはデジカメです(笑)
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-2006年9月の2ショット

■ドリフ的なシンプルさとロックンロールのかっこ良さ
Blue Man Groupを観たことがある人ならわかるかと思うのですが、その面白さは、直感的、シンプルな笑い。これは僕が初めて観たときにも感じたことなのですが、言葉がわからなくても、おもいっきり笑えるパフォーマンスだということ。当時(今も)英語がわからない僕でも1つ1つの演出、パフォーマンスに心から笑えました。それは、動きとしての要素もあれば、タイミングという要素もあったり。そこに、Drumboneを始めとしたロックンロール的な音楽のかっこ良さが相まって、初回に観た印象は「ドリフのように子どもでもわかる笑いとロックのかっこ良さを合わせた、すごいパフォーマンスだな」と。
さらに、直感的、いわゆるノンバーバルさをより強く感じさせるのが、主人公であるBlue Manの立ち振る舞い。とくに、あの無表情さ、ポーカーフェイスは、直感的な演出をさらに強調しているように伝わってきました。

■場の空気、参加することの楽しさ
もう1つ、Blue Man Groupの面白さは、Blue Manたちのパフォーマンスから生み出される場の空気、さらに観ている側も参加できる仕組みが用意されていること。
ちょっとネタバレになりますが、たとえば、オープニングパフォーマンス直後、たいてい遅刻する観客がいて、そのうちの1組にフォーカスを当て「遅刻」ということを、舞台演出の1つに組み込んでしまったり、また、ロックコンサートを体感するということを参加者にもある種強要し、最後はオチを付ける構成が組まれています。

こうした、音楽ライブとはまた違う、Blue Man Groupと舞台、会場、参加者を1つにつなげる一体感は、まるで今のソーシャルネットが持っているような、参加型ならではのおもしろさと、著名人と交流できる可能性から生まれる雰囲気を醸成できるプラットフォームにも共通している気がしていて、それを今から20年以上も前からリアルで実現しているのが本当にスゴイと思いました。
(というか、本当はこういう感覚の積み重ねがあって、インターネット技術の進化とともにソーシャルネットが生まれたのかな、とも思いますが)

■アドリブ感と作り込み感
今の一体感や参加型に加えて、さらにさらにもう1つ、Blue Man Groupが楽しいのは、適度なアドリブ感と計算された作り込み感がうまく混ざっているところ。これもネタバレになりますが、この舞台ではところどころで参加者が強制的に参加させられます。おそらく、参加する人はその日、その時に選ばれているので、人によっては派手に対応することもあれば、緊張してうまく対応できないこともあるわけで。
ちなみに今回観た時の最初の観客ゲストの方はかなり緊張していた模様で、そのあたりの感じがまたパフォーマンスにアクセントを加えていたりもしました。

一方で、作り込みもしっかりできていて、たとえばカメラを使って口の中を撮影するシーンやBlue Manたちがタクシーに乗って移動するシーンなんかはあらかじめ撮り置きしているわけなんですが、それを自然なつながりで、そこに参加者を参加させるというアクションを混ぜることで1つ1つ観客を惹き込む構成になっていることに驚きです。そして、すべてに共通しているのが、パッと見、直感的にわかること。

■直感的、でも実はロジカルでもあり体温のある演出
と、ここまで、Blue Man Groupの醍醐味について、直感的、ノンバーバルなパフォーマンス+参加型だという部分を強調して書いてきたわけですが、実はそれだけではなく。
まずこれを読んでください。

ちょっとしたプレゼントは、見知らぬ人との距離を縮めるのに役立ちます。そのお近づきのしるしが、あなたの“人となり”を伝えてくれることもあります。手作りなら、その効果は倍増します。しかし、“物”だけでは十分ではありません。より真剣に相手の文化とその価値観を学ぶ姿勢を示すことが必要なのです。そして、本当の人間同士のつながりを構築したければ、何かを一緒にするのが一番。一緒にゴハン、一緒にシゴト、または一緒に“アートごっこ”なんてどうでしょう。さらには日常を忘れるほどの大音量でのダンスパーティもよいかもしれません。こうして生まれた絆はきっと、永遠のものです。
「これであなたも外交官」より

