こんばんはー!マックです。


※この話は蓮キョ結婚後設定です。

熱中症によるキョーコ記憶喪失のお話し。

途中は色々と辛いですが、ラストはハピエン確定。

(かっこいい蓮さん不在で申し訳ない←)



皆様、どうぞ体調にお気をつけてお過ごしくださいませ。







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10月の頭でもあんなに厳しかった残暑が、今では恋しく思えてしまう。

窓を大きく開け放ったままのリビングで、キョーコはふるりと小さく身体を震わせた。



広いベランダへと続く窓の外を見れば、だいぶ日が傾いて空の色が変わっている。

クリーニングに出さず、家で洗濯していたタオルや下着・小物類を取り込み畳みながら、それなりに長い時間をぼんやり過ごしていた事に気が付いた。

しかし、手元にある男性物の下着を再び目に入れるとキョーコは微かに頬を染めて、また思考の迷宮に旅立つ。



(あの男性(ひと)が身につける物・・・)



きっと記憶を失くす前の自分であれば、愛する人の下着など何も考える事無く洗濯し、干して。そして畳んで衣装棚にしまっていたのだろう。

蓮と暮らす前は幼馴染と同居して世話をしていたと聞くし、どうやら異性の下着を触るのは彼が初めてではなさそうなのだが・・・

今のキョーコには異性の下着を普通に扱っていた事の方が不思議に感じられるし、ましてやあの蓮のモノであると言う事が、余計に胸を落ち着かなくさせた。



蓮と会話を交わす程に、一緒に暮らす時間が長くなる程に。

キョーコの中の不安は大きくなる。



―――このまま記憶が戻らなければ?

あの人が愛していると言う『キョーコ』に戻れなければ、私はどうしたらいいの?



正直な話、キョーコは蓮が苦手だった。


蓮はとても優しくしてくれる。

しかし、キョーコが視線を外している時はいつも自分を祈るような・・・縋るような目で追いかける癖に、その視線が痛くて彼を見ると、優しい微笑みで「どうした?」と聞いてくる。

職業が俳優なだけに、それはそれは美しく微笑んでその瞳に直前まで映していた不安の色を覆い隠してしまう。


だからこそ、キョーコは余計に蓮の感情を読み取れてしまった。



(彼が求めているのは、『私』じゃない―――)



蓮の瞳は、いつも記憶を失う前の『キョーコ』がキョーコの中にいるのかどうかを探っている。

それが意識的になのか無意識的になのかは計りかねる。

だが、望む応えがキョーコから帰ってこなかった時、彼の瞳には失望や諦めなど複雑な・・・だけど今のキョーコにとっては良くない感情が乗る。


勿論蓮は、キョーコに悟らせまいと決して表情を変えないが・・・

自身の記憶がなかなか戻らない事に落ち込んでいるキョーコには、蓮の瞳に映る感情の色は小さな棘のようにちくりちくりと胸に刺さった。



(どうして何も思い出せないのかな・・・努力、してないわけじゃないと思うんだけど。)



自身の親友だと言う女性や、お世話になったと言うご夫婦にも退院後も定期的に会いに行っている。

彼らから聞く『キョーコ=ヒズリ』・・・・結婚前は『最上キョーコ』の人生は結構波乱万丈で、本当にそれが自分の歩んできたものなのかと疑問にも思うのだが。

しかし、彼らと話をするのは不思議と懐古的な気持ちも起こさせてくれる。


一緒に一流女優の道を目指してきた奏江や千織。

そして、幼馴染との同居を解消した後からずっと本当の親のように一緒に過ごして見守って来てくれたと言うだるまやのご夫婦。


彼らと過ごす時間は、例え記憶が戻らずともとても気持ちがいい。
きっと、本当に親しい間柄だったのだとキョーコは肌で感じ取っていた。



(だけど、あの人は何かが違うのよね・・・)

蓮だけは、目覚めた日に会った時から何かが違うと感じていた。

それが一体何なのかはキョーコにもわからない。

しかし、誰もが羨む美貌と体躯の内に秘めている何かが、キョーコをいつもざわつかせる。


それがいまだに気持ち悪い。

自分の夫だと言う美しい男性(ひと)。

決して嫌いではないはずなのに―――



ふわりと大きくカーテンが揺れ、もうほとんど青褐色に染まった外から冷たい風が勢いよく入り込んできた。

棚瀬と昼過ぎに二人で買い物へ出た時のまま、薄いシャツ1枚を着ただけのキョーコには冷たすぎる風だ。

思わず持っていた下着を抱えたままきゅうっと身体を縮こませると、顏との距離がかなりなくなった下着から石鹸と瑞々しい花のような香りがほのかに立ち上がって来て、キョーコはまた「ひゃあぁ」と真っ赤に顔を染める。



「~~~っ!こんなに時間経っちゃったんだし、ご飯の用意しなくちゃ。」


蓮は今夜も遅くなると聞いていたしゆっくり家事を進めても問題はないのだが、ここにいるといつまで経っても思考の迷路から抜け出せなさそうだ。


蓮の下着に一度目を落とすと、迷宮へと誘ったその原因をバスタオル数枚の間に挟みこむ。

そうしてその上にパジャマを置くと両手に持ち、洗面所へと足を向けた。








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あ、そう言えば本誌滾ってたのですが・・・

週末の寝落ち&旦那に電気消された為に記事数行で終わりました←

もう発売からこんなに過ぎたらやる気もマイナスorz

でも今月もとても良かったよおぉぉぉ!!

もうもうもう、大好きあの二人!!


と、ネタバレなしの一言感想でした☆