トランシルヴァニア(2006仏) | CINEPHILIA~映画愛好症~

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気づいたら11月。もうすぐ1年終わっちゃいますねー。今月はフィルメックス見に行かれたらと思ってます。


トランシルヴァニア アーシア


この日は世の映画ファンには大きなイベントが。「パイレーツ・・・」のアジア・プレミアで、ジョニデ様、オーリー様が来日しているのです。炭酸好きの私はアリーナ席をめでたく当てました!が、涙を飲んで後輩夫婦に送別プレゼント。

代わりにこの作品観てきました。昨年カンヌのクロージングとなったトニー・ガトリフ監督の新作です。トニー・ガトリフ監督は私も3本ほどしか観ていませんが、一貫してジプシー(ロマ)を描いています。そこにはドキドキがあって、音楽音譜があって。この作品では、女性が主役なんですがやはり同じ流れでした。

突然姿を消した恋人を見つけるため、ジンガリア(アーシア・アルジェント)は彼の故郷トランシルヴァニア(ルーマニアの一部、多くの民族が共存する土地)へやってきた。しかし再会した時、彼には既に愛情のかけらさえなかった。ジンガリアは妊娠したことも告げられず、絶望の淵に立たされ、荒涼としたトランシルヴァニアを行く当ても無く旅し始めた。

最初から圧倒的な音楽の嵐雷です。躍動的で力強く、でも悲哀を含む音楽。ガトリフ監督は撮影前に音楽を集め、単なる民族音楽ではなく、アレンジしオリジナルなものに仕上げて撮影に臨んだそうです。音楽ありきの映画は珍しいのだと思いますが、さすがマッチしてます。そして、のような色彩・映像が美しかったです。

ストーリー的には普通かもしれません。失恋後、旅によって癒され本質を見つめ、再生する。この映画でもやはり言葉は少なく、代わりに音楽、踊りが語っているんです。だから一層、主人公や相手の男の気持ちが伝わってくるようで・・・。特に喪失感から、祭りの喧騒の中で泣き叫ぶシーン。自分の中の異物を“悪魔”と感じ地面でもがき苦しむシーン。手に書いた「目」で自分を防御するシーン。別に私はロマでもないけれど(同様、主人公も生まれながらのロマではない)、そういう「どうしようもない絶望感、喪失感、怖れ」しょぼんは共通に持っている感情です。聞いて心の目で感じる映画でした(---と思っていたら、少しうたた寝してしまいました)。

そんな力強い演技を披露したのが、ヒロイン役アーシア・アルジェント。彼女・・・少し濃い目の顔立ちで、ある種の雰囲気をもっています。思い出せないけれど、最近なら「マリー・アントワネット」のバリー夫人を演じたり、自分で監督業もやっているらしいです。彼女の脆さ・快活さ・妖しい魅力にクギ付けになってしまい・・・ラストのシーンは神々しいまでの美しさでしたわ。

途中少しのっぺりした話だったですが、ラストの数秒だけで私にはジーン汗ときました。「愛より強い旅」がなんとなく気に入った方なら、女性が主人公のこの作品はもっと楽しめると思います。

8月頃公開予定
満足度:★★★★★★★☆☆☆