こんばんはー!マックです。

今夜はすでに正月過ぎましたが、正月ネタです!


蓮キョは成立後間もない状況です。

うーんと・・・蓮さんが若干不憫なお話しですw←ま た か


不憫系がお嫌いな方はご注意くださいませ。





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ガランガランと、静かな境内に少し低めの鈴の音が厳かに響く。

日が傾いた神社は既に参拝客の姿が殆どない。

オレンジ色に染められた臨時の賽銭入れの前で熱心に手を合わせるのは、蓮とキョーコだった。



付き合う事になった翌日にすぐ訪れたクリスマス当日。

キョーコの誕生日でもあったその日は蓮に仕事が入っていた為、二人で過ごす事が叶わなかった。

その事も含めて知った社長が「それなら三が日くらいは二人で過ごしたいだろう!」と、連休を与えてくれたのだ。


更に「そこで休むんだったら、初詣も行ってくると良い」と、都内でも比較的空いている近所の神社を調べてくれていた。


少し伸びた髪をツインテールにし、わざと実年齢よりも幼く変装したキョーコ。

一方の蓮は黒檀の髪をカインの時のように無造作に流し、ジーンズにダッフルコートと言う出で立ちだ。

そして流行から外れた大きな黒縁の伊達眼鏡が功を奏し、境内に僅かに残っていた参拝客にも二人が芸能人である事はバレていないようだった。



自分の隣で熱心に手を合わせるキョーコをチラリと盗み見ると、蓮の心はほんわりと温かくなった。


恋を自覚してから、何度乞い願った光景だろうか。


キョーコと一緒に、恋人として過ごす休日。

人目を気にせず出来る外出。


ようやく手にした幸せを噛み締めて、蓮も再び拝殿に向かい静かに目を閉じる。

これからもずっとこの幸せが続くように、願いを込めて。


(とりあえず、この時間を作ってくれた社長には感謝しないとな・・・)

「敦賀さん?」


いつの間に終えたのか、蓮が静かに目を開けると、キョーコがきょとんとした顔で覗き込んでいた。

くりくりと大きな瞳が近距離で自分を見つめてくれる。

その事が嬉しくて、蓮は少し屈んでキョーコの額に口付けた。


「つっ!・・・神社で不謹慎です!」

「今日くらい神様も見逃してくれるって。」

「でも、周りの人に気が付かれたら・・・」

「大丈夫、こういう所ではみんな自分のお願い事に夢中なものだよ。ほら、行こう?」


蓮の名前を呼ぼうとして慌てて口を噤んで、それでも静かに怒るキョーコ。

可愛らしい仕草で口付けられた額を抑える、少し冷たくなり始めた彼女の手を掴むと蓮は一段降り、すぐエスコートするように手を持ち直す。

少し色落ちした紺色のダッフルコートに、パステルピンクのキョーコのコートの袖が良く映えた。


そして「もうっ」と恥ずかしがりながらも、自身のエスコートを素直に受けてくれるキョーコ。


恋を成就させたばかりの男にとって、どれもすべて幸せを実感させるもの。

朱に染まる頬がちらちらと見え隠れする栗色の毛先が揺れる度、蓮の頬はだらしなく緩む。

またキスしたくなるが、もう片方の手をぐっと強く握り込む事でそれを耐えた。


(あんまりキョーコを怒らせてもね・・・騒いだらせっかくのデートが台無しだし。)


