こんばんはー!マックです。


皆さんの街では桜はどうですか?
うちの方は完全に散りました…(ノω・、)


なので季節は若干過ぎてしまった感じですが、今回は桜のお話でも…

実はこれ、書いててPCぶっ飛んで、一度全消去しちゃったものです。

ええ、もう本当にね・・・何してくれんのさとふて寝でしたよw


皆さんも下書き保存はこまめにしましょう!←





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「ちょっと兄さん、どこまで行くのよ!?」


タクシーに乗っても撮影所までギリギリの時間。

ホテルの表に止まっていたタクシーをスルーして、セツカの手を取りカインはどこかへ向かって歩いていた。


ずんずん先を急ぐ兄に引っ張られながらきゃんきゃんと喚くけれど、カインの速度は変わらない。

足の長いカインの早歩きに付いていく為に、小走りになってしまう少女のブーツはゴッゴッと重たい音を立てる。

前を閉めていないコートから吹き込む風が少し冷たく感じられて、セツカ・・・の中のキョーコは少し肩をすくめた。


(また敦、兄さんは・・・っ!今日はどこへ行く気なのかしら。)


キョーコが無事に学年末テストとレポートの山を片付け終え、セツカの『帰国』が終了してからのカインは・・・更に奔放になっていた。


時間通りに撮影所までたどり着けない事はしょっちゅう。

いつも何かしら理由を付けて、セツカとの『デート』をしようとする。

やっと入れたスタジオでも、これでもかとヤンデレ兄妹を見せつける為に村雨との諍いも絶える事がない。


(セツがいない間、愛華さんを躱すスキルだけはアップしてたけど・・・)


本当に「セツカがいない間、この人は大丈夫だったのだろうか」と、中身のキョーコが不安になる程自由奔放に振舞っていた。



(でも、本当にどこまで行くの?いつもなら、まずはタクシーに乗るのに・・・近所なのかしら。)


『デート』と称する寄り道の際にもタクシーにまず乗車するはずなのに・・・

すでに10分程この状況であるキョーコの息は、だいぶ上がって来ていた。


そろそろ苦しい。

せめて目的地が近いのかどうかは知りたい・・・


息苦しさからセツカが抜けてしまいそうになるキョーコは、ついに兄の手を払おうと決意するが―――

その前にカインの動きが止まり、黒づくめのコートの背中に思いっきり顔を埋めてしまった。


「ぶっ・・・何よ兄さん。急に止まらないでよ。」

「すまんセツ。大丈夫か。」

「兄さんのせいでメイク崩れた。もう兄さんの顔見たくない。」

「それは悪かった。じゃあ、俺の顔は見なくていいから。そのまままっすぐ前を見ろ。」


ここまで何も知らされずに走らされて、挙句気合を入れたメイクも崩れる。

ここはセツカなら拗ねて当然。

でも『アタシ』が拗ねてるのにその言葉は何?


拗ねてそっぽを向いていたセツカは疑問に思う。


溺愛する妹に「俺の顔は見なくていいから」は、果たしてカインが言う言葉だろうか?

ここは、あからさまに機嫌を悪くした妹のご機嫌直しに取り掛かるところではないのか?

