社さんが局内に入っていってからも、暫く俺はその場を動けなかった。
近くの駐車場に車を停め直し、ビルの入り口をじっと見つめる。

本当は最上さんに会って、色々話したい事があった。

高遠杏子とは何でもないと、誤解を解きたい。
最上さんを抱いてしまった事は、すぐにでも謝りたい。
今朝一緒だった早野孝允…は好きなのか。
俺の事はどう思っているのか………
聞きたかった。

しかし俺は拒絶されてしまった。

それでも最上さんの顔を見たくて、もしかしたら話をしてくれるかもしれないと思って…
こんなところで待っている俺は、かなり女々しい男なのかもしれない。

その時、携帯が鳴りだした。
相手は番号非通知。

『あら、今度はちゃんと出てくれるのね。』
「………何の用だ。」
『ねぇ、コーン?私はずーっとあなただけを見てきたわ。
あの子みたいに他の男を王子様だなんて思った事、一度もないわ。
なのにあなたと私の間を邪魔する物が多くて、私は悲しいの。』

『…あの子もその一つよね。
あの子がいなければ、あなたは私のところへ帰ってくるのよね?』

高遠杏子の声色がどんどん変わっていく。

「…最上さんに何をする気だ!?」
『クスクス。コーンには関係ないわ。コーンは待っていてくれればいいの。』
「最上さんに手を出すな!!」

様子のおかしい彼女に最悪の事態を予想した俺は、急いで電話を切ると、そのまま社さんに電話をかける。
しかし、社さんは通話中で繋がらない。

「ああっ、くそっ…!!」

慌てて車から飛び降りると、最上さんの楽屋を目指して局内へ駆け出した。



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間に合え敦賀氏…!

限定読めない方へ。
43はただ杏子が激しく壊れただけなのですが、念の為限定に逃げさせて頂きました。
読まなくても42と44は繋がります。