●Amazon Kindle Singles
先週,Amazonが「Kindle Singles」の展開を開始しました.

Kindle Singles
http://www.amazon.com/kindlesingles

これは,1冊5ドル以下の短編電子書籍の販売ストア展開で,

- 小説
- エッセイ
- レポート
- 自伝

など約20~90ページのボリュームのコンテンツを,$0.99~$4.99から販売するというものです.米国でのKindleの展開は本当に勢いがありますね.

●日本でのKindle/Kindle Storeの状況は?
さてさて.

Amazon.comから,ちらほら情報は入ってくるものの,基本的には米国内や北米向けの展開がほとんどで,2011年1月31日現在,日本に向けた最新のアップデートと言われるのは,第3世代のKindleの発売(2010年8月)です.

Kindle 3のレビュー(海外版)


Kindle 3のレビュー(日本版)


残念ながら,現時点では,Kindle 3の購入はできるものの,Kindle上から日本のコンテンツを購入することはできません.それでも,すでにKindle for iPhone/iPadやKindle for Androidがリリースされており,昨年末2010年12月には「Kindle for Web」の発表がされるなど,ユーザ側の環境は着々と整備されてきています.
※ちなみにKindle 3の購入には,Amazon.co.jp(アマゾン)ではなく,本家Amazon.comのアカウントが必要です.

$馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-KindleforWeb
Kindle for Web
http://www.amazon.com/kindlefortheweb

●実際に日本でKindle Storeがオープンしたとして
こういう状況の中,年明けぐらいから,漠然と,そろそろ日本でのAmazon Kindleの展開についてまとめていかなければなーと思っていたので,ちょうどこの「Kindle Singles」のニュースをきっかけに,今,僕の頭の中にあるものを書き留めてみました.
なお,2011年1月31日時点で公式な情報は出ていませんが,今後,いつの日か(いつだ?w),おそらく日本でのKindle Storeの展開があるんじゃないかと予想したうえでの内容ですのであしからず.

・いくつかの課題
まず,展開するにあたってはコンテンツの魅力を向上させる,という大前提に加えて,以下のような課題があります.

- コンテンツ数の確保(制作面)
- 紙の書籍との併売
- 他の形式(オーディオなど)での展開
- アマゾンと出版社の契約条件
- 出版社と著作権者(著者)との契約条件

どれも,Amazon(Kindle)に限った話じゃなくて,日本の出版社が電子出版に足を踏み入れるときに直面する課題です.

そのなかでも,販売面に関しては,紙の書籍や雑誌に適用されていた「再販売価格維持」が,電子コンテンツには適用されないという点を踏まえた戦略が求められます.
この再販売価格維持というのは一言で言えば,値段はどこで買っても同じというもの.

今,日本の書籍や雑誌は「再販売価格維持」によって,定価を固定した流通が行われていますが,電子コンテンツにはそれが当てはまりません.たとえば,Amazonで買う場合と,他のネットショップで買う場合で値段が変わったり,同じAmazonで買うにしても,今日買う場合と1ヵ月後に買う場合で値段が変わる可能性があるのです.つまり,今後出版社が,ビジネスとして,電子コンテンツの販売に取り組むには,出版社という立場でどうすれば利益を最大化できるのか,その仕組みをゼロから作り上げなければいけないわけです.僕も日々模索中です:-)

あと,対Amazonっていう観点で見た場合の課題は,やはりAmazon.co.jpとどうやって上手く連動して,コンテンツを販売/提供していくかが重要ですね.これは,単なるWebプロモーションといった話ではなくて,それこそリアルとWebの連動,コンテンツ自体での紙と電子の差別化など,いろいろできそうな気がしています.

一方,読者視点から見た場合,

- Kindle端末(専用端末/アプリなど)の普及
- コンテンツの拡大
- 手軽な販路

というのが整備されれば,みんなKindleを使って読書してくれるように思っています.
ただ,上記3つに関しては,いずれもどうなるかまったく読めず.とくにKindle端末の普及と,販路というところを満たすには,どこかキャリアと協力するといったことが重要なポイントになりそうです.

・Kindleのある風景
課題はこのぐらいにしておいて.

じゃ,実際にKindleの展開が始まったとしたらどうなるのか,と.

もともとケータイ電話など,日本人は通勤や通学,待ち合わせなど,隙間の時間に自分の空間を作るのが好きな国民性があると思っています.さらに,マンガのはやり以外にも,新聞や小説など,情報を目にするということに,無意識のうちに積極的な人種でもあるんじゃないかと.
なので,Kindle(あるいは他のデバイス)での読書っていうのは,自然に受け入れられると思います.
さらに,Kindleには,ハイライトやノートといった機能が用意されており,これらをソーシャルに繋げることによって,今までにはなかった新しい読書体験が生まれるはずです.この辺は改めて日記に書きたいと思います.

●おまけ:料率70%
あと,Kindleの話題でいつも取り上げられるのが,最大印税70%の話.現状,アメリカとユーロ圏,先日のカナダといった地域のみ限定ですが,Kindle Storeのコンテンツに対し,Amazonが料率(取り分)として70%還元する制度を用意しています.日本の出版業界の慣習では,現状,数%~10%の印税なので,それと比較しても,大変魅力的な数字ですよね.おそらく,この制度を利用して,電子コンテンツを配信していく著作権者は増えていくと思います.

ただ,これに関しては以下の内容が付帯条件となります.

- 70%の対象となるのは希望小売価格から配信費用(US$0.15/1Mバイト)を引いたもの
- 価格設定は$2.99~9.99

ようは単価の安い,かつ,サイズが小さいコンテンツを多く配信する場合に向いている仕組みです.
それ以外の,たとえばフルカラーの雑誌とか写真集,あとは弊社のようなコンテンツだと,実はあまり適さないんじゃないかと.
このあたりの情報ってあまり目にしないので,ちょっとだけ補足させていただきました.

以上,かなり散漫でしたが,Amazonの今についてまとめてみました.今後もAmazonの状況,弊社および日本の出版社の展開などはウォッチしながら情報をお伝えしていきます.

※その前にGoogle eBooksの話題も近々ご紹介します.

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