兄・・・「蓮」は何を思ってその言葉を発したのか。


カインの黒い背中がゆっくりと退き、横目でその背中を睨んでいたセツカに届いた光景は―――

住宅地の一角に広がる桜並木だった。


幹線道路からは2本も3本も路地に入ったが、少し広めに作られた道路と歩道。

その脇の空き地に広がる菜の花畑は満開。
更に一本奥の道路に見えるのは、泡桃色をはらりはらりと散らす、低層住宅に囲まれた桜並木。

元気溢れる枝ぶりの桜の木々は背後の住宅達をうまく隠しており、ここが住宅街の一角である事を忘れてしまいそうになる。


そして春のよく晴れた空。

空と桜と菜の花による美しい色合いに、思わずキョーコは感嘆を漏らした。


「日本は桜が有名だが、観光スポットは身動きが取れないからな。どうだ?」

「キレイ・・・」

「気に入ったか。」

「うん。」

「そうか。」


短い返事の後、二人の間にしばしの沈黙が流れる。


暖かな春の日差しが、少し冷たい風すらも柔らかく変える。

兄と揃えた黒いコートの肩が少し熱く感じられても、セツカはただじっと目の前の風景を見つめていた。


「・・・・・・」


どれほどの時間、そうしていたのか。

ふと、右手が大きな手に包まれる感触を得て、セツカはゆっくりとカインを仰ぎ見た。


「どうしたの?」

「お前が、泣いていたから・・・」

「え―――」


言われて初めて気づく。

キョーコはいつの間にか、両の目からほろりと涙の滴を零していた。


「何だろう。よくわからないけど・・・これが日本人がよく言う『ワビサビ』ってヤツなんじゃない?」

「そうか。俺にもよくわからんが、お前が悲しくて泣いてるわけじゃないのならいい。」

「アラ、悲しかったらなぐさめてでもくれたのかしら?」

「お前が望むのなら、いくらでも。」


妹のちゃちゃにふわりと微笑み返したカインの柔らかな表情を見て、キョーコは何も返せずにただ前を向いた。


どうして・・・

どうして、そんな言葉を言うんですか。

勘違いしちゃうじゃないですか―――


今は兄妹として側にいるから、この距離だからこそ叶った蓮との花見。

だけど、来年は・・・?


ヒール兄妹が終わってしまったら、ただの事務所の先輩と後輩に戻ってしまう自分達の関係では、気軽に花見になど行けるはずもない。

相手は『敦賀蓮』であって、分単位のスケジュールをこなすスーパースターで、自分が目指す俳優であって。



そして、叶う事のない想い人であって―――



侘び寂びだなんてそんな美しい言葉などで流した涙ではない。

今、こうして二人並んで桜を見る事が出来ている事自体、キョーコは奇跡だと思っていた。


口に出す事もなく、相手に伝える事もなく。

そして想いが終わる事なく一生を終え、地獄へ堕ちる自分への神様からのプレゼントだと。



返事をしなかった事で、カインが繋いだ手に力を込める。

ぎゅうと強く握りしめられた掌から伝わる蓮の熱に、キョーコは途方もない幸せと絶望を感じた。


(この手は、いつか私じゃない誰かの手を選ぶんだ・・・)


男の人らしい大きな骨ばった、だけどすべすべと触り心地の良い手。

この手に何度も助けられ、導いてもらった事を思うと幸せになる。

隣にいる蓮の存在に、香りに安らぎを覚える。


けれど、ここがいつか『蓮が想う誰か』の指定席になる。

その事を思うだけで嫉妬なんて言葉だけでは言い表せない程のどす黒い感情が胸の内にごうごうと音を立てて渦巻き、目の前が暗く霞んで今すぐ堕ちてしまいそう。

キョーコは空いた腕のコートの袖でぐっと涙を拭うと、空を見上げた。



(あ―――海・・・)


少し滲んだ目に移ったのは、ゆらゆらと揺れる空の青。

揺れる水面に似たその空を見たキョーコは、昔読んだ人魚姫の童話を思い出した。


人魚姫も叶わぬ恋をして、その身を海に投じ泡となって消えたはず。

王子様の結婚相手を殺せずに。



―――私も、今すぐ空に溶けて泡になれないだろうか。

この幸せな瞬間の思い出を抱えたまま・・・



雲一つない青い空に向かって、キョーコは切に願った。










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纏まってなくてすみません。

文系少女をやっと入手したのですが、読んでみて「文はシンプルイズベスト」と反省中です。

最近ごちゃごちゃしてたなー…うん。


菜の花+桜+青空は近所の住宅街の一角で見て、凄く綺麗なコントラストだったので書きたかったのですよー。

でも何か残念テンションorz

青い空に叶わぬ恋って言うのは自分的せつキュンでしたー。

両片想いの揺れる心とじれったい感じが切なくってキュンキュンなのです!


人魚姫は海に溶けたけど、空に溶ける人魚姫もいてもいいよね・・・?

きっと青空にセッちゃんのピンクのメッシュが映えるから!←