これは、東京公演の開演前にスクリーンに映し出されている文章です。元の引用先を見つけ出すことはできなかったのですが、書いてある内容について、ふむふむと納得させられるとともに、自分自身、この感覚は大切にしたいな、と思わせる内容でした。

で、今回観終わった後、この文章と併せて振り返ることで、Blue Man Groupというのは、ノンバーバルなパフォーマンスであると同時にロジカルなパフォーマンスでもあるな、と思って。つまり、ここに書いてあるように「一緒に何かをする」ことで生まれる絆、それが永遠っていうのは真理を付いていて、それを、開演前に観客に無意識のうちに読ませるという、実はロジカルな考えに基づいた構成があったんじゃないかと。

そう思って、舞台演出とパフォーマンスを振り返ってみると、その他にも、ところどころに出てくる文面、説明文、あるいは場内放送など、言語的な入力(インプット)が自分の中に響いてきて、おそらく観客の誰にも、多かれ少なかれ響くポイントがあり、そのポイントがフックとなって面白さを倍増させているんじゃないかと思いました。
つまり、単に直感的、ノンバーバルな体験を提供しているだけではなく、全体の流れが意図的にロジカルに作り込まれて、それが体験とともに情報として伝達され、「面白さ」「楽しさ」として共有できるように感じるんじゃないかと、今回観終わってから思ったわけです。

そして、その「ノンバーバルとロジカルの混在」、それこそが、Blue Man Groupの醍醐味なんじゃないかと。

■ブレない世界観と言葉を理解することの大切さ
さて、Blue Man Groupは、初舞台からすでに20年以上経ち、また、当初のNYC以外にも、Las Vegas、ここ東京などさまざまな国、地域に広げていくことで、内容が多様化しています。たとえば、東京公演にあったネットカフェのくだりのところは、2001年に観たときにはなかったものですし、時代の移り変わりに合わせて内容を変化させているのだと思います。
それでも、「Blue Man Groupが何たるか」ということについて軸がぶれていない、だからこそ毎回行くたびに新鮮な体験と併せて面白さを感じられるわけですし、それに、いろいろな地域にも広がっていくんじゃないかと。このパフォーマンスとして持っている世界観っていうのは、今後、自分が生きていく中で、仕事でもプライベートでも参考にしつつ、アウトプットとして何かにつなげていけたらいいなと思っています。

それから、自分自身に限って言えば、おそらく前回2009年8月に観終わったときはここまで考えたり、それこそブログを書こうとは思わなかったんですが、この2年半の間の自分の体験、経験があって、新しい感覚と併せて観直して楽しめているんじゃないかとも。とくに,ノンバーバルについてこれだけ意識するようになったのは,ここ最近,とくにソーシャルネットを使い,触れる機会が増えたからこそだと思います。やっぱり、こういうリアルなパフォーマンスを観て聴いて体感することは、自分にとってすごくすごく大切だというのも再確認できました:-) もちろん、上述の引用文にもあるように、一緒に体感できる相手の存在、絆ということの大切さも。

一方で、これまでNYCで観た2回は、ここまで自分で意識して観ていなく、また英語がわからない状態で楽しんでいたので、近いうちにまたNYCに行って、少しでも言葉を理解して、NYC公演でしか体感できないロジカルな部分を意識しながら、そこにノンバーバルな感覚を持ち合わせて、あのAstor Place Theaterでの公演を体感できたらいいなと思っています:-)

■おまけ:Blue ManはiPhoneのかなりの使い手
そうそう、今回のBlue Manで一番驚いたのは、Blue ManのiPhone操作。

馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-2012年1月の2ショット

ものすごく手馴れていて、この2ショット写真を撮ってもらうとき、僕のiPhoneをサッと取り上げすぐに自分撮りモードに切り替えてパッと撮ってくれたんです。その間約10秒。この辺にもBlue Manの成長(?)が垣間見えて面白かったです。

Audio/Blue Man Group