こんばんはー!マックです。
※この話は蓮キョ結婚後設定です。
熱中症によるキョーコ記憶喪失のお話し。
途中は色々と辛いですが、ラストはハピエン確定。
(かっこいい蓮さん不在で申し訳ない←)
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退院が決まってから1週間後の午後。
キョーコは、蓮と共に特別病棟内の一室で待機していた。
この部屋と繋がっている隣の会議室で、院長とローリィの二人がマスコミ関係者を集め記者会見を開いているからだ。
本当ならば事務所へ寄ってそこで会見を開いても良かったのだが、倒れて以降長く外に出ていないキョーコを考え、病院から家へすぐ向えるように配慮されたのだった。
キョーコにゆっくりと静養して貰う為、『京子』が復帰する際スムーズに戻れるようにする為。
記憶喪失の件に関しては伏せて、あくまでも体調不良による芸能活動休止である事を説明している院長。
都内でも1・2を争う規模の病院院長と、変わり者だがキレ者として有名なLMEのローリィ。
記者会見と言えば矢継ぎ早に本人への取材をさせろと記者の声が上がるのが普通なのだが、この二人にかかれば誰も声を上げる事もなく、メモ帳に次々と必要な情報を書き込ませていく。
社と棚瀬に「二人とも、そろそろ・・・」と声をかけられた蓮は手を差し伸べ、キョーコがソファーから立ち上がるのをサポートする。
そのまま部屋を出ていこうとするキョーコの手をぐっと握ると、蓮はキョーコに大丈夫かと声をかけた。
「大丈夫ですよ。たくさんのカメラと聞いて、少し緊張はしますけど・・・」
「そうだね。フラッシュも多くたかれると思うから目が痛くなるかもしれないけど、辛くなったら俺に捕まっていいからね?」
「ありがとうございます。」
「社長と院長が殆ど事情を説明してくれてるから、キョーコはにっこり笑って『京子』のファンを安心させてあげれば大丈夫だよ。」
「はい・・・」
「蓮、いいか?」と社に声をかけられたところで、二人はそのまま部屋を出る。
入口を隠していた衝立から会議室へと出ると、比較的広く開放的な部屋の中にはたくさんの報道陣が詰め掛けていた。
蓮に続いて登場したキョーコに、多くのカメラがレンズを一斉に向ける。
自分の姿を焼き付けようとするフラッシュの強さに、キョーコは歩きながら眩暈を覚えた。
(こんな世界に、『私』はいたの・・・?)
こんな強烈な光の中で、自分がそれに負けない光を放っていたなど到底信じられない。
蓮が止まって報道陣の方を向いたので、キョーコもそれに倣う。
すると更に光が強くなって、キョーコの目は光の洪水でもう何も映す事が出来ない。
キョーコは助けを求めるように蓮の方を見上げる。
すると蓮は意図を汲み取り、側で控えていた棚瀬からマイクを受け取ると喋り出した。
「本日は、『京子』の為にお集まりいただき、ありがとうございます。京子はこの通り元気になりました。しかしまだ仕事に復帰できる程には回復しておりませんので、しばし休養を頂きたいと思います。」
一息入れた所で、蓮は「喋れる?」とキョーコにマイクをまわす。
おずおずとそれを受け取ると、キョーコは少し目線を下げたまま記者に向かって話した。
「この度は、私の体調管理が行き届かなかった為に、皆様にご心配とご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした。私はもう大丈夫ですので、1日も早く復帰して元気な姿をお見せできるように、今はゆっくり休みたいと思います。」
打ち合わせ通りの言葉が言えてホッとしながら、キョーコは頭を下げる。
それを見て、蓮も一緒に頭を下げた。
芸能界の中でも一流の俳優夫婦二人が頭を下げるその姿を捉えようと、更にフラッシュの光が強くなる。
ゆっくりと頭を上げていった二人に、一人の記者から予定外の声が掛けられたのはその時だった。
「京子さんは実は記憶障害になったと言うのは本当ですか!?」
記憶の件に関しては一切公表しない―――
それは、退院後の身の振り方を決めた時も今直前の最終確認でも、事務所の方針として決定していた事。
それなのに知っている人がいると言う事実に、キョーコはびくりと身体を強張らせた。
それは蓮も同じで、さすがに表情には出さなかったものの反応が遅れてしまった。
(誰だ、情報を漏らしたのは・・・!!)
