私の会社は時差出勤を取り入れている。
3年目以上の先輩は裁量労働なので関係ないが、1年目の私は時間管理者なので利用させてもらっている。
1時間早く出社し、1時間早く帰るのが、なぜか得をしている感じがして好きだ。
感染症防止のため、という名目でこの制度を利用させてもらっているが、実際のところ電車の混雑は変わらない。
自宅から会社までおよそ1時間。
私はその時間すべてを読書にあてている。
読書と言っても、自己啓発や自信のスキルアップのための本ではない。
いや、たしかに一時期TOEICの単語帳をパラパラとめくることもあるが、基本的には私に野心も向上心もない。
ない、というよりかは、大学院時代に失ったといったほうが正しい。
頑張ることに心が疲れてしまってしまったのだ。
そして何事においても、頑張ることよりも、結果を残すことのほうがはるかに大事だと思う。
大学院の2年間で唯一学んだことは、頑張ることは結果を残すための手段のひとつであって、それが目的にはならないこと。。。
なんて夢のない人間になったのだろうと、うんざりする。
そんな私が電車内で読んでいるのは、とある紀行文である。
1冊を読み終わると、また家から新しい巻をブックカバーを装着し、また読む。
同じシリーズを何周しただろうか。それほど面白い。
なにより、会社に向かう憂鬱さを、そして満員電車のストレスを忘れさせてくれる特効薬なのだ。
私の、というよりも多くのバックパッカーのバイブルにもなったであろうこの紀行文は、刊行から半世紀近く経つ今でも色褪せない。
それどころか、このコロナ禍で旅から遠のいた私にとって、その紀行文は鈍い輝きを放っている。
なぜ、「鈍い」輝きなのか。
それは、著者が歩いたという、インドの砂埃によるものなのかもしれない。
そんなことを考えているうちに、もう電車は勝どきに着く。
Photo by Tom. N