高校を卒業し、今は女優業一本に絞った活動をしているキョーコも、だいぶ顔が売れた。

役毎に変化する為に素の彼女が女優『京子』とすぐ一致する人はまだ少ないが、それでも注意深く見られるとばれてしまうし、熱烈なファンも少なからずいる。

一応神主には社長が話を付けてくれたと言っていたが、ここで二人が芸能人だと気付かれてしまうのは避けたかった。


「あ、おみくじ引きましょう!おみくじ!今年どんな一年になるかなー♪」


そんな蓮の気持ちには全く気が付かないキョーコは、段を降り切ったところで社務所に向かって走り出していた。

跳ねる栗色のツインテールを後ろから眺めながら、連休の使い方について蓮は思考を巡らせる。


昨夜は「年納めだから」「年が明けたから」と理由をあれこれ付けて、キョーコにたくさんのキスを贈った。

「破廉恥です!もうお腹いっぱいですーっ!」と恥ずかしがってはいたものの、最後には顔を真っ赤にしながらも蓮の唇を受け止めるまでになった。


あと2日休暇が残っているとは言え、ここで一気に次のステップへ・・・と進めるのは早急すぎるか。

本当は今すぐにでもキョーコの温かく柔らかな身体を堪能したいと思っているのだが、自分の気持ちをやっと受け止めてくれた彼女に、自分の欲を一気に押しつけても受け止めきれないだろう。


せっかく手にした『恋人』と言う地位なのだから、焦らずじっくりとキョーコの心の準備が出来るのを待つのもいいだろう。

キョーコがおいしく食べられるその日まで。


だって、ここまで十分待てたのだから、果実がもっと甘くなるのを待つのは苦ではない―――はず。



「大吉がひけますよーに!!」


この神社のおみくじは箱の中に手を入れて、そこから自分でおみくじを引くタイプの物だったらしい。

先に100円を入れてごそごそと手を入れるキョーコの声は真剣そのものだ。

蓮もポケットにそのまま入れてきた100円玉を準備して、彼女の横に立つ。

「これだ!」と勢いよく手を引きぬいたキョーコは、「お待たせしました!どうぞ!」と場所を譲りながらウキウキと手にしたみくじを開け始めた。

どうせなら一緒に見たい・・・蓮も急いで100円を入れて丸い入り口に手を突っ込む。

一番上にあった物をそのまま掴んで引き抜いた。


「わー・・・中吉かあ。おしいなぁ。」


キョーコの溜息が漏れ聞こえた。蓮を待たずに中身を見てしまったらしい。

だけど内容はそんなに悪くないらしく、「あ、失物見つかるのね!良かったー。願い事も叶うってなってる!」と独り言がブツブツと聞こえる。


そんな呟きですら今の蓮には可愛らしいBGMにしか聞こえず、ふふっと頬が緩んでしまう。


恋する男は盲目。

今の蓮にはまさにぴったりな言葉だ。


きっと社がいたならばそんな言葉と共に説教じみた話がこんこんと始まるのだろうが、今は念願の初デートの真っ最中。

そんな事を気にする人は誰もいない。


「敦賀さんはどうでした?」

「ん、今引いたばかりなんだ。ちょっと待ってね?」


ぴょこんと覗き込んでくるキョーコに促され、蓮もカサカサと薄い紙を開いていく。

紙の真ん中にある少し大きめな文字に真っ先に目をやると、そこには赤い文字で『大吉』と書かれていた。


「わっ、さすがです!今年もますます活躍されるのでしょうね!」

「それは仕事運も見てみないとわからないんじゃない?」

「仕事って言うと、商売ですかね・・・?『見込み確かなれば儲け有り』・・・これはいいって事ですよね?」

「うーん、いいのかな?」


キョーコに促されて真っ先に『商売』の欄を見てしまったが、蓮が気になるのはやはり仕事の事よりも自身の『恋愛』の進め方。

どのように進めるべきか、少しワクワクしながらその欄へと目をやり―――蓮は思わず天を仰いだ。



『一線を越えるな』



橙に染まる頭上の雲をしっかりと見、気を取り直してもう一度紙の上の文字に目を落とすが、やはりそこに書いてある一文は変わりがなかった。


(え、何かの間違い・・・)


