
まったく、この子は…
先ほど、ようやく車に乗り込んでくれた。
朝から、出かける時間も告げて、ちゃんと準備しなさいって
事あるごとに、2~3回は、言ったはず。
最近、また、どうしたことか?
お気に入りのアニメDVDを、最初から見始めたんだ。
昨夜も、徹夜で見そうな勢いだったのを、ダメだと阻止すれば
あーだこーだとわがまま言い出したけど、この僕が、許す訳ないでしょ。
ぷ~っとふくれっ面のこの子に、少しぬるいホットミルクを飲ませ、
まだ寝ない!と抵抗するテミナを、強制的にベッドへ連れて行き、添い寝してあげたら…
最初は、僕に向かって、数々の暴言吐きまくりだったけど
ハイハイと聞き流し、背中を、トントンしてあげてたら数分で寝入る。
スースーとした寝息を聞き、あどけない可愛い寝顔を見ながら
さっきは、まったくひどい言われ様だったなと、思い返し苦笑した。
テミナが、僕に言ったこと、全部、おぼえているんだからね。
まぁ、本気じゃないってのも、わかってるけど。
僕にしか、言えないでしょ?
それも、わかってるから。
いつの間にか、僕も隣で寝てた。
寝るまでは、手のかかる子だけど、一緒に寝ると、僕もよく眠れるんだな。
朝、僕は、先に目覚めよく起き、
まだ、よく眠っているテミナの頬を撫で、朝食の準備へ。
朝食の用意が出来たから、テミナを、起こしに行こうとしたら
珍しく着替えも済ませて、もうリビングで、昨夜のアニメの続きに没頭してた。
テミナが、アニメに注ぐ集中力は、
そんじょそこらの集中力を誇る者以上だ。
無理やり中断させ、さっさと朝ごはんを食べるように座らせると
せっかく作った朝ごはんを、注意散漫で食べ散らかし、…こぼした。
「アニメの集中力のかけらを、日常生活に少し持てよ!」
って、昨日の暴言の仕返し?
モタモタしてるテミナに向かって、今度は、僕が、暴言?
すると、今度は、一変して、泣きの攻防で出たテミナ。
一瞬にして、周囲を味方に付けてきた。
オイオイ…、ずるいぞ。
それじゃ、僕、孤立無援じゃんか!
が、こんなことで、僕が、怯むと思う?
テミナ、詰めが甘いんだよ。
じゃ、これでも喰らえ!
冷た~い突き放し戦法だ。
テミナは、負けじと耐えていたけど、
そのうち、チラチラと視線を送ってくる。
「ねぇ。ねぇ、…キーヒョン?」
こう来たら、もう、こっちのペースだ。
こっから、比較戦法で、じわじわ追い立てる。
テミナは、一度にいくつもの事を、器用にこなしていけない。
2つに1つを選ぶなら、大丈夫だ。
食べこぼし跡がついてる服のままでいいのか?
それとも、新しい服に着替えるか?
基本、服なんてどーでもいいって思う子だから
このままでいい!って、言い張るのもわかってる。
だから、僕のチクリとした言葉を、付け足す。
そのまま、食べこぼし跡ついた服着てても、
ベイビーテミナなら、可愛いもんな。
「…着替える。」
ぷ~っとしたまま、選択した。
よしよし、素直じゃないか。
ほら、手伝ってあげるから、こっち来な。
が、敵もさる者ながら、続きを見たい一心で、リビングで着替える!と言い張る。
まぁ、着替えてくれるなら、それでもいいか。
着せ替え人形状態で、されるがまま、視線は、TV画面に注がれている。
今度は、持っていく物を、さっさと鞄に入れれば済むのに
携帯だけでいいと、画面から視線を逸らさず言い放った。
出た、出たよ。
やってくれるだろう戦法。
僕は、やらないよ。
携帯だけでいいなら、そうすればいいさ。
だけど、このまま放っておいても、
テミナの戦法にハマる甘い奴なんてそこかしこ…
僕の言う事を、ここまで無視するだなんて、許さない。
うーん、このアニメよりも、テミナの関心が向くものって?
もうそろそろ出かける頃、ソファにへばりつき、アニメに夢中だったテミナが、
ひょこっと立ち上がってきたのは…
「コーヒーショップ寄るから、先出るね。あそこ、新メニュー出たかな?」
特定の誰に言うでもなく、周囲に聞こえるようなひとり言。
すると、テミナが、さっと反応して、僕を見た。
よし、釣れた!
周囲も反応したけど、僕は、華麗にスルーし
さりげなく、テミナだけに視線を合わせる。
「えっ、何?テミナも一緒に行きたいの?」
“一緒に行きたいの?”って言うのが、ポイントだ。
“飲みたいの?”なんて聞くと、お願いされてしまうだろ。
「うん!行く!」
ほらほら、テミナは、素直だからね。
瞬時の言葉には、単純に即答しがちだ。
飲みたいだけなら、“一緒に行きたいの?”って言われても、
買ってきてと言えばいいんだし…
間髪入れずに畳み掛ける。
「そのまま迎えの車に乗るけど、用意出来てる?」
ふんふん、顔色が変わったな。
そうだそうだ、まだ準備してないことを、今、悟ったんだな。
「あ、…まだ。ちょ、ちょっと待って!すぐ済むから、待ってて!」
さっきは、携帯だけでいいって言い放ったことも忘れ
素直に“用意”を始めた。
そっからのテミナの行動は、早かった。
それ持っていくのか?と、突っ込みたくなる物まで、鞄に押し込んでいた。
ま、そんなのどーでもいい。
要は、出かける支度を、自分で整えられればいいだけだ。
仕度するテミナを待つ間、案の定、買ってきてと注文が入る。
しょーがないなぁ…
コーヒーショップへ向かう道すがら、
ニコニコご機嫌な顔を向けて、腕に絡んでくるテミナ。
さっきまで、アニメの主人公しか眼中になかったくせに…
「キーヒョンのおごりだからね~!」
みんなの分を、買ってくる代わりに、僕たちの分の代金まで
ヒョンからもらっただなんて…、言わなくてもいいか。
この子を、育ててる歴、かれこれ7年?
まだまだ、手のかかる子だけど、僕に、ちょこちょこついてくる。
僕の前では、こんなに無防備でいるテミナ。
順調に育ってるかなんて知らないけど…
僕の愛しいテミナだから、大切に大事にしてる。
子育て奮闘中の僕。
めぐにゃん身勝手妄想劇場でした~

(素敵な画像お借りしました
)