こんばんはー!マックです。


※この話は蓮キョ結婚後設定です。

熱中症によるキョーコ記憶喪失のお話し。

途中は色々と辛いですが、ラストはハピエン確定。




皆様、どうぞ体調にお気をつけてお過ごしくださいませ。


今回、キャラが崩壊気味です(特にキョーコ)

理由は後に書いてますが・・・

意図的だろうとキャラ崩壊が苦手な方はご注意くださいませ。

本当に辛いシーンですみません





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夕飯時の楽しい食事会は1時間程で終了し。

その後の撮影は和気藹々と進んで、無事にテッペンを迎えるまでに終わらせる事が出来た。

翌朝の集合時間がいつもより早い為、皆足早に帰路に着く。

蓮が家に辿り着いたのは1時頃だった。



さすがにキョーコも寝ているだろうから静かに・・・と思っていたのだが、暗い廊下の先に居間の明かりが漏れている。

まさかと思い、緊張しながら居間のドアをゆっくりと開けると、ソファーの背もたれの向こうにキョーコの頭が見えた。


「・・・!キョーコ・・・」


栗色の髪が、蓮の声に反応してさらりと揺れる。

ゆっくりと立ち上がったキョーコの姿は、いつも蓮を待っていてくれたのと同じシャツワンピース。

あれからだいぶ冷え込むようになっていたから、カーディガンではなく少し厚手のストールを肩に掛けていた。


「キョーコ、大丈夫?どうしたの?」


俯き加減のキョーコの顔色はあまりいい様には見えない。
一件以降見る事の出来なかったキョーコの身体は更に薄さを増し、自分が家にいなかった時間、本当にちゃんと食べられていたのか気になる。

触れる事はまだ許されないような気がして、近寄りはするが、どうしても手を出す事が出来ない。

掛ける声も少し震えた。


「―――最近のネットってすごいんですね。何でもすぐに情報が手に入るんですもの。」

「・・・え?」

「それがどんな情報でも・・・敦賀さんの、知られたくない情報でも。すぐわかっちゃうんですもの。」

「キョーコ?どういう・・・?」


楽しい職場で心地よい疲労に包まれてきた頭は、休息を求めているせいかきちんと働く事が出来ない。

キョーコの言っている事がよくわからないで戸惑う蓮に、彼女が差し出してきたのは数枚のコピー用紙だった。



携帯で撮られたと思しき少し荒い画像。

アットホームな店内を写した薄暗いその画像には、目を凝らしてみると二人の人物が入り込んでいる。

長身の男の服装は、今自分が着ている上着と同じ。

アルマンディの特注の物で、間違いなく自分であった。

隣に座る明らかに女性と思える髪の長い横顔は先程まで一緒に撮影所にいた荒井で、二人だけしか写っていないこの画像では、まるでデートか何かで食事に来ている様にもとれた。


有名な大手SNSのロゴが入ったサイトページ。

投稿された画像に付けられたコメントは「ご飯食べに来たら敦賀蓮いたー!!何か超親しげ!この二人付き合ってるくさい!」とあって、あたかも蓮が共演者と親密な関係を築いているかのように書かれていた。


(何で!!)