ならばと紙の一番下の段、左端に書いてあるはずの『縁談』の欄を見るも、そちらも『初めの縁は整い難し』と書いてある。

ついでに言うなら、『願事』の欄も『辛抱が第一』だ。


「・・・?敦賀さん?どうかなさったんですか?」


天を仰いだかと思ったら紙に穴が開きそうな程注視したまま固まる蓮の姿に、キョーコはきょとんとした表情で質問した。

常でない蓮の行動を不思議に思ったようだ。


「あ、いや・・・ちょっと恋愛が・・・」

「恋愛?『一線を越えるな』・・・ですか?それはそうですよー!」

「え?」

「だって、先日お付き合い始まったばかりなんですよー!?そんな、敦賀さんがいきなりそんな事するはずないじゃないですかー!」

「え・・・うん・・・」


動揺を隠しきれず、ついキョーコに伝えてしまったその原因。

しかし、思った以上に自分を厚く信頼してくれているその言葉と勢いに、まさか今夜押し倒そうかとちらり考えてましたとも言えず、肯定の返事を曖昧に送ってしまう蓮。

その返事に、更にキョーコは続けた。


「それにそれに!私、ファーストキスの夢は諦めましたけど、結婚式はヴァージンロードを歩きたいんです!」

「ヴァージンロード?」

「はいっ!だって、『ヴァージンロード』って言うからには、綺麗な体でないと歩けないのでしょう?ウェディングドレスも真っ白でキラキラ光るのがいいなー♪まさに「純潔」を体現したみたいな花嫁さん・・・素敵ー!!」

「・・・・・・・・・うん・・・」


確かに昔、どっかの誰かさんが撮影の邪魔をしに来た日に、ショックのあまり「ファーストキスは・・・」と漏らしていた事はあったかもしれない。

固まったままの蓮を置き去りにして、キョーコの結婚式への妄想は更にエスカレートしていく。


声量よろしいキョーコの妄想話に素性がバレやしないかと蓮は辺りを確認するが、高く育った銀杏の木が埋まる参道は日もだいぶ陰っている為、参拝客はすでに熟年夫婦一組にまで減っていた。

その人達の側には神主らしき男性も一人ついており、万が一こちらの素性に気が付きそうになっても対応できそうだ。


現状の不安点は解決した所で、蓮はキョーコとの今後を考えた。



ヴァージンロードを歩くまでは処女・・・

つまり、結婚初夜までは完全にお預けと言う事だ。


確かに、キョーコのペースに合わせて待とう、とは思った。

しかし、ヴァージンロードは純潔でないと歩けないと信じる20歳がいるとは、夢にも思わなかった。



少し離れた場所から聞こえる参拝客と神主の笑い声が耳に入り、そちらをちらりと見やる。

意外と背も高くがっしりとした体形の神主は、聞いた話だと社長の昔馴染みとの事だったが・・・

遠目で見ると、その背格好から社長本人にも見えなくもない。


まさか、このおみくじは仕組まれたものか?

キョーコのこの興奮の前では、そんな考えさえよぎってしまう。



蓮は自問自答する。

『結婚するまで一線を越えない』

それまで待てるか―――?



・・・・・・・・・・自信がない。



「・・・最上キョーコさん。」

「?はい。」

「今年中に結婚してくれませんか。」

「・・・・・・・・・・はい?」




抱かれたい俳優ランキングの常連、敦賀蓮23歳。

そんな彼のプロポーズは、冷たい風が手元のおみくじをカサリと鳴らす、日の陰った境内でだった―――






作品用拍手アイコン ←結婚まで一線は越えません!←


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ふほほ、蓮さんにとっては大凶と言っても過言ではないこのおみくじw←


元ネタは私が引いたおみくじです。

(現物↓)
2014010901100000.jpg

恋愛の一文を読んだ瞬間に「・・・え?」と固まる蓮さんが浮かびましたよw

そして某所で某様と「社長ってば神主コスプレもイケそうですよね!」となり・・・

きっと社長なら、神主スタイルで二人のデートを覗きに来てるに違いないwともくもく妄想が膨らむ膨らむ♪

(そこまでは書き込めませんでしたけどね)



今年も頑張れ敦賀さん!←




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