初めて「CURE」を観た時は衝撃的で、この作品をきっかけに一時期、黒沢作品にはまった。



「ニンゲン合格」、「大いなる幻影」、「カリスマ」、「回路」、「アカルイミライ」、「ドッペルゲンガー」、「LOFT ロフト」、「叫」、「トウキョウソナタ」と、監督作品はだいたい鑑賞したが、娘が産まれてからは観る暇がなくて遠ざかる。


それでも、(カンヌで監督賞を獲った「岸辺の旅」もヴェネツィアで銀獅子賞を獲った「スパイの妻」もまだ観てないが)やはり黒沢作品の中では「CURE」が最高傑作ではないかと思う。


「CURE」は劇場含め5、6回は観ただろうか。初めて観た時はよくわからなかったが、再見するたびに何かしら発見があって、しばらくするとまた観たくなるのだ。


新文芸座で行われた監督のトークショーによると、この作品は「羊たちの沈黙」と「セブン」の影響を受けているそうで、「セブン」も私のお気に入りだから、どうりで「CURE」も気に入るわけだと膝を打ったものだ。


最近ふとまた観たくなり、いっそのことDVDを買ってしまおうかとAmazonで検索すると、ちょうどBlu-rayが発売されたばかりではないか!


少し高いが購入し、妻子が出かけたのを見計らって再見したところ、またしても発見があった。



高部(役所広司)が間宮(萩原聖人)の自宅を調べるシーンがあるのだが、


間宮の書棚の中に、なんと「チックの心理療法(森谷 寛之)」という本が並んでいるのだ。


この本はうちにもないから少し気になり、図書館に予約入れてみた。


いったい間宮は何が知りたくてこんな本まで読んでいたのだろうか・・・!って深読みしたくもなるが、

まあ、普通に考えたら監督かスタッフが心理学関連の本をお茶の水あたりで片っ端から買ってきて並べただけなんだろうという気もする。

どの本も背表紙がピカピカな新品同様で少し嘘くさいのが残念で、(間宮は新品の本で買えるほどの金持ちとも考えられるが)、俺なら神保町まで足を伸ばして集めるね。


あと、あの猿とか鶏とか、間宮の留守中、誰がエサあげてたん?とか気になった。


というわけで、画像を手がかりに以前まとめた間宮の蔵書をリストアップしてみる。(昔の俺ヒマだったんだなあ)









『転移と逆転移(マリオ・ヤコービ)

『ビオン入門 (L.グリンベルグ)

『アーブラハム論文集―抑うつ・強迫・去勢の精神分析(K.アーブラハム)

『コフート入門―自己の探究(P.H.オーンスタイン)

『覚醒剤中毒(山下格)

『集団精神療法の理論―集団力学と精神分析学の統合(モートン キッセン)

『自殺の危険―臨床的評価と危機介入(高橋 祥友)

『クラインとビオンの臨床講義(R. アンダーソン)

『重症パーソナリティ障害―精神療法的方略(O.F. カーンバーグ)

『対象関係論とその臨床(O.カーンバーグ)

『チックの心理療法(森谷 寛之)

『今日の精神分析(西園昌久編福岡精神分析研究会)

『うつ病の行動学―学習性絶望感とは何か(セリグマン)

『自己と他者(R.D.レイン)

『精神医学研究1(神谷美恵子)

『精神医学研究2(神谷美恵子)

『図説 臨床精神分析学(前田 重治)』

『境界例の力動的精神療法(カーンバーグ)

『心の葛藤(カレン・ホーナイ)

『箱箱療法の展開(岡田康伸)

『心理臨床家の手引( 幹八郎)

『実践的認知療法 事例定式化アプローチ (J・B・パーソンズ)

『精神医学は対人関係論である(H.S.サリヴァン)

『精神療法面接のコツ(神田橋条治)

『精神医学論集(E.クレッチマー)

『ユング 分析心理学(カール・ユング)

『精神疾患と心理学(ミッシェル・フーコー)

『夢分析による心理療法ーユング心理学の臨床(渡辺雄三)

『人格と心理療法-学習・思考・文化の視点(J.ダラード/N.E.ミラー)

『心理療法の鍵概念(一丸藤太郎)

『老人の臨床心理学(M.ストランド)

『葛藤―心理学・生物学・精神医学(中尾 弘之)

『人格障害(福島章)

『青年の心理と精神医学』

『精神病治療薬の原点(慶応義塾大学医学部精神神経科・精神薬理研究班)

『認知の発達心理学(古浦一郎)

『人間性の最高価値(A.H.マスロー)

『精神神経疾患の臨床生化学 : 脳脊髄液研究の現況と展開(小林清史)

『分裂病者の情報処理過程(内海健、他)

『現代心理学の展開 1 特殊環境における行動と知覚(ヘレンE.ロス、大久保幸郎)

『分裂病者の行動特性(昼田源四郎)

『幻覚の臨床(ガージ・アサード)


以上が間宮の書棚に並んでいた本で、



『パリのメスマー(ロバート・ダーントン)

『眠りの魔術師 メスマー(ジャン チュイリエ)』


2冊だけは意味ありげに机の上に置かれており、この映画の謎を解く鍵でもある。





また、間宮が執筆中と思われる論文の横には


『治療構造論(岩崎徹也)』

『意味と記号の世界―人間理解をめざす心理学(石原 岩太郎)』


が置かれていた。




これらの膨大な書物を読めば、あなたも間宮邦彦のような能力を身につけられるであろうか!?なんてね。



ちなみに、今日、本屋で立ち読みした「黒沢清   ー映画のアレゴリー」によると、フリッツ・ラングの「ドクトル・マブゼ」や、リチャード・フライシャーの「絞殺魔」からの影響もあるとのこと。(まあ、この先、見る機会はないかな)