この画像の内装には見覚えがある。夕飯を食べに行った店だ。

他の客からはあまり見えない、奥まった場所に座らせてもらった筈なのだが・・・
奥まっていただけに、投稿者には自分と荒井の二人しかわからなかったのだろうか。


「違う!これは共演者数人でご飯を食べに行っていて」

「そうでしょうね。だって、この人後のコメントで他にも何人か女優さんがいたって書いてますもの。」

「こんな風に誤解を受けるような写真を撮られてしまったのは、申し訳ないと思うよ。ごめん。」

「別に、そんな事怒ってません。お好きになさったらいいと思うんです。」

「でも怒ってるだろう?」

「怒ってません!!」


一体どういう経緯でキョーコがこの画像を発見するに至ったのかはわからない。

ここの所本当に家から出たがらないと棚瀬から聞いていた為、もしかしたらネットショッピングでもしようかと開いたパソコンで発見したのかもしれない。

こんな写真を一般人が撮れてしまうだなんて、本当に一瞬も油断できないなと溜息を吐きたくなった。


しかし、今は溜息など吐いている場合ではない。

何を誤解させてしまったのか、「怒っていない」と言葉では言うものの、キョーコの声は明らかな怒気を孕んでいる。


蓮が愛しているのも、案じているのも。今も昔もキョーコただ一人。

ただでさえこじれている今の関係をこれ以上悪化させたくない。

余計な誤解は解いてしまわねば。

これ以上、キョーコを刺激してはいけない。


蓮は疲労と衝撃でうまく働かない頭を必死で捻った。


「本当にゴメン。

今夜は共演者オススメの店に行ってたんだ。本当に、この人と二人で行ったりなんてしてない。

誤解を招くような軽はずみな行動してゴメン。」

「だから怒ってないっていってるじゃないですか!!しつこいですよ敦賀さん!」

「でも、本当に怒ってなかったら、君はどうして俺を待ってた?俺とは顔も会わせたくないんじゃないのか?」

「そうですよ、顔見るのも嫌ですよ!だって、貴方はいつも私を見てないんだもの!」

「私をって・・・毎日会って、見てるのはキョーコじゃないか。」

「違う違う!私じゃない!!貴方が求めているのは「わたし」じゃない!!記憶を失う前の「キョーコ」よ!!」


癇癪を起したように叫ぶキョーコの言葉に、蓮はハッとした。

怒りで頬を赤くしたキョーコの目のふちはそれ以上に赤く、そこからはらりと大粒の涙が零れ落ちる。

色違いで買い揃えたふわふわなスリッパめがけて落ちていくその雫の透明さに、蓮は自分のこれまでを振り返った。



いつか必ずキョーコの記憶は戻る。

そう信じて、蓮はキョーコを自分達の家に呼び戻した。

しかし、自分を「敦賀さん」と呼び、敬語を使い、必要以上に余所余所しい彼女。

先輩後輩と言う関係だった頃、同じように呼ばれ、敬語を使われていたはずなのに、蓮の記憶にはないその新しいキョーコの姿が受け入れられなかった。


どう接したらいいのかわからず、腫れ物に触るかのような態度を知らずとっていたのかもしれない。

それがキョーコのお気に召さなかったのか・・・



「どう?何も言えないでしょう!?だって本当の事ですものね。」

「違う・・・!君は君だよ!」

「そうは思ってない癖に!!私にはこんな風に笑ってくれたことないじゃない!!」


びっと紙が鋭く宙を切る音がする。

それと同時に蓮の目の前に提示されたのは、蓮とキョーコが微笑みあっている結婚式の時の写真。

もう片方のキョーコの手にある画像の二人は隣の写真のように笑い合っていて、何も知らない人から見れば、確かにただの共演者以上にも見えた。

この時・・・荒井とはキョーコの話で盛り上がっていたのだが。


「こんな顔で笑えるなんて、私知らない!だって私の事を見る時は、貴方いつも不安そうな顔してるもの。

いつ本当の記憶を戻すかもわからない、今は別人な「わたし」だから・・・だから私なんてもういらないんでしょう!?」

「ちがう!」

「違わないわ!!違うって言うのなら笑いなさいよ?私にこの写真みたいに笑ってみなさいよ!!」

「・・・っ」


なじられて蓮は言葉に詰まった。


これまでだって、何度か夫婦喧嘩をしてきた事はある。

恋人同士の時から束縛の激しい蓮に困ったキョーコが声を上げて、話し合いの場を設けて二人で解決すると言う流れだった。

あるいは、キョーコの卑下する性格を何とかしたくて、蓮が一生懸命説得する夜もあった。

だけど、こんなに激しく蓮をなじるキョーコなど初めてで、蓮はどう対応したらいいのかわからない。


彼女の要求通り、笑えばいいのか。

しかし、それはきっとキョーコが本当に求める答えではないような気がする。

そのしばしの躊躇が、更にキョーコの怒りに火を注いだ。


「ほら、ごらんなさいよ。私には笑えないじゃない。

・・・この人の事があなたは好きになったのよ。」

「それは違う!俺が愛してるのはキョーコだけだ!」

「そんな言葉いらない!笑いかける事も出来ない女に愛してるとか、貴方どうかしてるわ。

もう記憶の戻らない私の監視なんてやめて、この人と付き合うなりなんなりしたらいいじゃない。」

「監視って・・・」

「監視じゃないのなら何なの!?その縋る様な目はやめて!そんな目で私を見ないで!!

私なんてあの時死んじゃえば良かったって、お前なんか邪魔だって、素直にそう言えばいいのよ!!」
「そんな事思ってない!!」

「だったら笑いなさいよ!!こんな風にっ!!」


キョーコの死など、一度たりとも望んだ事はない。

その誤解に思わず感情的になった蓮に、キョーコは両の手に持っていた物を投げつけた。

紙はひらひらと二人の間に舞い落ちるが、写真立ては蓮の胸に当たり足元に落ちた。

がしゃんとガラスの割れる音が派手にして、中に入っていた二人の写真が飛び出してしまう。


「もう私に構わないで・・・っ!!」


足元で割れた写真立てに蓮が一瞬気を取られた隙に、キョーコは部屋へと戻り、鍵をかけてしまった。

ガチャガチャと音を立てるゲストルームの扉の音に、蓮は目の前の嵐が突如去った事で一気に疲労感を募らせる。



ガラスの破片の中で呆然と立ち尽くす蓮の足元には、人生最高の時を迎えた二人の写真。

純白の衣装に身を包み、手を取り合いカメラを向く蓮とキョーコの笑顔は眩しいほどに輝いていた。








作品用拍手アイコン ←いえもう本当にすみません・・・

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最近、芸能人が勝手に写真撮られてネットで晒されちゃうって話、よくありますねー。

プライベートを切り売りするのも芸能人の仕事の一つですけど、勝手に撮って勝手にネットに上げちゃうのは良くないと思う・・・

モラルが大事かと。

(そしてこの話では誤解された蓮さんが可哀想ね。←)



ちなみに、お前にしちゃ珍しくキャラ崩壊じゃないかと言われそうなので補足・・・←珍しいのか?

この場面はリアルであった出来事をなぞっています。

記憶をなくす前も穏やかだった方が突如豹変したと言う・・・

(あ、でも勿論蓮キョ変換の為&ケンカの詳細などはさすがに知らない為脚色大ですよ)

先の注意書きにこの理由も書こうかと思ったけど、思いっきりネタバレやしね。

色々辛い・・・