手を上げてスクープの発信者である事を告げるのは、週刊BOOSTの男性記者だ。
周りの記者逹も会見では発表されなかった新情報に一気にざわめく。
「キョーコちゃん、もういいわ。部屋へ戻りましょう!」
「キョーコ?大丈夫か?歩ける?」
棚瀬が慌てて駆け寄り、待機していた部屋へと二人を戻そうとする。
しかし、顔を強張らせたままのキョーコは動かない。
気分が悪くなったのかと蓮が抱き寄せようとしたが、キョーコはその手をやんわりと押しのけた。
―――このたくさんの光とレンズの先に、『女優・京子』を本当に心配してくれている人達がいるのなら。
その気持ちにきちんと応えたい・・・
「キョーコ?」
様子が変わったキョーコに蓮が問いかけると、目を見て「大丈夫」と答える。
蓮の手をゆっくり自分から離させ、キョーコはまっすぐ正面を見据えた。
何があるのかと記者達は一斉に静かになり、カメラのシャッター音だけが響く。
そんな中でキョーコはゆっくりと口を開いた。
「はい、事実です。今の私は、自分がどこの誰なのかもわかりません。」
「・・・『京子』として活動されていた事も忘れたって事ですか?」
「そうです。芸能活動していた事も覚えていませんし、私を支えてくれる人達の事も覚えていませんでした。」
「それは、今お隣にいらっしゃる旦那様の事も・・・と言う事でしょうか。」
「はい。」
「熱中症で倒れた事は事実ですか?」
「そう聞いています。私自身は、病院に搬送された翌日、目が覚めた所からしか覚えていないんです。」
そこまでキョーコが答えると、記事にする為に新しい情報が欲しいと次々他の記者逹も質問を飛ばしてくるようになった。
「今のお気持ちは!?」「お隣にいらっしゃる敦賀さんについてはどう思われていますか!?」と矢継ぎ早に飛ぶ質問に、困ったキョーコは全部に答える事は出来ないと判断しマイクを持ち直し「あの・・・っ!」と声を張り上げた。
「あの・・・私はそれまで風邪を引く事もほとんどなかったらしいです。健康にとても自信があったみたいで・・・でも、それでもやっぱり、どんなに気を付けてても、突然倒れてしまう事もあると思うんです。私みたいに・・・」
「だから、ここにいらっしゃる皆さんも、『私』を応援してくださる方々も、どうかお気をつけてください。自分の大切な人を、悲しませないであげてください。
お願いします・・・」
静かになった室内で、キョーコは深く頭を下げた。
この場にいる人逹だけではなく、カメラの向こうで『京子』を応援してくれている人にも自分のような思いを味わってほしくない・・・
それがキョーコの願いだった。
蓮がローリィの方をちらりと見ると、ローリィはキョーコへ優しい視線を送っていた。
それを確認してから、蓮も報道陣へと言葉を送る。
「キョーコの記憶については、療養期間中にゆっくりと過ごして行く中で戻ればいいなと、そう思っています。ですので、どうか私達夫婦を静かに見守っていただけませんでしょうか?お願いいたします。」
そこまで言葉にすると、キョーコの隣に並び、深々と頭を下げた。
マイクなしでも会議室の後ろまではっきりと通る強い声。
妻を見守り、支えていこうと言うキョーコへの愛情の深さを誰もが感じ取り、メモ帳を持つ者もカメラを構える者も、誰もが自分以外の他人を思って頭を下げる夫婦に敬意を感じた。
カメラのシャッター音だけが響く静かな会議室。
いつまでも頭を下げたままのキョーコの背中を優しく撫でて起こしたのは蓮だった。
「よく頑張ったよ、キョーコ。」
「・・・え?」
「さあ、帰ろうか?俺達の家へ―――」
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本当にね、何が起こるかわかりませんから。
だから皆さんもご注意くださいね。
(どうでもいい話ですが、本誌発売日なのにE嫁デー・・・orz)