めぐにゃん身勝手妄想劇場~フリフリ

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「ヒョン!ココア作って~!」

一人静かな時間が、容赦なくストップされた。

見れば、わかるよな?
俺が、今、読書中だってこと。

・・・・・・・・・

しばらく活字から、視線を外さずにいたけど…
軽くため息をつき、ソファから立ち上がると、フリフリされていたカップを受け取った。

キッチンへ向き直ったところで、長い腕が、いきなり首へ巻きつき
背中へと飛びつかれる。

ギュっと、しがみつかれたまま、降りる様子もなく
振り降ろそうとしたけど、すればするほど、俺の首が、絞まっていく。

このままじゃ、ため息どころか、窒息しそうだ。
諦めて、おぶり直し、そのままキッチンへと連行する。

デカい甘えん坊を、ダイニングテーブルの椅子に座らせ
おとなしく待つよう、目できつく伝えれば、ニコッと大きく頷く。

インスタントココアを、棚から取り出し準備していると
背後から、ご機嫌な鼻歌が流れてくる。

スティックに入ったココアを、マグカップに入れ、お湯を注いで溶かすだけ。
ただ、それだけなのに、作ってと甘えてくる。

そう言えば、いつもココア…
他の飲み物の時は、俺には、頼みに来ないなぁ。

こんな簡単なもん、自分でやれよ!
そう言ってやろうと、振り返ったら…

おやつを楽しみに、ちょこんとお行儀よく
座って待ってる幼い子がいた。

いや、一瞬、そう見えた。
コイツの幼少時を、ふと、垣間見た気がした。

まぁ、いいか…
そう思った俺は、結局、コイツに甘いんだ。

コトン…

出来たてのココアは、甘~い香りを漂わすけど、
火傷するくらい情熱的?

待ってましたとばかりに、わくわくした顔して、
甘いココアの香りを、思いっきり吸い込み…

「ヒョンのココアは、世界一!」

まだ、一口も飲んでもないくせに?
無邪気な笑顔を、こちらに向けて、そう声にする。

調子のいい奴め!と呆れて、人差し指でちょんと、頭を、小突いたら
わざとグラグラさせて、ケタケタ笑う。

すぐに飲めなさそうな熱いココアを、ティースプーンでくるくるかき回してる様子を
視界に入れながら、自分用の紅茶を用意して、隣に座った。

軽快にカシャカシャ鳴ってたはずの音が、
だんだん小さくなり、止まった。

…うん?
おい、飲まないのか?

ココアを、見つめているつもりな視線は、ふわり宙に浮いている。
さっきまで、どっからどう見ても、ご機嫌だったはずなのに…

コンッ…

紅茶が、ココアに乾杯した。

その音に弾かれた視線が、
目の前にくっつけられているカップの存在を、不思議がる。

コンッ…

もう一度、乾杯の音を鳴らした。

今度は、戸惑うような視線を、揺らし始めたから
“飲め”と、顎で促すように伝えると、黙って頷き、ココアを口へと運んだ。

・・・・・・

今、ココアの味が、伝わったんだろ…
頬が高くなり、ほんわり微笑み、また、一口、一口、コクリと飲む。

美味しいだろ?
まぁ、俺が、いれたんだから、当たり前だけどな。

何か、あったんだろ?
言わないから、聞かないけど…

美味しいって感じれば、大体の事は、まぁ大丈夫なんだってさ。
何がどう大丈夫なの?なんて、聞くなよ。

お前が、俺のココアが、世界一美味しいって言うなら
いつでも、何杯でも作ってやる。

…なんて、お前みたいに、声に出して言わないけど
こうして、気の済むまで傍にいてやるよ。

そう思いが、黙ってても伝わるといいんだけどな…
なんて思ってたら、ニッコリした顔を向けてきた。

えっ?まさか、今、伝わった?
少しドキッとしたから…

やっと笑顔になったほっぺを、
何だか、無性につまみたくなって、手を伸ばした。

いきなり、ほっぺを、ぷにぷにつままれて、
ワタワタしてるお前を見て、意地悪く笑ってやる。

ほら、何だかんだで、楽しいだろ?
俺も楽しいよ。



(素敵な画像お借りしましたペコリー