こんばんはー!マックです。
何となくお気づきの方も多いかと思いますが、長編の連載は今月月水金で更新しています。
で、今日は毎度懲りない思い付き系の小ネタ。
ネタが季節物と言う事でもしかしたら既出かもしれませんが・・・一応34巻までの情報で書いてるので、大丈夫かなーと思っています。
(が、既出の場合先方にご迷惑がかかるといけないので、こそっとお教えいただけるとありがたいです)
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「あれ・・・?」
先週梅雨入り宣言のあった関東地方は、今日も朝から全域で雨模様。
しっとりとした空気が土と葉の青い匂いをふんわりと巻き上げ、雨粒に乗せて運んでいる。
雨の日は自転車通学(通勤)が出来ないけれど、その分お気に入りの傘を差しながら歩く時間が長くなるから好き―――
そんな事を思っていたキョーコは、公園の入り口でぴたりと足を止めた。
(ここの紫陽花って、2株とも同じ色だったっけ・・・?)
ショッキングピンクに近い色のサツキが元気に咲き誇る植込みの中に、少し距離を置いて植わる2株の紫陽花。
その咢の色はクリーム色と淡い水色で、これからどんどん深い青に染まっていくのであろうと推測できる。
しかし、昨年は確か右側の株がピンクだったはずでは・・・?
かなり近い距離に植えられているにも関わらず2株の色が違っていたので、キョーコの記憶に残っていたのだ。
(どうしたのかな・・・公園管理の人が肥料間違えちゃったのかな?)
普通に考えれば、近距離で埋まっているのだから同じ様に色付いている今年の方が普通なのだが、昨年を覚えているキョーコとしては何事かと不思議に思う。
しかし、基本的に朝草刈りが始まる前に登校し仕事を終えて帰宅するのが深夜になる事もある・・・どころか、今年に至ってはまずだるまやへ帰宅する事が珍しかったキョーコには、この植え込みに何が起こったかなど知る由もない。
そうか、女将さんならご近所さんだからご存知かも!今夜遅くならなかったら聞いてみよう!と思い至った所で、最近また会えなくなってしまった先輩俳優をふと思い出した。
『トラジック・マーカー』の撮影も無事クランクアップし、「お守り」も役目を終えた5月。
ヒール兄妹としての時間が終わってしまえば、分刻みでスケジュールをこなす蓮と過ごせる時間はほんのわずかになってしまった。
勿論、彼の優秀なマネージャーが裏で一生懸命手を回して時間を作ってくれてはいるのだが・・・
それは、当然キョーコの与り知らない所での話しである。
蓮の隣にいられない事が寂しいと感じるようになってしまった、そんな自分の欲深さに呆れてしまう。
だけど、1年前はまだお互い嫌い嫌われの間柄だったんだわと思うと、キョーコの心はふわんと温かくなる。
(そうよね、ちょうど1年前くらいになるのよね―――)
『君は そんなに俺が嫌いか・・・・・・?』
倒れた社に代わって蓮のマネージャーを務め上げたのは梅雨入りしたこの時期だ。
昨年はゲリラ豪雨のような一点集中型で梅雨前線が活動していた為、梅雨なのに梅雨らしくない天候の日が多かった。
そのお蔭で、自転車の荷台に蓮を乗せて全力疾走などと言う芸当も出来たのだが。
(私の気持ち・・・あの頃からだんだん変わって行っていたのね。)
ショータローと決別した後も、顔を見れば条件反射で嫌悪感を真っ先に顔に出していた冬。
直後に受けた軽い嫌がらせの為に、怪我を案じてくれる親切を素直に受け入れられなかった春。
でも、その時に触れた彼の演技力の高さと仕事への誇りは、キョーコに「演技」への興味を持たせてくれた。
思えば、あの時既にキョーコの心に小さな想いが色付いていたのかもしれない。
それは誰の目に触れる事もなく、キョーコ自身も気づく事なく。
はたと気が付いた時にはこの紫陽花のように、「好き」と言う色に塗りかえられていて―――
(認めざるをえなくなっちゃう・・・みたいなね。)
2株の紫陽花に向かって、キョーコはふふっと笑いかけた。
「あのね?嫌いじゃないのよ?今の自分も・・・」
失った感情を取り戻したくて、違う方向にがむしゃらに頑張っていた昨年の自分も、決して悪くはないと思う。
ラブミー部の仕事としてやらせてもらった事も、結局自己満足の域に達して点数自体は低かったけれど、そこから学ぶ事も少なからずあった。
今の自分は、友達への愛も手に入れて蓮への恋心も認めて愛をだいぶ取り戻したんじゃないかと、そうキョーコは思っていた。
それでもまだラブミー部所属と言う事は、愛を完全に取り戻した状態ではないと、そうローリィに考えられているからだろうと予想できるが。
だけど、今。
蓮を想うだけで、胸がドキドキと高鳴る。
蓮の顔を思い出すだけで、自然と笑顔になれる。
会えるかもしれないと思うだけで、今日も一日頑張れる。
そんな今の自分が、キョーコは決して嫌いじゃない。
そんな自分ですらも愛おしく感じる事が出来るようになったのは、蓮への想いがこの胸に溢れているから―――
(あ、そうだ。)
何かを思いついたキョーコは、スカートのポケットからごそごそと携帯を取り出す。
そして徐に紫陽花が2株とも写るように自分が動きながら距離を調整すると、ぱしゃりと画像に収めた。
雨に濡れて色鮮やかに咲き誇るサツキが少しと、優しい淡い色を付けた2株の紫陽花。
カメラ機能の画素数がとてもいいお蔭で美しく撮れたその画像を、キョーコは新規メールに添付する設定をしたところで再びポケットにしまいこんだ。
(学校に着いたら敦賀さんにメール送ろう。)
最後に会ってから1週間。
そろそろ蓮の食事事情が気になっていたところだ。
体調を伺うのに、天候の話はちょうどいい切欠だ。
綺麗な画像があれば、忙しい彼の心も少しは安らぐかもしれない。
それに・・・
「私の気持ちは、伝えるわけにはいかないけれど・・・貴方たちにこっそり託してもいいかしら?」
『移り気』 『浮気』 『高慢』 『冷淡』
土壌や開花時期によって色が変わる為、紫陽花の花言葉にあまりいい印象の物がないのはキョーコも知っている。
だけど、決して悪い言葉だけではなかったはずだ。
この1年で色が変わったこの紫陽花に、キョーコはそっと自分の想いを乗せる事にした。
(私の気持ち、変わったの。今は貴方が、大好きです。)
誰にも見せられないけれど、貴方への想いがこんなに溢れて、貴方の色に染まっています―――
ぱしゃんぱしゃんとアスファルトの上を歩くキョーコの長靴が、心なしかいつもよりもふわりと軽く感じられた。
*スキビ☆ランキング
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マック地方も梅雨入りしました。おかげで頭痛が半端ないです(←)
敦賀さんならきょこたんからのメールだって言うだけで、癒しのタイムになるんですけどねー。
話を書こうと思ったきっかけが、通園路の公園にサツキと紫陽花の色が素敵な場所があるからって言う事と、全然別の花言葉を探していた時にふと見た紫陽花の花言葉の説明の最後の一文に釘付けになったからでした。
「紫陽花の色が変わるのは 移り気なんじゃなくて 貴方の色に染まりたいから・・・」
いやさ、「貴方の色に染まりたい」だなんてきょこたんに頬染めて言われたら、蓮さんノックアウトでしょ!?ww
雨で頭痛持ちは大変ですが、小さな事でも妄想の糧に ささやかな幸せを感じていたいです。