こんばんは、マックです。


※この話は蓮キョ結婚後の話です。

現段階で種明かしは出来ませんが、ラストはハピエン。

ですが、途中は色々と辛い設定です。

(あ、あとかっこいい蓮さん不在中←)


こんな話ですみません。

ですが、決して熱中症を甘く見ないでください。


皆様、どうぞ体調にお気をつけてお過ごしくださいませ。







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「蓮!!キョーコちゃんが・・・!!」


キョーコがCM撮影中に倒れた一報は、ロケで東京郊外へと出ていた蓮にもすぐに伝えられた。

真っ青な顔で飛び込んできた社の言葉に、ゆったりとしたラウンジチェアーを倒しながら立ち上がった蓮の表情はみるみる欠落していく。



今回で5度目となる新開と蓮のタッグを組んだ映画は、刑事モノ。

3か月続いた撮影も佳境に入り、犯人を追いつめる為の舞台である古びた洋館を借り切っての3泊4日のスケジュールは、残すところあと1日となっていたが・・・



同じテントで休憩をとっていた新開は、助監督を呼び、先程行ったカメラリハの出来を問いただした。


「蓮。お前、キョーコちゃんの所へ行け。」

「え、でも監督・・・」

「今のお前じゃとてもじゃないが、俺の要求を満たすだけの演技は出来ないだろう。」

「いえ、そこは大丈夫です。俺は演れます。」

「確かに、お前は凄い役者だってのはわかってるよ。でもな、今俺が求めてるのは『殺人犯を崖から突き落とせる程の殺気を漲らせた、復讐に燃える刑事』なんだよ。今のお前には無理だ。」

「でもっ」

「いいから行け!!」



親の死に目に立ち会えると思うな―――



それがこの業界の掟である事を、蓮も社も、そして新開も勿論肝に銘じている。

だからこそ、蓮はこのロケを終わらせてから・・・と思ったが、新開が蓮のシャツの胸元を掴んで怒鳴った為に口を噤んだ。


「確かにな、お前とは何度もタッグを組んで作品を作り上げて来たから、お前が今この状態でも演技出来るって事は知ってる。お前の『久遠=ヒズリ』としての作品も全部チェックしてるから、本っ当に出来るヤツなんだった事はよくわかってるよ!」

「なら!」

「でもな!?キョーコちゃんを心配してるのはお前だけじゃないんだよ。俺だって、あの子がデビューする前から目を付けてたんだ。大事なんだよ。お前・・・もしハリウッドにいたら、撮影終わらせて「はいすぐ病院に向かいましょう」なんてことは出来ないんだぞ?「今」、「ここ」で、「俺」と仕事していた事に感謝しな!」


そこまで一気に捲し立てると、新開は散々強く掴んでいた蓮の胸元のシャツをパッと離した。

ふらりと力なく後方へ倒れそうになる蓮の腕を掴み、助ける。

もう一方の肩は社が支えた。


ぐいぐいと強く引っ張られていたシャツはネクタイごとよれていて、軽くパンパンと掃って直されるのを蓮は黙って受け入れる。

新開はある程度直し終ると、蓮にそっと声をかけた。


「これはお前の為に言ってるんじゃない。キョーコちゃんの為に言ってるんだ。あの子が目覚めた時に、側にいてやれ。」

「新開さん・・・」

「ああ見えて、あの子は寂しがり屋だからなあ。」


そう言って、新開はテントから一歩分体を出し、空を見上げた。


高く高く天を目指して伸びていく入道雲は、西の山の方から酷く早い速度で成長を遂げている。

明日の分を今日中に一気に撮ったとしても、激しい雷雨で足止めを食らうであろう事は想像に難くない。


一人で蓮の帰りを待つ事を密かに寂しがっていたキョーコを知る、新開なりの優しさだった。


それに気づいた蓮は、社の支えを振り切り、背筋をびしりと張り、きっぱりと言い切った。


「・・・っ、ありがとうございます。泉台のスタジオに戻ったら、もっといい演技でお返しします。」

「おうおう、まだまだもっといい演技が出来るって?じゃあ全部撮り直すか?」


はははと笑いながら、新開は蓮に背を向けたまま手を振った。

その男らしい背中に蓮は深々と一礼し、隣で蓮を待っていた社と共にスタッフが用意してくれた車でホテルへと一旦戻った。







蓮の運転は相当に荒かった。


助手席に座った社が「蓮!お前まで病院送りになってどうする!」と声をかけても、蓮はアクセルをきつく踏み込んだまま、決してブレーキに置いた足に力を入れなかった。

心は既にキョーコの元へ飛んでいるかのように、蓮の視線はまっすぐと。

ただひたすらにまっすぐ前へと向いていた。


しかし、スピードを緩めず法定速度ギリギリで飛ばしたお蔭で、普通なら3時間はかかるであろう道程を1時間以上も短縮して首都高を降りる事に成功した。

恐ろしい勢いで追いかけて来ていた雨雲は、病院の駐車場へと蓮の車が滑り込むのを待っていたかのようだ。

車を降りたその瞬間、蓮と社の髪を大粒の雨がぼたぼたと濡らし始める。

ローリィから教えられた病棟へと続く廊下を走る頃には、大粒の雨が大きな窓を激しく打ちつけていた。


「院内は走らないように!」と歳のいった看護師に注意された角を曲がると、特別病棟への入り口だ。

急に広くなり、そして独特の静寂に包まれた廊下をそれでも走る二人の先に、ぴしりとしたスーツを着たローリィの執事が突如として現れた。


「そんなに急がれなくとも、まだ京子様は目を覚まされていらっしゃいません。まずはお二人とも落ち着いて、ローリィ様と共に片瀬院長のお話しを伺ってください。」







作品用拍手アイコン ←新開さんがかっこよすぎる男でした。←おい


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蓮さんの法定速度が気になるところです。

(本当はギリギリちゃうんじゃないかと・・・いや!ここはギリギリって事にしておかないと!)