懇意にしていたクライアントの担当者から
電話があった日の夕方。

 

彼と会うために松濤の事務所を出て九段下に
向かった。

 

久しぶりに会う彼は、心なしか疲れていた。

小料理屋でビールを飲みながら、ひとしきり
四方山話をした彼が、こう切り出した。

 

「この半年ほど、仕事の量が急に増えて、人を
探していたんだ。大勢の人と面接したんだが、なかなか
コレという人が見つからなくてさ。」

 

 

「君さえ良かったら、会社と会社との専属契約で
仕事を手伝ってもらえないか?」

 

 

私が会社を経営していることを知っている彼は、
社員としてではなく、業務委託契約という形での
協力を要請してきた。

 

 

私は、カミさんが倒れてからの、この数ヶ月の出来事を
手短に話した。

 

 

「えっ!」
しばらく絶句していた彼は、こう言った。

 

 

「知らなかったこととは言え、何も助けてやれず、申し訳ない。
でも、なんで知らせてくれなかったんだ。」

 

 

そんな彼の態度が、ありがたくて、思わず胸が熱くなった。

 

 

to be continue.