その日は朝からとにかく土砂降りで、
バケツの水をひっくり返したような雨という表現が
しっくりくるほどの大雨でした。
私の母は自営業の父の手伝いをしていたため
お客さんの話し相手をしたりしていて
お迎えにくるのが遅れることがしばしばありました。
毎日同じようなメンバーで残っては
自分の好きなことをして時間を潰していました。
もうそろそろお母さん来るかな…?
そう思って園庭を眺めていた時に
何かが水溜まりの中に見えました。
なんだろう。
そう思い、傘をさし園庭に出て水溜まりの傍まで行くと、
それは
ボキボキに折られたクレヨンと
ぺちゃんこに潰れたクレヨンの箱。
水溜まりに落ちていたクレヨンでしたが
かろうじて名前が見えました。
”とま とまこ”
お母さんが1本1本書いてくれた文字が水で滲んでいました。
わたしがクレヨンなくしたんじゃなくて
誰かが捨てたんだ…
わたしはようやくこの時に初めて
自分のことを気に入らなく思っている人がいるんだと
気付いたのです…。