福島汚染水対策 見通しの甘さ猛省し次なる手を(愛媛新聞社説) | 伊方原発とめまっしょい☆若者連合のブログ

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https://www.ehime-np.co.jp/article/news201708243907

2017年8月24日(木)(愛媛新聞)

 

 東京電力福島第1原発で、周囲の地盤を凍らせる「凍土遮水壁」が、今秋にも全面運用に入ることになった。今も増え続ける汚染水対策の「切り札」と期待され、国費約350億円が投じられたが、汚染水を完全に食い止めることはできないことが分かっている。東電および国は見通しの甘さを猛省し、根本的な解決につながる別の対策を早急に講じなければならない。

 凍土壁は地中に、全長約1・5㌔、深さ約30㍍の氷の壁をつくり、高濃度の汚染水がたまっている原子炉建屋などに、地下水を近づけないようにするのが狙い。昨年3月から段階的に凍結を進めてきたが、ここまでに1年5カ月かかっている。

 汚染水対策では他に、地下水を迂回(うかい)させ海に流す「地下水バイパス」、建屋近くの井戸で地下水をくみ上げ、浄化した上で流す「サブドレン」などの対策が講じられた。事故当初1日当たり約400㌧あった流入量は約140㌧に減っている。

 しかし凍土壁が今後、期待通りの性能を発揮したとしても、毎日100㌧程度の汚染水が新たに発生し続けるとみられている。東電はその理由を、トレンチと呼ばれる地下道の下部が凍結できないことや、地中の配管をまたぐ箇所で壁に隙間ができるなどの可能性を挙げるが、対策は示せていない。凍土壁の維持費も年間十数億円かかる。

 原子力規制委員会はすでに、凍土壁は汚染水対策の「脇役」と位置付け、サブドレンを優先するよう求めている。まずは凍土壁の効果を見極め、場合によっては大幅な方針転換もためらってはなるまい。

 敷地内のタンク約千基に貯蔵している汚染水の総量は、今年2月下旬時点で約96万㌧に達した。タンクの増設スペースがあまり残っておらず、大型タンクに置き換える「急場しのぎ」の対応を続けているが、このままでは確実に行き詰まる。

 規制委の田中俊一委員長は、タンクの汚染水のうち多核種除去設備(ALPS)で浄化したものは海に放出するべきだとの見解を示す。ただ、ALPSでは放射性物質トリチウムの除去ができない。

 通常の原発は希釈して海に放出しているが、福島第1原発の場合は風評被害への懸念が大きい。先月には東電の川村隆会長が海洋放出の「判断はもうしている」と明言、地元の漁業者らから猛反発を受けた。

 吉野正芳復興相も反対する意向を示した。それならば、国が責任をもって対策を明示するべきだ。東電の「国任せ」と「地元軽視」の態度には大きな問題があるが、ここに至っては、国が積極的に関わらなければ解決が難しいのは明らかだ。

 事故から6年半。莫大(ばくだい)な費用をつぎ込みながら、廃炉への第一歩である汚染水さえ止められない現実に、失望と怒りを禁じ得ない。そして、こんな状況下でも「原発回帰」を目指す安倍政権の姿勢を深く憂慮する。