迷惑な話ですが、適切に対応されたので、健康被害は考えなくていいものと考えます。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120520-OYT1T00650.htm
(引用開始)
水道水のホルムアルデヒド、原因特定できず
利根川水系の浄水場で水道水から国の基準(1リットル当たり0・08ミリ・グラム)を超える化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、断水していた千葉県内の5市の約35万世帯への配水が20日、全域で再開された。
群馬県は、上流の河川の水や工場排水などの検査を進めているが、原因は特定できていない。
取水を停止した千葉、埼玉、群馬県内の5浄水場のうち、4か所が取水を再開。断水した野田、柏、流山、我孫子、八千代の5市に配水する北千葉浄水場(流山市)も19日夕に取水、配水を再開した。野田市では一部地域で20日午後も水が出にくくなったり、高台で断水が続いたりしたため、市内5か所に給水所を設けた。
(2012年5月20日21時13分 読売新聞)
(引用終わり)
ホルムアルデヒド(formaldehyde)はHCHOという化学式で表される物質です。
沸点は-19.3℃ですので、常温常圧では気体です。水にはよく溶けます。ホルムアルデヒドの水溶液(通常37%)はホルマリン(formalin) と呼ばれ、生物の組織標本作製のための固定・防腐処理に広く用いられます。(いわゆるホルマリン漬けの標本)
さまざまな樹脂(ポリアセタール樹脂、ユリア系・メラミン系樹脂、フェノール樹脂等)や化学物質(MDI等)の原料として用いられます。また、接着剤、塗料、防腐剤などの成分として建材に広く用いられますが、建材から空気中に放出されて、いわゆる「シックハウス症候群」の原因物質となることもよく知られます。
ホルムアルデヒドについての詳しい情報はこちらにありました。
http://unit.aist.go.jp/riss/crm/mainmenu/zantei_0.4/formaldehyde_0.4.pdf
本件を調べてみると、経緯等についてたいへん詳しく書かれている記事を見つけました。
とりあえずこちらを読んでいただくと、地理関係とともに何が起きたか、よくわかります。
http://tsukuba2011.blog60.fc2.com/blog-entry-613.html
ホルムアルデヒドに関する法規制について、こちらの記事に書かれていました。
(引用開始)
ホルムアルデヒドは、毒劇法により医薬用外劇物という分類に指定されています。昨年からは水質汚濁防止法によっても指定物質として定められたため、もし事故によってホルムアルデヒドを排水に流出させてしまった場合にはその応急措置と地方自治体への届出が義務づけられました。(他にもいくつかの法律で規制されていますがここでは省略します。)
現在、浄水場で行われる水質検査においては、0.08mg/L以下という基準値が定められています。
(引用終わり)
昨年に水質汚濁防止法の指定物質になっていたのですね。
(一応、公害防止管理者・水質一種の資格を持っているのですが…。)
したがって、今回、どこかの工場か何かでトラブルによってホルムアルデヒド(あるいは分析でホルムアルデヒドとして検出されるヘキサメチレンテトラミンとの説も)を排水に流してしまったとしたら、それを届け出ないと水質汚濁防止法違反になります。
どのくらいの量のホルムアルデヒドが河川に流れたのか、そのオーダーを計算してみました。
利根川・江戸川の水量は、下記のサイトの情報から、ざっと10,000 m3/s と考えます。
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000050261.pdf
通常(落ち着いた5/20以降)0.01mg/L 未満のホルムアルデヒド濃度が、最大で0.2 mg/Lまで上昇
しています。
10,000 m3/s の水の中に 0.1 mg/L の濃度の物質があるとするとどのくらいの量になるか計算すると、
(10,000)(m3)・(0.1)(mg)・(3,600)(s)・(1,000)(L)・ (g) ・ (kg) ・ (t)
-------------------------------------------------------------------
(s) ・ (L) ・ (h) ・ (m3) ・(1,000)(mg)・(1,000)(g)・(1,000)(kg)
-------------------------------------------------------------------
(s) ・ (L) ・ (h) ・ (m3) ・(1,000)(mg)・(1,000)(g)・(1,000)(kg)
(10,000)・(0.1)・(3,600)・(1,000)・(m3)・(mg)・(s)・(L)・(g)・(kg)・(t)
= -------------------------------------------------------
(1,000)・(1,000)・(1,000)・ (m3)・(mg)・(s)・(L)・(g)・(kg)・(h)
= -------------------------------------------------------
(1,000)・(1,000)・(1,000)・ (m3)・(mg)・(s)・(L)・(g)・(kg)・(h)
= 3.6 t/h
と出ました。
行田浄水場の分析値の推移から、エイヤっと平均 0.1 mg/L が十数時間続いたと見ると、全部でおおよそ50トン程度のホルムアルデヒド(純分として)が河川に流出したものと推定されます。
(計算はきわめて大雑把ですが、桁くらいは合っているだろうと考えます。すなわち、5トンや500トンではないだろう、という程度の精度です。)
今のところ原因は不明のようですが、結構な量ですので工場などから流出したのではないかと想像されます。
ところで、ついでに関連してですが、私は今までこんなことも知りませんでした。
もともと利根川は、途中で荒川と合流して東京湾に注いでいたが、徳川家康の号令で始まった「利根川東遷事業」によって、従来の鬼怒川の流路に合流し、現在の千葉県銚子市より太平洋へと流れる川となった。
また一連の改修工事で、もともと渡良瀬川の下流部であった江戸川が人工水路で利根川とつながった。その結果として、江戸川は、東北地方や北関東からの物資を銚子から利根川経由で江戸へと運ぶ流通幹線となった。
(参考:Wikipediaの利根川東遷事業および江戸川より。)
もしかしたら関東の人にとっては常識かもしれないですが(うちの娘も小学校で習っていたように思います)、もともと関西人である私はよく知りませんでしたー。
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