ご注文の品は、お揃いでしょうか?
同時に頼んだものは、
だいたい同じタイミングで出てきてほしい
特に団体であるならば、注文漏れとかあってほしくないわけで…
「ぼーくーのぉーが、まーだーこないぃーーーーーー。うわぁぁぁん」
ランチの時間に、ファミレスに入ると
泣きながら抗議する四歳くらいの男の子がいた
団体客のようで、二つのテーブルに分かれて
お母さんと子供たちと
総勢で10人くらいになるだろうか?
そんな中、全員の注文したものが揃っているにもかかわらず
自分の目の前にだけ料理がない
「すぐ! すぐにお持ちしますね」
頭を下げて奥に引っ込んでいく店員
さあ、男の子の試練はここから始まる
「お待たせいたしましたー」
ふてくされている男の子の目の前に、ご注文の品が揃いましたのは
それから10分後のこと
「わー、良かったね。タカシ(仮名)、美味しそうだよー」
泣いてソファーにうずくまっている我が子を宥めすかして
なんとか食事にありつかせようとする母親だが
泣きながらご飯食べると美味しくないもので
メニューを見ながら楽しそうに注文していた彼の胃袋は
もはや食に対する欲を失っていた
料理が来てからもしばらくごねる
「いいから、早く食べなさい」
親が本気で怒る前に食べ始めないとめんどくさいことになるぞー
黒い人は隣りの隣りのテーブルに座り
※↑距離的に無害
コーヒーをすすりながら、事の成り行きを見ていた
そこへ、注文をとり忘れた元凶である店員がやってきて再度謝罪する
「本当に申し訳ございませんでした」
頭を下げる
「これ、ランチプレートに付けてるおもちゃなんですが、よかったら…」
いやいやいや
それはダメだろう
だって、周りにもお子様たちいっぱいいるわけで
そんなことしたら、彼だけ特別扱いになってしまうよ
「あー、いいなー。ずるぃーーー」
案の定だよ!
周りにいた子供たち全員が男の子をうらやましがる
ということで、不公平になるから親は断る
「いいです、そういうの。大丈夫なんで! ほら、いいから早く食べなさい!」
注文がこない→泣く
ごねてたらおもちゃがくる→喜ぶ
周りの子達がうらやましがる→優越感にひたる
親が受取りを拒否する→落胆
早く食べろと怒られる→とんだとばっちり
彼はまったく悪くないのだが、
めまぐるしく感情をかき乱される
食事どころじゃないよ、こんちくしょー
怒られながら、しぶしぶ食べ始まる彼
その頃にはもちろん、
他の子達も親達も食事を終えているわけで…
ここで付け加えておきたいのが、この集団の食事後のスケジュールだ
どうやら全員で近くのお家にお邪魔して、
ママはママお茶会を
そして子供達はガリガリくんを食べながら、
wiiで遊ぶ計画らしかった
リッツパーティーならぬ、ガリガリパーティー
「ねー、早く行こうよー」
食べ終わり、退屈し始めた子供が一人
連鎖的にみんなが遊び始める
店内を走り回ったら、黒い人が黙ってはいないよ?
なんて思っていたのだが、一番問題なのは
遊びに伺うお宅が、事の発端の彼の家だったこと
そして彼の残念は果てしなく続く
彼は家でもよくママに注意されるほどに
食事が遅い子だったのだ!
一番遅く料理が届けられた上に、
泣きながらぐずっていたのでしばらく食べなかった上に、
しぶしぶ食べているから美味しくない上に、
普段でも食べるのが遅い
そしてここから、彼の最悪のときがやってくる
メインに残しておいたコロッケ
好きなものは最後に食べる派!
の彼が、それにかぶりつく…
パクッ!!
…
出す!!
どうした、少年! 切ない顔してさー?
メインのコロッケはカレーコロッケでも普通のコロッケでもなく
かぼちゃコロッケだった
そんなことでは、
『食わず嫌い王選手権』に出たら一発目の筆入れで当てられてしまうよ!
ってくらい分かりやすく、彼はかぼちゃが苦手だった
試練である
ママ、僕、これ苦手…
言葉には出さないが、涙目で母親に懇願する彼
「早く食べちゃいなさい!」
お残しは許しまへんでーという意味合いを含め、母親は言う
「早く行こうよ。遊ぶ時間少なくなっちゃうじゃん」
空気など関係ない他の子供達はソファーの上を飛び跳ねながら、
親達が席を立つのを待っている
走り回ったら怒られるのが分かっていての行為
なかなかやるな!
「騒がない! タカシくんのだけ遅く来たんだから、かわいそうでしょ! ねー、ゆっくりでいいからねー」
優しい言葉が、よけい少年の涙を誘うよ
今はそれどころか、かぼちゃという敵と戦うことが大変なんだが
「早くたべろよー。飲み込んじゃえばいいじゃん!」
「えー、かぼちゃ嫌いなの? なんでー? わたし好きだよー」
心無い仲間たちの壮絶なるプレッシャー
彼の隣りの隣りの黒い人は面白くてたまらない
笑いをこらえるのに、必死だ
もうこんな自然派上質コント、見たことない
ついには堪えきれなくなった周りの子達が、
彼の食を手伝う
「がんばれー、がんばれー」
自分のフォークに彼のウインナーを突き刺して、差し出して、
口元にまで持っていってあげて応援する
大迷惑だ
少年はかぼちゃが飲み込めない!
「ほら、ジュース飲んでいいから」
液体で流し込むという荒業を提案するママさん
母親、今日くらい許してあげたらどうだよ
カボチャ免除だよ
同情の余地、あると思うよ
「う、う、う、…うわぁーーーーん」
結果、3分の1くらいのかぼちゃコロッケを口に詰め込んだところで
彼の臨界点は突破した
「泣かないの!」
激しく泣き出す少年
間違いなく、彼のかぼちゃコロッケは苦くてしょっぱかっただろう
その後、泣きやまないタカシ君とその一団は嵐のように去っていったが
彼の家へ帰ってからの少年は、
楽しい一時を過ごすことができたのだろうか?
とりあえず、かぼちゃ嫌いだけでも治るように祈っているよ
黒い人は上質なお笑いをくれた名も知らない彼(実は知ってる)に
短冊の願い事を一個あげることにした
がんばれ、少年
なんでもギリギリだ♪
明日は七夕です