なんでその雑誌がラブミー部室にあるのか、よくわからなかった。
だけど、よく見知った顔が表紙になっていて、私の目をくぎ付けにするには十分だった。



次の仕事までの時間の間に、久しぶりに部室に寄った私。
もしかしたらモー子さんに会えるかも…!と淡い期待を込めていたのだが…
でも私よりもドラマの撮影の仕事が多く入っているモー子さんは、なかなかつかまえることができない。
今日も空振りだった。

「はあ。せっかくモー子さんの好きなお店、新商品が出てたから誘おうと思ってたのになぁ…」

誰もいない部室で一人ごちる。
そして部屋の片隅に置いてあるサブテーブルの上に、1冊の雑誌を見つけた。
有名な隔週発売の女性誌。
そしてその表紙には、艶やかに微笑む大先輩様…

「こんなお仕事もしていたのね。」

この笑顔は私には目の毒…と思いつつも、どうしても気になって手に取ってしまう。
恋愛に関する特集が組まれており、パラパラと敦賀さんのインタビューに目を走らせる。

『敦賀さんはどんな女性がタイプなんですか?』
『そうですね…自分をしっかり持っている女性は素敵だと思いますね。あと料理上手だと嬉しいです。』
『やっぱり敦賀さんも胃袋掴まれると弱いんですか?これは雑誌発売されたら料理教室が満杯になっちゃいそうですねー!』
『女性が努力する姿は見ていて可愛いと思いますよ?』
『そんな事をおっしゃる敦賀さんに、世の女性たちは虜にされてしまっていますよ~!』

(…なんだか紙面を通して、世の女性たちを口説いているみたいだわ)

呆れて最後まで読まずにぱたんと閉じた。
なんだかよくわからないけど、胸の奥がもやもやする…

「…そうですよ、こんな笑顔を誰にでも見せてちゃダメですよ。私みたいに勘違いする人だっているんですから…」

この気持ちは、認めてしまえば私の心をあっという間に壊してしまった。
でも私なんかを好きになってくれることなんて、絶対ありえないのに。
こんな素敵な人…今の『仲のいい先輩後輩』の立場にいることだっておこがましいくらいなのに。

…だけど、今ここには誰もいない。
これくらいだったら、許されるかな?

「…好きなんです。」

小さくつぶやいて、表紙で艶やかに微笑むその口元に自分の唇をそっと尖らせて押し当てた。

<ちゅ…>

秘めやかなリップ音が小さな部室に響く。
私の心の奥に小さな満足感。
こんなことくらいは許してほしいわ。

「…で、本物にはしてくれないんですか?御嬢さん?」

…ん!?私一人のはずの部室に、聞きなれた艶のあるテノールが響いた。
後ろを振り返ると、部室のドアに背を預けてこちらを見ている敦賀さんが。
もしかして、もしかしなくても見られた!?

「っぎゃあああああ!!!?」

逃げ出そうにも、部室の入り口は敦賀さんの背にある。
慌てて後ずさるが、ドアから背を離した敦賀さんにあっという間に詰め寄られ、壁際に追い込まれた。
オオカミに狙われた子羊ってこんな気分?
何もこんな所を見られなくても…顔が勝手に青ざめる。
次に何を言われるかビクビク審判が下されるのを待つ。
すると、おでこにふわっとやわらかい感触が…
さっき自分がたてたリップ音と同じ音が自分のおでこから聞こえた。
今…もしかしなくてもキスされた!?
今度は一気に顔に血が集まるのが自分でもわかる。

「~~~~っ敦賀さんの破廉恥ーーーー!!」

私は思いっきり叫んで逃げ出した。
本当に敦賀さんてば危険な人…!
そうやって次々と私の心の壁を壊しちゃうんだから…。



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久しぶりに1日2更新。
ついにメロキュンのリレーの順番が回ってきちゃいましたよ…!
が、最近微桃ワールドにどっぷり浸かっていたので、久しぶりにめろときゅんを家宅捜索。
さしこの曲聞いてて、『唇ツンと突き出したら 架空のキスもできるよ』のワンフレーズ妄想がどうしても書きたくて…!
これ蓮目線と、さらに蓮ばーじょんとかもあるんだけど…
需要あるかしら?
というか、なくてもめろときゅん捜索の為に書いちゃうけど←迷惑なやつ
しかし相変わらずメロキュンか怪しいマックです。
あうあう><

そのうちさしこの曲でちゃんとした文を書きたいな。
今回のは思いつき突発SSなので、プロットも何も特になし。
お得意のインスピレーションで妄想ばく進!