こんにちはー!マックです。

今日は久しぶりにお昼に更新してしまいまっす!


LME studio が素敵な作品でいっぱいだったsunny姉様の次の企画!

「夏祭り企画」!!



夏祭りバナー2014



連続参戦させていただきました!

本誌が1か月半の長いマテに入っているので、マックはすきゅんすきゅん鼻を鳴らしております(←)

マテは辛いけど、少しでもその間の萌え補充になれれば幸いです!






゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆






(なん、で・・・?なんで、敦賀さんが私と一緒に歩いているの?)




気が付くと、キョーコは薄暗い夜道を歩いていた。

カラコロと鳴る下駄の音。足元は良く見えないが石畳。

お腹の辺りを彩る黄色の帯から先は、大輪の花火が紺地の浴衣に咲き誇っていた。


頭上は鬱蒼と茂る木々でほとんどを覆われ、その隙間からはたくさんの星が煌めいて見える。

向う先に見えるのはたくさんある雪洞の温かな光。

そこに屋台の眩しいオレンジの光も混ざり、この先にあるものがとても明るくて活気のある祭りである事が伺える。



だけど、何故そこへキョーコが向かっているのか。

何故隣を蓮が歩いているのか。


キョーコには全く理解できなかった。



「あ、あの。敦賀さん・・・?どうして・・・」

「ん?どうしてって・・・君から誘ってくれたんだろう?」

「えっ・・・」

「近所でお祭りがあるから、時間があればって・・・」


(そうなの?)



そんな事、キョーコは身に覚えがない。

確かに、居候しているだるまやの近所にある神社で間もなく縁日が開かれる。

さして大きくもない神社だが、すぐ近くにある公園でも櫓が立てられ納涼会を開く為、それなりのお祭りとなるのだ。

昨年はデビューしたてで仕事もほとんど入っていなかった為、キョーコもだるまやのお手伝いをしながら少しだけ雰囲気を楽しんでいた。


しかし、蓮を誘うなど考えてもいなかった。

いくら夜行われるとはいえ、オーラからして華やかな『敦賀蓮』が縁日に現れたら・・・

気が付いた人々がパニックを起こして警察沙汰になるかもしれない。

そんな事になったら、とてもキョーコ一人で対応しきれない。


(つ、敦賀さん変装も何にもしてない!!)


よく見てみれば、蓮はサングラスや眼鏡の類の変装を一切していなかった。

テレビで見る、そのままの『敦賀蓮』がキョーコの隣を歩いている。


キョーコとお揃いの紺地には、薄い青で彩られた二種類の菊の華がたくさん描かれている。

紫色の帯が鍛え上げられた蓮の腰をきゅっと引き締めて、キョーコはどきりと胸を鳴らした。

しかし、今は愛しい人の凛々しい姿にときめいている場合ではない。


「つるっ・・・!あの、その。バレたら大変ですって・・・!」


思わず名前を呼びかけて、自分が周りにばらしてしまう事を恐れ小声になる。

しかし、蓮はくすくす笑いながらいたずらっ子のようにキョーコに話しかけた。


「大丈夫。誰も気が付かないって。」

「でも・・・!」

(貴方は存在自体が凄すぎなんですってば!!)


あわあわと口をはくはくさせながら慌てるキョーコの手を取りながら、「大丈夫大丈夫」としか言わない蓮。

ぎゅっと握られた手の温かさに「誰かにこんな場面が見つかったら!」と辺りを見渡して、キョーコは気が付いた。


二人以外に誰もいないのだ。


雪洞の明かりも屋台の明かりもある。

その更に奥からお囃子の音も聞こえる。

なのに、人の気配は確かにあるのに、姿がどこにも見えないのだ。


そこでキョーコは気が付いた。



―――ああ、そうか。これは夢なんだわ。



分刻みのスケジュールをこなす蓮が、キョーコの誘いなどに応じられるわけがない。

そして、彼は面倒見のとてもいい先輩であって、決して一後輩が占領できる存在ではない。

そもそも、蓮はキョーコの「彼氏」でも何でもないのだ。


お祭りに一緒に行くなど、夢のまた夢だ。


(そっか・・・私ったら、自分に都合のいい夢を見てるのね)


自分の手を包む大きな掌を力を込めて握り返すと、蓮が少し驚いた様にキョーコを見て・・・

そして、神々しく微笑んでくれた。

それは周りの雪洞や屋台の明かりなどよりもずっとずっと眩しくて、キョーコの心はぽわんと温かくなる。


(素敵な夢・・・夢の中なら、貴方に想いを告げる事も許される―――?)


赤く染まった頬を蓮の浴衣に擦り付けると、夢の中だと言うのにきちんと蓮の体温を感じる事が出来た。


綿の柔らかな生地の向こうの温もりに、愛おしさがこみ上げる。

キョーコの歩調が蓮にすり寄った事で遅くなったが、それに合わせてくれる蓮の気持ちが自分と同じであると思ってしまう。


(あと少し・・・あと少しだけ・・・この人と一緒にいさせて―――)







「―――――え?」


恋人のように寄り添いながら歩き続け、もう少しで鳥居の前までたどり着くと言う所でキョーコは目が覚めた。


見慣れた無機質な白い机。

読んでいた台本は程よい枕になっていたようで、数ページがキョーコの腕でよれた跡がある。

慌てて涎の痕が付いていないか確かめるが、少し皺になっているだけで問題はなさそうだ。

キョーコはホッと胸を撫で下ろした。


(そうか、私、ここで寝ちゃっていたのね)


次のオファーについて話があると言う椹の会議が終わるまでの間、キョーコはラブミー部室で待っていたのだった。

無事だった台本をぱたんと閉じながら、キョーコはその手をじっと見つめる。



とても幸せな夢だった。



この手を包む大きな掌はとても温かくて、ぎゅっと力を込めるその強さもどこか優しさを感じた。

何よりも、自分だけに向けてくれた神々スマイル。

まるで自分を「愛している」と言ってくれているようなその微笑みに、思い出すだけでキョーコの頬は熱くなる。


(あんな笑顔・・・現実では私に向けてくれる日なんて来ないのに)


本当に自分に都合の良い夢だった事に、少し恥ずかしくなるものの、一方で嬉しくなる。

手を握り返しても、擦り寄っても、拒む事なく受け入れるように歩調を合わせてくれた蓮。

きっと、彼が本当に好きな人と付き合う時にはこんな風に一緒に歩いてくれるのだろう。

それを夢の中とは言え、叶える事が出来たのだ。


それだけでも、キョーコはとても幸せな気持ちになった。


(また見れたらいいけど・・・それはさすがに欲張り過ぎよね)

キョーコが幸せな余韻の溜息を吐いた時、コンコンと控え目なノックの音が響く。

椹の会議が終わったのであれば、向こうから内線で連絡が来るはずだ。

奏江や千織が事務所に寄る予定は聞いていない。

少し不思議に思いながら「どうぞ」と声をかけると、ドアが開いて入ってきたのは蓮だった。


「ごめんね、少しお邪魔してもいいかな?」

「敦賀さん!どうなさったんですか?」

「書類を取りに事務所に寄っただけのつもりなんだけど、社さんが松島さんに捕まっちゃってね。少し時間が空いたんだ。」

「そうなんですか・・・私もいつ椹さんに呼ばれるかわかりませんが、どうぞ。お茶出しますよ?」

「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて・・・」


ぱたりとドアを閉めるとそのまま一番近くのパイプ椅子に手を伸ばし、がたりと音を立てて座る。

その動作すら手足の長い蓮が行うととても優雅に見えて―――

そして、先程まで夢の中で自分の都合よく動かしていた大先輩に少し罪悪感を感じて、ドキバクと大きな音を立てる心臓にキョーコは内心汗をかきながらお茶の準備を始めた。


外は暑いが、事務所内は結構冷えている。

確か早朝からスタジオに籠っていると最近の社情報を耳に入れていたキョーコは、温かいお茶がいいだろうと棚から急須とティーバッグを取り出す。


(何てタイミングで現れるのかしらこの人・・・!)


不埒な妄想は一切していないつもりなのだが、大先輩を自分の都合よく動かしてしまった以上、やはり後ろめたい気持ちに変わりはない。

手元が狂って余計な動作が増え、がちゃがちゃと少し騒がしい。

やっとの思いでポットからお茶を入れると、キョーコは茶葉を蒸らすしばしの間に蓮をちらりと盗み見た。


蓮はキョーコが枕にしていた台本の表紙を見ながら、ふわりと微笑んでいた。

3連続でイジメ役が来てしまったが、それでも未緒からナツへと変身できたように、このドラマでもまた元のキョーコとも、未緒ともナツとも違うキャラクターを作り上げる事に成功し、撮影現場での評価をあげている。

新しいキャラクターを作り上げられた事は報告済で、蓮も自分の事のように喜んでくれた。

それがキョーコには誇らしかった。



(・・・今なら。)


蓮のその優しい弧を描く口元に、夢の中で見た微笑みが重なる。


もしもこの微笑みが続いている間に、蓮を縁日に誘う事が出来たのなら―――

その時はいい返事がもらえるだろうか?


(っ、そんなの!私に都合よすぎるでしょっ!!)


無言でブンブンと頭を振る。

だけど、どうしても蓮のあの笑顔が忘れられない。


雪洞よりも、屋台よりも眩しく見えた、あの美しい笑顔。

涅色の髪は周りの明かりを吸収して金髪にも見え、さらさらと揺れるその下には同じ色の瞳。

浴衣の合わせた襟から覗く喉仏まで、はっきりと思い出せる。


「最上さん?どうしたの?」

「っ!!な、何でもないです!大丈夫です!!」

「・・・そう・・・?」


自分に背を向けてぶんぶんと頭を振りまくるキョーコを不思議に思ったのか、蓮が声をかけて来るが、キョーコは更に挙動不審気味になりながら答えるしかない。

納得はしていなさそうだが、手元にはお湯を入れた後の急須。

蓮は浮かせかけていた腰をそのまま下ろした。


蓮が動かないでくれた事にホッとしながら、キョーコはお茶を注いでいく。

こぽこぽといい音を立てて丸みを帯びた湯飲み茶碗へと入っていく緑色のお湯。

ふわりと香る緑茶の匂いに郷愁を突かれ、そしてその切なさに傾いた感情は蓮の笑顔を思い出させた。




―――――また、あの笑顔を見たい。

貴方の笑顔に会いたい・・・





「―――あのっ!敦賀さん、お話しがっ!!」



思い切ってキョーコは蓮に話かける。

無事にお茶が蓮の手元に渡ったのは、スケジュール変更を半強制的に願う蓮の言葉に、社が電話の向こうで悲鳴をあげた後・・・








作品用拍手アイコン ←実現するといいよね!


スキビ☆ランキング

************


でもその場合には、ちゃんと変装をしてください敦賀さん。

と言うわけで、夏祭りにはこれから行くぜ☆な蓮キョの話でした。


何故夢オチかと言うと、マックが寝て起きたら寂しかったから(爆)

幸せな夢の後ほど泣きたくなる事はない。